──それを目にした瞬間、男は息を飲んだ。
ボロボロの布切れ1枚を被せただけの身体は、傷が無い箇所を探す方が難しい。日に焼けることを知らない白い肌に、鱗で覆われた尾ひれに、いたるところに鞭で打たれたような夥しい痕が残っている。海中できらきらと揺れていた美しい金色の髪も紅で汚され、かつて陸への期待に満ちていた琥珀色の瞳はぼんやりと中空を見つめている。頬には涙の跡があった。
喉元には鎖に繋がれた無骨な首輪が。その下に乱雑に巻かれた包帯は血が滲んでいる。どうにかして外そうと掻きむしったのだろう。よく見れば指先も血で彩られている。
それでもまだ、辛うじて、彼は生きていた。
王子、と震える声で呼びかける。暫くぼんやりとしていたものの、自分を認識した途端カタカタと震えだす。琥珀色の双眸に浮かぶ怯えが彼の扱いを物語っていた。
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