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    shidarigawa

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    shidarigawa

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    🐉🏝️のわちゃわちゃして、仲良しな感じが書きたくなったので、書きました。🐉さんの高校生活妄想〜〜〜〜それなりに楽しくしてて欲しい。
    T(たのしい)N(なごや)S(しぶ)

    1.2.3「リュウジさんが王子様!?」
    名古屋支部の休憩室、シマカゼとナガラがハモる。
     シマカゼ、ナガラ、リュウジ、そして浜松は飲み物を飲みながら1つのテーブルを囲み、座談に興じていた。
    「そう、めちゃくちゃ王子様だったよ。」
    浜松が腕を組んでリュウジを横目でニヤリと笑って見る。
    「えぇ〜〜なんでリュウジさん教えてくれなかったの?ぜったい見に行ったのに!!」
    ナガラが悔しそうに両手を握りしめ、前に乗り出す一方で、リュウジは額を抑える。
    「誰が言うか。浜松さんと赤城さんが勝手に来たんだよ。」
    リュウジは、苦虫を噛み潰したような顔でナガラを見る。
    「いやぁ、リュウジくん学園祭いつなの?って聞いたら答えてくれたじゃないですか。その日赤城さんもちょうど出張で来てて、それじゃあリュウジくんの学園祭見に行こうかってなるのは自然な流れでしょ。」
    「まさか来るとは思わないじゃないですか。プライベートの侵害です。」
    「僕たちもプライベートですし。」
    浜松は、ははっ、と笑顔で言う。リュウジは1枚上手の先輩を、くっと軽く睨みつける。
    「劇だったんだけどね、」
    浜松はそんなリュウジのことはお構いなく話し続ける。
    「最近流行りの異世界転生ものでさ。主人公は傾きかけた国の王家の、長女に転生した理系女子高校生なんだ。主人公はガチガチの理系だから、自分の国で極秘にされてきた魔法を理系学問の力と合わせて農業に利用する研究を始める。それで、魔法の利用を国民にも解禁して、その国全土でその技術を使って国力を上げようと奮闘するんだ。一方で魔法を権力の象徴として上層部のみで保持していきたい勢力があって……って、あれはオリジナルの脚本?」
    浜松が問えば、リュウジはそうです、と答える。
    「リュウジくんは、そこそこ力のある国の王子様で、姫を追い出したい魔法主権保守派勢力のゴリ押しで進められている、姫の政略結婚の相手なんだよね。」
    みんなの視線がリュウジに集まる。
    「マホウシュケンホシュハセイリョク……まったくよくわかんねぇけど、なんかリュウジさんが究極政略結婚相手に見えてきた。」
    ナガラが楽しそうに声を上げる。
    「そんでまぁなんやかんやあって、2人の婚礼を踏まえた舞踏会が開かれるんです。しかし舞踏会の直前に、姫のやっていること自体を禁忌とする第三の勢力に姫が狙われたところをリュウジくんがカッコよく助ける。」
    シマカゼは、暴露されることへの不服さを隠しきれていないリュウジをまじまじと見る。
     悪党からお姫様をカッコよく助けるリュウジを思い描く。そして、「恋に落ちる美しいお姫様とカッコいい王子様」なんだろうな、と、そんなことを考えて、架空の話なのにシマカゼは少しだけモヤモヤする。
    「でもそこでリュウジくんは姫にあることを持ちかけるんだ。リュウジくんの振る舞いは完璧に王子様だったね。姫の手を引き寄せて耳元でなんか囁くんだけど、僕だったら惚れてましたね。周りからの黄色い叫び声!まぁ僕たちも叫んだけどね。」
    「客席から知り合いの声が聞こえてきて青ざめました。なんなんですか、よっ!臨時指導代理!って。極秘なんじゃないんですか。」
    リュウジが浜松に怪訝な顔を向ける。
    「あれは赤城さんでしょ。あの盛り上がりの中なら聞こえないと思ったけど、聞こえてた?耳がいいんだねぇ。それで、舞踏会のシーンがまたすごくて、あれ、みんな練習したのかい?ワルツ。社交ダンス?リュウジくんったら何人かお嬢さんをとっかえひっかえくるくる踊ってて、それはそれは王子様だった。」
    うんうんと頷きながら腕を組んだ浜松が言う。
    「うちの学校社交ダンス部強いんですよ。だから部所属のやつらに、そこはきっちりやりたいって言われたらやるしかないじゃないですか。」
    リュウジは不本意そうに答える。
     シマカゼは隣のリュウジをチラリと盗み見る。綺麗な女の子たちの細い腰を引き寄せて踊るリュウジを想像する。リュウジにはそんな女の子たちが似合う。華奢で可憐な女の子たち。
     間違っても僕じゃない。そんなことを思ってしまったことを頭を振って掻き消す。
    「しばらくこっちに来れなかった学校の用事って劇と踊りの練習だったって訳だね。」
    いつの間にかその場に紛れ込んでいた羽島が会話に入ってくる。
    「すいませんでした。」
    リュウジが謝れば羽島は笑っていう。
