神父とその眷属の信仰心について足音とともにぴたぴたと水音がしている。月明かりが所々から差し込んでいる生臭い香りが充満してる廊下を通って、その扉の前に立つ。
ノックを二回。返事は無い。
「グレゴールさん、入りますね」
静かに戸を開けて身体を滑り込ませる。邪魔にならぬよう音を立てないように。扉が締まり切ると、しんと静寂が広がって、この部屋だけまるで別世界だ。
役としての神父だなんてとんでもない。一遍の曇りもなく、この完璧で夢ような世界の永続を望んで、皆が軋ませてきた心を慈しむように撫で、優しく、温かく、我らの目指すべき共存の形へ導いてくださる。
グレゴールさんは目を閉じて、祈り続けている。
それに倣い、膝をついて祈りを捧げる。
この世界を作り出したお方に。
1809