幸せ目覚まし代わりにしているスマートフォンから起床時間を知らせる音が鳴っている。起きれば輪郭が曖昧になる夢から現実の朝へ。意識は無情にも引っ張り起こされ、音也は仕方なく瞼を開いた。
「んん〜」と抵抗するような声を上げながら、音の発生源を手探る。昨晩の自分が適当に放り投げたせいで定位置に目的のものがない事を恨みつつ、何とかスマートフォンを見つけ出した頃には、意識は随分とクリアになっていた。
リンリンリ…と起きるまで鳴り続けるそれをやっとの事で止める。途端に静かになった部屋。ベッドの上。まだ体温が残っているシーツ、あたたかな空気がわだかまる布団の中、音也の腕に巻き付いていた恋人の肌色の腕。魅力的すぎる全てに負けて、起き上がりかけていた体を再度戻す。温かい、いい匂い、幸せ、と思いながら、うつらううらとしかけた矢先。またリンリンと鳴り始めるスマートフォン。二度寝防止のため5分おきに鳴るように設定したのは自分だというのに、毎度恨めしい気持ちになってしまうのは何故だろう。
4468