返そうと思った言葉は潮風がさらって行った あついあつい夏休み、俺たち演劇部は次の公演の準備をしていた。
「北斗くんは仕事の都合で午後から参加するようです。」
部長はスマホを見ながらそう言った。
午後まで北斗先輩に会えないのか。
「そろそろいい時間ですし、休憩にしましょう。友也くん、買い出しに付き合ってくれませんか?」
「え、それなら俺行ってきますよ。こういうのって後輩の仕事でしょ?」
「いいんですよ。ほらほら、行きますよ。」
半ば強引に部室から押し出されて先輩の後ろを歩く。校舎を出て、校門を抜けて、海沿いの道に出た。
「どこに行くんだよー。」
前を歩く部長に尋ねると
「フフフ、秘密です...⭐︎」
怪しい笑みを浮かべて振り返るだけだった。
潮風が前髪をくすぐり、目の前の長い髪を踊らす。時々、海の匂いに混じって薔薇のような匂いがする。部長の髪の匂いだろうか。
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