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    ナミスケ

    @Nmsk_MK2

    絵とSS置き場

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    ナミスケ

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    ヒカリとナイスとたまごの話。

    たまご「ここにニュージェネレーションヒーローズのデータを元に開発された新しいウルトラエッグがある」
     机の上にウルトラエッグを並べて、ウルトラマンヒカリは目の前のウルトラマンナイスを凄んだ。
    「ソウデスネ」
    「わかっていることは、おまえさんが、持ってきたということだ」
    「あ、あー……それは、えっと、ドクター! ドクターエッグが! 私のところに送ってきたものでぇ」
     まごまごとナイスは答えた。
     それをギロリ、とヒカリは睨みつける。
    「それでは、ドクターエッグはこれを託すほど、おまえさんとはよく知った仲なのだな?」
    「えーっと、まあ……そういうことに……なるのかな」
    「よろしい。ならば、話は簡単だ。ドクターエッグ、本人をここに連れてきてほしい」
    「そ、それはちょっと」
    「だいたい、かれこれ十年近くなるのだぞ、彼が姿を見せなくなって……連絡もつかなければ、ウルトラエッグの研究施設も、エッグベースも、今やもぬけの殻だ」
    「それはまあ……そういうこともあるでしょうよ」
    「おまえは、現状を理解しているのか」
     鋭い声がナイスに刺さる。ヒカリは座っていても、ナイスより大きく、威圧感がある。
    「現状、ソラも科学技術局を離れ、今は私が主な開発担当となっている」
    「人手が足りないのは、他にも人材を登用するとか……労基とかないんですか? 保育所が労基大丈夫だったか聞かれると困っちゃうけど、ある程度そういうのはあったし。ヒカリ博士ちょっと働きすぎなんじゃ……」
    「労働時間の問題ではない」
     ぴしゃり、とヒカリは言い返した。
    「思考の偏り、が問題だ」
    「はあ……」
    「私ばかりが開発していると、どうしても、私の得意分野になってしまう。それではつまらないだろう」
    「つまらないってことは、ないと思いますケド」
     何を求めているのだ、この人は。ナイスは苦笑を顔に貼り付けるしかなかった。
    「ウルトラエッグ、という人類にも利用可能なサイズ感、デザイン、威力の調整……それになにより、この発想を形にする力! ほしい……今私に必要なのは、開発仲間……」
    「仲間がほしい、って悪い感情じゃないはずなのに、なんでこう怖くなるかな……」
     ヒカリの勢いに圧倒されながら、ナイスは絶対ドクターエッグは出すまい、と心に決めた。絶対にいろいろと巻き込まれる。
    「見ろ、このウルトラエッグのデザイン、ギミック。中でもナースやキングジョーは、変態的と言っても過言ではない、変形合体」
    「変態は失礼でしょうが」
    「そうか? 蝶のような完全変態だと思うが」
    「そっちの変態ぃ?」
     熱弁するヒカリに、ナイスはペースを奪われっぱなしだ。この男、こんなにマイペースなのか。
    「とある惑星には変形する超ロボット生命体がいると聞く……ウインダムたちのような金属生命体と違って、変形するだけでなく、他の姿もスキャンして擬態できるらしい……どのような進化を辿り、構造はどうなっているのか……」
    「ヒカリ博士、話それてますよー」
    「厶。そうだったな。それで、ナイス。おまえさんは、ドクターエッグとどういう知り合いなのだ。なんとか、ドクターエッグを連れ出すことはできないのか」
     ブツブツと思考にハマりそうなヒカリを思考の沼から引きずりだしたが、今度は矛先を向けられてしまった。
    「えっとまあ……こう……身内っていうかまあ……」
    「身内? 同じ星出身とかか? おまえさんの故郷は、確かに開発分野は優れていたな」
    「うんまあ……そうそう」
    「そういえば、地球人のサイズに合わせてウルトラエッグは作られている。彼らの良きパートナーとなるように。ドクターエッグも地球にいたのか?」
    「そうだよ。ウルトラエッグは、子どもたちの良きパートナーに、そして頼もしい守り手になるように」
     手に収まりのいいウルトラエッグ。ひとつ、手に乗せて、アタックモードに変形させる。
     クルクルと回って、ウルトラマンゼットの力を宿したウルトラエッグは変形した。
    「手のひらのヒーローってのもいいもんでしょ?」
     ゼットのウルトラエッグはピョコピョコ飛び回り、ヒカリの手に乗ってきた。それを指先で撫でながら、ヒカリも微笑みをこぼす。
    「いつもは私達が彼らを手に乗せるけど、こうしたら逆だ。それも、悪くないかなって」
    「まるで開発したクチだな」
    「あ、えっと……私も、開発にはお手伝いしたから! ウルトラマンの基本データとか、隅々まで、私から取ったりしたね」
    「科学技術局にいってくれればいくらでもデータの共有はするのに……」
     少し残念そうなヒカリに、ナイスは「伝えておくよ」と笑ってみせるしかない。
    「ヒカリ博士は、研究者仲間いないの……? 学会とかさ」
    「もちろん、学会には研究者仲間はいる。だが、同族の……ウルトラ族の研究者仲間は、ずいぶん少なくなってしまった」
    「まあ、発展しきってるからなぁ……この星は」
     科学技術局には優秀な技術者たちが揃っている。しかし、きっとヒカリにとってはそれだけではダメなのだろう。
