光の魔法「わあ……」
思わず零れた感嘆の声を隠すように慌てて口許を手先で覆うも俺の声は白い息となって空気中へと溶け込んだ。目を見張る程に煌めく世界。色とりどりの光が眩しくて、きゅっと目を瞑った。
時々通り掛かることはあったけど、イルミネーションを見ることを目的に街に出掛けることなんてなかったからなんだか心が浮き立ってしまう。その相手が太陽みたいに眩しいあいつとだから尚更かもしれない。……まるで光の世界に迷い込んだみたいに、きらきらしている。特に意識したことなんてなかったけど、俺はこの光の世界がなんとなく好きなのかもしれない、と緩む口角を隠すようにマフラーをほんの少し引き上げる。ぱちぱちと瞬く度に視界を彩る煌めきを眺めていれば、行き交う人の合間を縫って俺の元へ慌てて駆けてくる待ち人の姿が見えた。僅かに息を切らして、大きく手を、腕ごと振る。大袈裟な所作に小さく笑ってから、俺は控えめに手を振り返した。
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