Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    イアさん

    @iasan03

    オリジナルとファンアート

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 👍 🙏 👏 😇
    POIPOI 16

    イアさん

    ☆quiet follow

    記憶意思PC漫画内にて書かれた手紙の内容です
    漫画の延長線として捉えていただければ
    完全うちよそ空間です

    「おくりもの」聖夜にプレゼントをしてから数日後
    青い薔薇の元へ、二通もの手紙が届けられた
    ひとつは所々に黒いインクがこびりつき、しわや破れが目立つ
    便箋の封は無く、黒いインクによって閉じられていた
    もうひとつはそれとは似つかない見た目をしていた
    インクの汚れや目立った傷などは全くなく、まるで職人によって作られた
    極上の便箋と言わんばかりの佇まいだった

    二通もの手紙に驚き、しばらくは二つを交互に眺めるかもしれない
    きっと彼女はそのうちに綺麗な便箋に小さく差出人の名前が描かれていることに気付くはずだ

    「愛しい青薔薇の君へ」

    「イア」

    彼女は驚くだろう
    事情を知らない彼女からしたら、あちらの世界の創作主からの手紙だと勘違いをするかもしれない
    手紙に対する警戒は高まる一方、傷んだ便箋さえも恐ろしいものに見えてくることもあるだろう

    恐る恐るもう一度綺麗な便箋を手に取り、宛名と差出人の文字を眺める
    筆跡や宛名の書き方から、どこか懐かしさを感じるかもしれない
    文通をしていた頃をふと思い出す
    この筆跡は彼女の物に違いない
    もし、青薔薇の彼女に強い意思があるならば、きっとその便箋を開けることが出来るはずだ

    羽根の描かれた封蝋を外し、中から手紙を取り出す
    丁寧に折りたたまれてあった手紙には、端麗な文字が刻まれている

    はいけい 青薔薇の君へ

    おどろかせてしまったらごめんなさい
    まず初めに
    こちらの事情が少し変更されたのを伝えさせて
    私たちは「真名」の交換をしました
    説明すると少しややこしくなってしまうから
    かんたんに
    貴方と文通をして、夢の中で出会って
    セカイにも私自身にも変化が訪れたの
    その変化にともない私たちは
    名前を交換せざるをえなくなった

    急に親しい人の呼び名が変わると
    ビックリするわよね
    それに、私が交換した名前は
    創造主と同じ名前...
    呼びたくなかったら呼ばなくていいわ
    私も無理をして呼んでほしくないから...
    そうね... 例えばあだ名とか?
    はくめいの君... あかはねの主...
    ううん、小難しいのばかり

    ごめんなさいね、私もこんな名前嫌なの
    …私が嫌だと思ってしまうことが
    名前を交換する事になった原因なのだけれど...
    「真名を交換するか統合されるか」
    私に与えられた選択肢はその二つだった

    私、貴方とまだ話したかった
    あのね、上手く伝えられないのだけど
    貴方と言葉を交わして、思いをつのらせるほど
    何か、遠くに見える気がするの
    ごめんなさい、こんなこと言われても
    分からないわよね

    貴方との文通、私の可愛い使者からの外の情報
    私自身がのぞき込んだ外の世界
    そうして過ごせば自分が歪んていることくらい
    認知出来るわ
    でも、いつの間にかその事さえ分からなくなる
    だからどうか、この状態が続いてる今
    書き記さなければと思って

    プレゼント嬉しかった
    私、誰かからのおくり物なんて
    初めてもらったの

    私は誰かを愛することが出来ない
    いいえ
    正しく愛せない
    と言った方がいいのかしら...

    愛しい気持ちはきっと変わらないわ
    変わらないはず
    それさえも歪だと言われたら、私
    いえ、今はそんなことはどうでもいいの

    貴方に接すれば接するほど
    行き場のない感情が心に渦を巻くの

    もうむやみやたらに一方的な思いを
    登場人物に振りまくことはなくなったわ
    わたし、わたし落ち着けると思ったのよ
    使者の思いを無下にしないためにたくさん
    さくさん手紙をかいて
    でも、おかしいの わたしなおらなくて
    きもちが

    その文章以降
    崩れた文体で手紙の端まで解読不可能な文章が、所狭しと書き連ねられている
    その紙の端には、黒いインクが少し染み込んでいた

    読み終えた彼女は、もう一枚封入されていた手紙に目を通すだろう

    ごめんなさい わたし ごめんなさい その
    すこし おちついたわ
    ことばを しるせるほどには

    あなたに あいたいの けど それはとても
    おそろしいことだわ

    わたしをとめる せかいのくさり
    わたしのきもちに こおうするの
    きもちが あふれて うずをまいて
    それをくりかえす
    そのたびに くさりはもっと もっとつよく
    わたしをつなぎとめる

    あえなくて ごめんなさい
    それがきっと ただしいこと

    ねえ このあみもの ふれるとあたたかいわ
    どうしてかしら
    なぜかしら

    ちもかよわない こどうもきこえない
    なのに どうして あみものが
    あたたかいのかしら
    わたしのたいおんが はんしゃしてるだけ?
    いいえ それなら
    あたたかく なったしりないわ

    あなたなら そのこたえ がわかるのかしら
    よかったらおしえて

    はくめいのつばさ より

    彼女は文章を読み終える
    自然ともうひとつの便箋に視線が向かうだろう

    彼女がもし、恐れずに封を切るならば
    こんな光景を目の当たりにするはずだ

    黒くこびりついた何通もの手紙、便箋ぎりぎりまで詰められた手紙の数々
    汚れや傷が酷く、文章を読もうにも所々でしか解読が出来ない
    しかし、解読が可能な箇所を読み進めているうちに
    この手紙は文通を始めて間もない頃からの内容が、すべて書き連ねられていることが分かるだろう
    手紙の内容の草案?

    手紙のやり取りをし始めた頃からの、彼女の感情の渦が
    紙面一帯に広がっていた

     好き 可愛い 憎い 愛してる 嫌い 素敵
     怖い 悲しい 嬉しい

    相反する言葉の数々と共に、自身への強い思いが綴られている事を読み取れるかもしれない
    ふと、手紙の最後の文章に目が留まる
    どうやらこれは、先ほどの手紙の途中までもが含まれているらしい

    薄明の彼女は何故、この便箋も共に届けたのだろうか
    一人で思考に耽るのも、誰かに相談するのもいいかもしれない

    そこから先は、私の想像では彼女に刺し殺されかねないから遠慮しよう

    返事をするかは、青薔薇の貴方次第だ
    Tap to full screen .Repost is prohibited

    recommended works