     意欲的に開発に取り組み、好奇心を忘れず、前へ、と進む科学への探究心。それを求めているのだ。
     光の国、本星生まれではないナイスは、この進んだ星の科学技術への関心について肌身で感じているわけではないが、想像はできた。
    「ヒカリ博士は、今もタマゴなんだ」
    「タマゴ?」
     キョトンとしてヒカリは手のひらの上のウルトラエッグゼットを見た。ゼットもポカンとヒカリを見上げている。
    「タマゴ。まだ何に成長するかわからないタマゴ」
    「そんな歳でもないだろ、私は」
    「歳は関係ないさ」
     ナイスはビシッと人差し指をたてた。
    「可能性はすべからくタマゴだよ。科学技術への希望もまたタマゴ。きっと素敵な未来が生まれるとタマゴの中でワクワクしている」
     想像してナイスもワクワクしてきた。
     ヒカリはいつも新しいアプローチで戦士たちを助けている。次はどんなギミックが? 組み合わせは? 考えるだけで楽しいアイテムたち。
     ああ、ウルトラエッグのキングジョーを熱弁するヒカリはこんな気持ちで話していたのかもしれない。
    「それなら、きっと……私は生まれ変わったんだな」
     ヒカリはたっぷり考えてから答えた。
    「タマゴに戻れたんだ」
    「卵が先か鶏が先か、って話?」
     ゆったりと笑ってヒカリは座り直した。
    「覆水盆に返らないが、鶏はまたタマゴを生めるという話かな」
     ナイスより一万年は長く生きている男のくたびれた笑みに裏を見ないほど、ナイスも純真な子どもではない。
     ナイスが光の国に来たのはヒカリが光の国の国を出た後で、戻ってくるより前だから、出ていく前のことはほとんど何も知らない。
     ただ、鶏、とヒカリがいったものは、きっと出ていく前のヒカリなのだろうと思えた。
    「……生まれ変われてよかった?」
    「よかった。友も、仲間もいて、科学技術へも、再びこうして向き合える。今度はもっと、大きなタマゴを孵化させてみせよう」
     悠然と笑ったヒカリは、手の上のウルトラエッグのゼットを机に下ろしてやった。
     ピョコピョコともう一度飛んだウルトラエッグのゼットはヒカリの腕をよじ登り、ヒカリの肩の突起に立ち向かっている。
    「一人で開発をしていると、行き詰まることも少なくない。そういうとき……おまえの言葉を借りるなら、同じタマゴを持つ者が近くにいたら、と思っていたのだろう」
     だからドクターエッグによろしく、と再度ヒカリは付け足す。
     そんな寂しい顔をするもんじゃない。
     保育園で、迎えがなくなく来ない子どものような、待ち遠しさと寂しさの混ざった顔をしてほしいわけじゃない。
    「べ、別に……ドクターエッグでなくても、いいのなら……私でいいなら、話ぐらい、聞き……ますけど……」
    「いいのか? チンプンカンプンかもしれないぞ」
    「ちょっとぐらいはわかる……はず。これでもTOY一番星から来たわけだし、少しは開発のこと、わかるつもりだ」
     ドクターエッグだって、ヒカリほどの小難しい話を理解できるとは限らない、という言葉は飲み込んだ。
     それはドクターエッグのイメージが崩れてしまうから、黙っておこう。
     ピョコピョコとウルトラエッグのゼットもヒカリにアピールしている。自分も聞く、というようだ。
    「ははは、ありがとう。ナイスも」
     くすぐったそうにヒカリは笑う。
    「そういえば、ドクターエッグは、ニュージェネレーションの子たちのデータをどうやってとったんだろう?」
    「そりゃ、ゼロに頼めば、鶴の一声よ」
     パーソナルデータは限られた権限と本人に使用権がある。ゼロを通じて頼めば、ウルトラエッグを知らないニュージェネレーションの彼らは面白がって参加してくれた。
     ウルトラエッグを知らない、ということにはいささか驚かされたが、考えてみれば、みんなウルトラマンになる前だ。
    「ゼロに頼む? ドクターエッグはゼロとも知り合いなのか?」
     はて、とヒカリが聞き返して、ナイスは慌てて首を振った。
    「あー! あ、私がね! ドクターエッグに代わって、ゼロにお願いしたの! 私もゼロとは長い付き合いだから!」
    「なるほど、おまえさんが……」
     ゼロにまで話が回れば、確実にゼロは言ってしまうだろう。ドクターエッグ、最大の秘密を。
     ヒカリは納得してくれたようで、よかった。
    「よく頼りにされているんだな」
    「ま、まあね! マブだから!」
     ナハハ、と笑って誤魔化せただろうか。たぶん、誤魔化せた。
    「そこまでおまえさんが言うとは、ますますドクターエッグには、ちゃんと会ってみたいものだな。おまえさんからも言っておいてくれよ」
    「あー……うん。はい、言っときます」
     ナイスが適当な笑みを浮かべていると、ウルトラエッグのゼットはついにヒカリの頭の上まで登頂を果たしたようだ。
     そこからぴょんと飛び降りて、エッグモードに戻ってヒカリの手のひらにまた戻る。
    「しばらく、ウルトラエッグたちは預かるが、たまに顔を出して様子を見てほしい。私も話がしたいし」
    「それはもちろん!」
     大きく頷いて返すと、ヒカリも満足げに頷いた。
    「ああ、ドクターエッグと来てくれて構わないから」
    「諦めが悪いな、ヒカリ博士も……」
     思わず呟いた言葉を、ヒカリは理解しただろうか。いやきっとわかっていないだろう。
     どうして、ヒカリの前にナイスは現れてドクターエッグは現れないのか。
     いったい、ドクターエッグとは誰なのか。
     光の国随一の頭脳でも、わからないらしい。
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