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    coruli_

    2次絵メイン
    一次創作は移動しました→https://poipiku.com/331408/

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    coruli_

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    ※久々、ニンミェンの作文です。

    通り雨 それは突然の雨だった。早朝からすっきりと晴れ渡り、暖かい日差しに包まれていた筈の一日。数日前まで吐いた息が白く見えていたのが嘘かのように急激な気温の上昇で、薄いランニングウェア姿でランニングをしていたニンジャラだったが、そんな軽装に大きな雨粒が打ち付けてきたのだ。
     昼食前の腹ごしらえとニンジャカレッジから気分良く汗を流していたところに文字通り水を差され、その足の加速を早めるものの、そこはスネークパークのど真ん中でカレッジに戻るにはまだ距離がある。適当な場所で雨宿りをと辺りを見渡してみたが、見渡す限り広々と芝の広がる公園の敷地内で屋根の代わりになるような場所も無い。そうこうしているうちに整った髪も崩れはじめ、体も冷え切ってしまった。
    (拙者もまだまだ修行が足りないでござるな)
    忍にとって天候を利用することは重要な作略のひとつである。それが天気の予測を見誤るとは・・・そう深い溜め息をつきながら、せめて通り雨であってほしいと淡い期待をしながら空を見上げる。しかしその上空はすっかり厚い雲に覆われて雨は暫く止みそうにない。ニンジャラは雨宿りを諦め、そのまま駆け足で帰路につくことにした。

     スネークパークを抜けて数十分。彼は繁華街に辿り着いた。ラーメン丼を被せた様な個性的な建物が並ぶ場所。人並みを縫うように進んでいくと、雨独特の匂いの中に鼻腔をくすぐる別の匂いに気付く。
    「この匂いは・・・!」
    食欲をそそる香ばしい香りに導かれて足を延ばす。たどり着いたのは麺天飯食堂。ニンジャラがトレーニングの帰りに度々寄る店だ。そんな店の窓からテーブルに並ぶラーメンを目にした途端、彼の腹はきゅううと空腹を訴えかけてきた。
    「・・・っ!」
    数え切れないほど食べてきたラーメンの味を思い出しただけで鳴ってしまった腹の音を誰かに聞かれてはいないかと辺りを見渡したが、幸いな事にそれに気付いたのは店の窓に写る自分以外誰も居ない。しかしそのガラスに写った自分の姿にニンジャラは愕然としてしまった。すっかり雨に降られた服は思った以上にずぶ濡れで、いつもしっかりと整えられた十字形の髪型も後頭部で垂れた髪束になっており、とても店に入れる状態に無い。しかも昼食時を迎えた店には自分と同じように腹を空かせた客たちが次々に来店して行列が出来ている。 
    「仕方ない。休憩だけでも・・・」
    いつもと違う容姿のせいか気配を消すのが得意なおかげか、彼がファイターだと気づく者はいなかった。空腹のせいでクタクタになっていたニンジャラは客の邪魔にならないように店の軒先の隅に移動した。すると店の曲がり角の裏手からぐいっと誰かに腕を引っ張られ、彼はバランスを崩す。
    「っ・・・!」
    何とか転ぶ前に体制を立て直し、何者かと顔を上げれば、こちらの腕を掴んでいた【麺の腕】を縮めながら睨んでくるエプロン姿の少女が居た。
    「ミェン・・・!」
    それは自分と同じファイターであり、麺天飯食堂の看板娘であるミェンミェンであった。
    「店先にいられては困るアル」
    流石は大人気店の看板娘。店のことには厳しい。ずぶ濡れの得体の知れない男に店の前に居座られては、入る客も入らなくなってしまうと顰めた彼女の顔がそう物語っていた。
    「す、すまない!」
    ニンジャラは商いの邪魔になってはいけないと早々に帰ろうと踵を返したのだが、
    「待つアル!!」
    そう呼び止められ振り返る。
    「どうしたでござる?」
    「・・・あっ・・・あの」
    「?」
    先程の勢いは何処に行ったのか、ミェンミェンは口をモゴモゴさせる。どうやら立ち去って欲しいとまでは言いたかった訳では無いらしい。
    真意が読めず暫くじっと見つめていると、彼女は意を決したように口を開いた。
    「ちょっとこっちに来るアル!」
    そう言って店の裏口に案内するとドアの内側の壁に沿って配置された棚に置かれたリュックに手を伸ばす。
    (あれはいつもミェンミェンがトレーニングや試合の時に持ち歩いている鞄でござるな・・・)
    ニンジャラがぼんやりとそんなことを思っている間に、ミェンミェンはそこからタオルを一枚取り出すとこちらに差し出してきた。
    「早く拭くアル。風邪をひくといけない」
    「い、いいのでござるか・・・?」
    思いがけない気遣いに戸惑っていると、まどろっこしかったのか
    「いいから!それと、この廊下の先にシャワーがあるから使っていくアル。服は洗って乾かしておくから!」
    と、半ば強引にタオルを渡され、「店が忙しいから」と足早に自分のもとから去っていってしまった。店が慌ただしいからなのかその頬は紅潮しているように見える。
    「えっ!?ちょっ・・・ミェンミェン!?」
    取り残されたニンジャラは突然の事に状況がうまく飲み込めない。
    (拙者がミェンミェンの家のシャワーを使っていいのか!?拙者の服を洗って乾かしてくれるのか!?ミェンミェンが・・・!?!?)
    【クールニンジャ】は一体何処へと問いたくなるほどニンジャラは動揺していた。しかし一人取り残された今、彼女に従うを得ない。
    「し、仕方無いでござるな」
    そう自分に言い聞かせて脱衣所に向かった。

