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    イアさん

    @iasan03

    オリジナルとファンアート

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    POIPOI 16

    イアさん

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    うちよそ交換小説第2弾です
    完全身内向けです
    お相手様の作品リンクがございますので交互にお読みください

    お返し
    「羽根と宝石」
    https://ncode.syosetu.com/n6235gb/

    続き
    「創る者、綴る者」
    https://poipiku.com/6909144/8947767.html

    薔薇と羽根夜明け前の白んだ空がどこまでも続く無限の空間の
    清らかで静かな空が、今日こんにちは朱く暗く染まっていた
    そんな混沌の空間に一輪の可憐な花の少女が舞う
    錆びた鉄の匂いと充満する狂気を尻目に、少女は歩みを進める

    耳をつんざくような数多の悲痛な叫び声が
    無限の空間に反響する
    蠢く影、動かなくなってしまった魂の抜け殻
    助けを求めて少女に縋りつく者も居た
    しかし、今の彼女にはこの状況を変えられる力を持ち合わせていない
    「...もう少しだけ、耐えてください...。」
    苦渋の思いでその手を振り払い、足早に飛び去って行く

    相も変わらず、途方もない数だ
    本当にあの人はどうしてしまったのだろう
    私には分からない、あの人の本当の心が

    「私は、完全に心を通わせることが出来ない...。」
    だって、私。この世界の───

    「...暗いことばかり考えるのはやめよう。今日は希望を持ってきたのだから。」

    幾多の屍の山を越え、血だまりの海を渡り
    狂気の渦の中心に君臨する、この世界の神の御前に
    少女はやっとの思いでたどり着いた

    ここまで来たら、この状況に驚くことはない

    神の足元に転がる、”まだ”息のある登場人物キャラクターたち
    彼女の能力なのか、はたまたその方法を知っているからなのか
    生きながら苦痛を与えられている彼らは、口々に叫ぶ

    「「「殺してくれ」」」

    抉られた肉、引き裂かれた肌
    貫かれた体躯、すり潰された骨
    そこまでしても尚、生を強要される
    それならばいっそのこと死んでしまった方が、どれだけ楽になれるか

    途方もない苦痛に喘ぐ登場人物キャラクターたちを弄び、悦に浸るは創造の神
    この世界を生み出し、見守り、そして搔き乱す
    「再生と破壊は表裏一体。だけどこれは...」
    明らかに度が過ぎている

    「あぁ、愛おしい我が子らよ。悶え苦しみ、嘆き悲しみ。存分にその絶望を私に見せておくれ。」
    神の大きな禍々しい翼が、空を覆う
    舞い散る羽根の一枚一枚が、恐ろしい凶器へと姿を変える
    彼女の狂乱の刃が、登場人物たちに向けられたその刹那

    創作者クリエイター!!...て、手紙が届きましたよ。」
    まさに鶴の一声、振りかざされた凶器は動きを止める

    「ここ最近は誰も招き入れていないはずだけど。誰から?」
    険悪な表情で少女を睨みつける
    楽しい宴の邪魔をされた彼女は、すこぶる機嫌が悪いらしい
    睨まれて怯んでしまったが、少女は負けじと声を張る

    「BlueRose様からです!!」

    この手紙が、本当にその人物からの手紙なのか
    少女には確証がなかった
    しかし、この状況を打破するには賭けるしか無かったのだ
    僅かな可能性に、青い薔薇の奇跡に

    神は武器を収め、武器はただの羽根になった
    羽根たちは主の元へと戻り、その大きな翼を羽ばたかせる
    こちらに近寄る彼女のその表情は
    (何を考えているのだろう...。)
    全く見当がつかなかった、今までに見たことのない表情をしている
    「てがみ、読ませて。」
    「は、はい...。」
    彼女の通う学園で受け取った清楚な便箋と美しい青薔薇を
    血塗られた神の手のひらに乗せた

