夢の故命を賭けたいと思うほどの出来事なんて人生に1度あるかないか、それが普通だ。
ましてやそれを他の誰かの為に、なんて決断をできる人はいるのか。
「果たして君は、自分を犠牲にしてでも世界を救うか?」
頭に直接響くような声がした。
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雪が積もっている。息が白く染まり、刺すような冷たい風が時折吹く。けれど彼らのような少年少女には楽しい非日常に映っていた。
「わ!何するの!」
目の前を歩いていた少女の顔に雪玉が当たる。少女は雪玉を投げた男子に文句を言いつつ、しゃがんで素手で雪玉を作りそれを投げた。
避けることが出来なかった男子は当たったことに怒り、再び雪玉を手にする。
そんなこんなで遊びながら下校する少年少女とは違い、1人でゆっくり歩いている彼は、名を絵空凛斗〈えそら りんと〉という。
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