     洗面台と洗濯機が並ぶ脱衣所で体にまとわりついたウェアを引き剥がすように脱ぐと浴室の扉を開く。途端に石鹸の香りが甘く香った。ニンジャカレッジにも風呂場はあるが、そこの匂いとはまるで違う。それに近くにあった棚に目をやると可愛らしいシャンプーとリンスのボトルが並んでいて、ニンジャラは目を見張った。
    「っ・・・・・・!!」
    きっとミェンミェンの使っているボトルだろう。そう推測すると良からぬ想像が脳裏を過ぎり、ニンジャラは慌てて首を振る。浴槽の手前、壁に固定されたシャワーヘッドの蛇口をひねると頭からお湯を浴びて体を温める事に集中した。

    ザアァァァ・・

     そうして暫くシャワーを浴びていると、脱衣所の扉がガチャリと開く音がした。
    「!?」
    音がした方に目をやると浴室の擦りガラス越しに人影が見えてニンジャラは身構える。朧げにだが認識できる身長や服の色でその人影が誰なのかは簡単に察しがつく。
    (ミェン・・・!!)
    聞き耳を立てると、どうやら脱いで置いた服を洗濯機に入れてくれているようだ。ピピッと機械音をさせると洗濯機がガラガラと音を立て回り出す。彼女の動向が気になって様子を伺おうと思ったが、扉で遮られているとはいえ薄いガラス扉では頼りなく感じて、息を殺すように気配を探った。するとミェンミェンがそのガラス扉の目の前に立つのが窺えた。
    「ニンジャラ、服は洗濯機が止まったらもう乾いている筈アル」
    「かっ・・・かたじけない!」
    コソコソと自分の様子を覗われているのが見透かされていたかのように不意に声をかけられて、思わず声が上擦ってしまったが、彼女に変だと思われてしまっただろうか?ミェンミェンは何事も無い様に立ち去ったが、その後も暫くニンジャラは悶々としながらシャワーを浴び続けた。

     すっかり冷えていた体も芯から温まり、脱衣所でひと通り体や髪を拭き終わる頃には洗濯機の乾燥機能も役目を終えていた。蓋を開き服を取り出すとまだほんのり温かい。ウェアに袖を通し、手慣れた手付きで髪を整えるとマスクを顔に付けて身支度を済ませる。
     