    封を切り、食い入るように文面を見つめる
    少女はその様子を恐る恐る眺めた

    ───ふいに、神の口元が緩む

    「あっはっはっはっは!!!なんて愛おしいんだ!こんなに心をくすぐられる手紙は久し振りだよ!」

    突然の高らかな笑い声に驚き、肩を震わせるも
    彼女のご機嫌な様子に、少女はほっと胸を撫で下ろす

    「愛い...愛らしい...。この手であいしてあげたい...。」
    その言葉を聞いた少女は慌てて口を挟む
    「外界を嫌悪しているBlueRose様が、わざわざあなた様の為に手紙を綴ったのです。」
    創作者クリエイター...。折角ですからお返事をしたためてみては…?」
    彼女の感情に拍車をかけては不味い、うまく誘導しなければ
    咄嗟に出た言葉に、神は反応を示した
    ゆっくりと少女の方へ顔を向ける
    しまった、少し踏み込み過ぎたかと少女は焦りを抱いた、が

    「あは、そうね。そうだわ。もう戯れは御終い。この素敵な手紙の返事を書かないといけないものね!」
    先程の不機嫌さとは打って変わって、何とも楽しそうに受け答えていた
    鼻歌を歌う彼女が、指揮棒でも降るかの如く手を振りかざせば
    死んだ魂は蘇り、傷口は癒え、セカイの歪みは修正される
    何事もなかったかのように、傷つけられた世界は元の姿を取り戻していく

    半壊状態だった世界が元の姿に戻っていく様子を、少女は安堵の気持ちで眺めていた
    一時はどうなるかと思ったが、この作戦は存外うまくいったようだ
    「...あのお二人には感謝してもしきれませんね...。」

    世界を再生し終えた神は、拙い文字で綴られた手紙と添えられた青い薔薇を
    愛おしそうにいつまでも眺め続けていた

    ────────────────────
    ──────────
    ─────

    朱く焼けていた狂気の空間に、清らかな夜明け前の空が戻ってきた
    その空間に寝転がり、意気揚々と手紙をしたためる創作者
    それを眺める小さな花の精霊の従者
    時間は、永遠の夜明けを刻む
    しかし、今日は久し振りに日の出が拝めそうだ
    日の光に照らされたような穏やかな気持ちで、少女は彼女を見つめていた

    翌日──

    真っ白な便せんに血潮の様な赤い封蝋
    中心には羽根の模様がひとつ

    ----------------------------------------------------------------------------------------

    拝復

    四季の無い空間で、この書き出しは少々難しいものがありますね
    素敵な手紙をどうもありがとう
    可憐なうちの使者から、手紙を受け取りました

    文面から見るに、文字を書くことが得意では無いのでしょう
    無理に多く言葉を綴る必要はありません
    貴方の調子で構わないので、手紙で色んな話を聞かせてください

    私は、貴方の事が知りたい
    それはどんなに些細な情報でも構わないのです
    散歩が好きだとか、昨日の夢はよく覚えていないとか
    他愛もない話を貴方としたい

    己の世界の事や、貴方の大切なことは話さなくていい
    そんなことはどうだっていいのです
    嘘も秘密も必要無い
    私はこの手紙を通して”ただのBlueRose”と話がしたい
    私も、”ただのイア”として言葉を綴りましょう

    ここで話を閉めようかと思いましたが、これでは返事に困りますね
    では、日々の過ごし方でも話しましょうか

    私は寝転がるのが好きです
    空を飛ぶこともありますが、普段は専ら寝転んでいます
    翼が大きいので、自由に転がれないのが難点ですね
    私には”仕事”はありません、寝転んでも誰にも何も言われません
    好きなだけ寝て、好きなだけ飛んでいます

    BlueRose様も寝転んだりするのでしょうか?
    どのように過ごしているのか、気になりますね
    それでは、お返事お待ちしております
                     敬具
    2020年3月5日    イア

       BlueRose様

    ----------------------------------------------------------------------------------------

    世界を引っ搔き回した元凶が綴ったとは到底思えぬ程達筆な筆跡とその内容
    少女はそんな手紙と創作者である彼女の羽根、”風切羽”を持って
    再び中庭の花園に足を運んだ────
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