しあわせだと、笑っていてよ.
1.
トラファルガー・ローが生まれて初めて『それ』を作ろうと思い至ったのは、いつの間にか胸の裡に育まれていた想いを上手く伝える術を持ち合わせていなかったからだ。
言葉として愛を伝えることは、ローにとって難しいことではない。
愛というものをローはきちんと知っている。
好きだ。愛してる。
かわいい。愛おしい。
抱きたい(これについては、奇跡的に想いが通じ合った後。しかるべき時が来たら伝えたいと思っている)などなど。
伝える言葉は他にもいくらだって思い浮かぶ。
言葉だけならば、だ。
ただ、それをありのまま言ったところで、想い人に伝わるのかが、わからなかった。
女相手なら百戦錬磨のローであったが、それは一夜だけの遊びに限定したときの話だ。
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