    「ミェンミェンに礼を言わなければな」
    脱衣所を出るとニンジャラはミェンミェンを探した。来た道からさらに廊下を奥へ真っ直ぐ進むと突き当たった扉から話し声や物音が聞こえる。ゆっくりと扉を開くとそこは店内となっていて、ミェンミェンが客にラーメンを運んでいる最中だった。シャワーを借りているうちに繁忙時間が過ぎたらしく、外から見た時とはうって変わって、客はまばらになっていた。
    「ミェンミェン」
    配膳を終えた彼女が首に掛けたタオルで額の汗を拭きながら丁度こちらへ歩いてくるのを見計らって声を掛けると彼女は「こっちアル」とぶっきらぼうに店の奥の席に案内してきた。言われるがまま席に座ると
    「ラーメン、食べるでしょ?」投げかけられ、ニンジャラは空腹感を思い出す。
    「あぁ!頂くでござる!」
    喜んで即答するニンジャラにまんざらでもない表情を浮かべると、ミェンミェンは厨房へ向かった。
     手際よく調理をはじめ、ラーメンを作り上げるのに略略時間はかからなかった。チャーシューや海苔がトッピングされたシンプルな醤油ラーメン。その見た目だけで涎が溢れ出そうになる。
    「頂くでござる」
    食事の挨拶も早々に麺を啜ると口いっぱいに醤油の香ばしさと旨味が広がった。口にすればするほど食欲が増し、丼から麺がみるみるうちに無くなっていく。
    「よっぽどお腹が空いてたのね」
    夢中で麺を頬張るニンジャラの姿に彼の傍らにあったコップを取り、水のおかわりを注いでいたミェンミェンが呆れたようにつぶやく。コップをテーブルに戻しながらふとニンジャラの頭を見ると、彼女は首に掛けていたタオルをするりと外した。
    「あぁ、まだ髪が乾いてないアル」
    そう言ってふわっとニンジャラの頭にタオルを掛け、優しく髪を拭きだす。
    「・・・!!」
    ニンジャラが麺を啜りながら視線を上に向けると自分の髪を拭く彼女の優しい眼差しを目の前にする。その眼差しに見惚れ、彼は目が離せなくなった。試合のときには絶対に見ることのできないその表情。なぜだろうか自分より年下の彼女にとても大きな包容力を感じ、絶え間なく動いていた箸がピタリと止まる。
    「どうしたアル?」
    そんな視線にミェンミェンも気がつくと二人の目は真っ直ぐ、ピタリと合ってしまった。
    「ッ・・・!!」
    距離も近かったせいか意識してしまい、互いに気まずくなって顔を背ける。ニンジャラは気まずさを誤魔化すように一気に残りの麺を啜りスープも飲み干すとそそくさと身支度を整え、勘定をミェンミェンに手渡した。
    「その・・・今日は色々と助かったでござる。美味しいラーメンも食べられたし・・・かたじけないでござる!」
    「お、お礼なんて必要ないアル・・・」
    よそよそしく挨拶を済ませるとニンジャラは店を出た。はたと気付いたミェンミェンはその後ろを直ぐに追う。
    「待つアル!まだ雨が降ってるかも知れない!」
    慌てて店の隅に置いていた店の傘を手に取ると彼のもとに向かう。しかし彼女の心配をよそに店先でニンジャラが見上げていた空は先程まで降っていた雨が嘘のように晴れ渡っていた。
    「すっかり晴れたでござるな」
    「そうだな・・・」
    「ああ、・・・その、ミェン。ラーメン、美味しかったでござる。また食べに来るでござる」
    「・・・今度はシャワーは貸さないアル」
    「ふふ、勿論ちゃんと雨に濡れない様にラーメンを食べに来るでござるよ」
    不意に自慢のラーメンを褒められ、気恥ずかしさから皮肉交じりに言葉を返したミェンミェンだったが、ニンジャラにとってはそれが本心で無いことは見透かされている様で彼は柔らかな微笑みを浮かべると再びお礼を告げて立ち去って行った。

    「通り雨のようだったな」
    突然来たと思えばさっと帰っていく。まるで通り雨のような人・・・いかにも忍らしいなとミェンミェンは小さく微笑む。しかしそれと同時に雨が降り続いていたらまだ彼はここに残っていてくれただろうかと少し天気を恨んだ。今まで雨といえば客の足を遠開けるものだけのものだと思っていたが、たまにはそんな天気でもいいのかもしれないと思いながらミェンミェンは暫くニンジャラを見送り続けるのであった。

    END

    ミェンミェンの鞄には絶対可愛らしい龍のマスコットがついてる…はず…
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