    「いや、いいんだ。いいんだ。そういうのって大事だからね。」
    羽島は別のテーブルの席に付き、両手を組む。話を聞く体勢に入ったことを察知したリュウジは、羽島をじっと見つめて立ち去らないかを伺っていたが、その眼力にも動じず、羽島は口元に笑みを浮かべて、浜松が先を話すのを待っている。
    「それで最後に主人公の子と踊るんだけど、そのまま2人はいい感じになってラブシーンか…!と思わせてからの、急展開でね。姫と王子はすれ違って、違う人の手を取るんだ。姫は自分のことをずっと支えてくれた魔法使いの手を、王子様は、ダンスですれ違うタイミングを狙って姫の背中にナイフを突き立てようとしていた自分の側近の騎士の手を取るんだ。」
    「お姫様には他に好きな人がいたんですね。」
    シマカゼはなぜかほっとして呟くが、王子の手を取った人物に思いが至ってつい声を上げる。
    「えっ?側近の騎士?」
    「そう、リュウジくんとはまたタイプの違うイケメン。」
    「いけめん」
    ナガラが情報処理できない顔で復唱して、浜松を見る。
    「それで、なんと王子様は側近にプロポーズするんだよね!」
    「えっ!予想外」
    ナガラが展開に目を白黒させている。シマカゼもその展開に動揺する。
     リュウジさんが、ナイフを隠して姫を殺そうとしていたイケメンにプロポーズ……??
    「王子を愛する側近は、王子が本当は弟に国を任せて、世界で武道を極めたいことを知っていたんだ。そこで、姫を亡き者にしようとする第三勢力に加担していた。でも王子はそのことを知っていた。だから、王子は姫に、そのことが明らかにならないよう協力を仰いだ。王子は密かに側近を愛していたからね……そして、からの、公開プロポーズだよ。まぁその時の黄色い悲鳴はえげつなかったよ。ドクターイエローだけに黄色いねって赤城さんが言った時は、ちょっとそれはどうかと思ったんですけどね。」
    みんなは各自、曖昧な笑いを漏らす。
    「主人公は自分の国で魔法使いと研究して国を豊かにし、王子様は側近と旅に出るハッピーエンド、ですかね。まぁ、リュウジくんも相手のイケメンも人気ありそうだもんね。2人がくっつけば誰も傷つかない脚本、になるのかな?」
    リュウジは無言で両手で頭を抱えている。
    「斬新な脚本だね。」
    羽島が小さく笑って言うのに答えようと、リュウジは顔を上げて羽島を振り返る。
    「紆余曲折あったんです。劇の準備の途中で魔法使い役の子と主人公が付き合い出したのを考慮した結果、結末が書き変わったと俺は聞いています。」
    それを聞いて、浜松が笑いながら言う。
    「でも、良かったよ。ほとばしる若さと勢いに笑ったり感動したりしたよ。いいね、学生って。リュウジくん、踊ってみてよ、まだ踊れるんでしょ?もっかい見たいな〜見事に踊りをリードするところ。なかなか情熱的で、僕だったら惚れてましたよ。」
    浜松がリュウジに気安く2回目の「僕だったら惚れてました」を言うので、シマカゼはなんとも言えない気持ちになる。
    「いやです。」
    リュウジは当たり前のように拒否する。
    「私も見たいな。」
    そう言ったのは羽島だ。
    「いやぁ、見たいなぁ、初めはあんなにトゲトゲしていた子が成長して踊る姿……私だって見守ってきた子の晴れ姿見たかったんだがなぁ」
    羽島が天井を仰ぎ見て言うので、リュウジはぐっと唇を噛む。
    「これは一種のパワハラではないのか」
    そう小さく呟いて立ち上がる。そして、隣にいたシマカゼに手を差し出すので、シマカゼはその手のひらをキョトンとして見つめる。
    「シマカゼ」
    リュウジに名前を呼ばれるので、ハッとして、リュウジを見上げて、その手を取る。
     手を引っ張られて、場所を移動させられる。それから、ぐっと腰が急に引き寄せられて身体が密着する。
    「リ、リュウジさ」
    「背筋を軽く反るように伸ばせ。」
    耳元で囁かれて背中に手を回される。
    「手は俺の肩に」
    急な至近距離にシマカゼは焦るが、言われた通り背中を伸ばして、リュウジの肩に手を置く。
    「上半身を意識しろ……そう、まぁいいだろ。」
    リュウジはシマカゼを確認してからギャラリーの方を振り向く。
    「シマカゼは不慣れなので、大目に見てくださいよ。」
    そう言って、シマカゼの片手をぎゅっと握って腕を真っ直ぐ伸ばす。
    「ワルツだ。1、2、3のリズムでついてこい」
    シマカゼを軽く引き寄せながらリズムを取る。
    「1、2、3、1、2、3」
    シマカゼは、慌ててついていこうとするが、焦ってリュウジの足を踏む。
    「すいません!」
    「大丈夫だ」
    踏まれても気にしないリュウジは、ステップを踏んでシマカゼをリードする。
    「なかなか筋がいいぞ。」
    あまりにリュウジのリードが上手いので、しばらくリズムに合わせていれば、シマカゼもどうしたらいいのか分かってきた。
     繋いだ手の先とステップを追えば、どう進むべきなのか自然に分かる。広くはない休憩室のスペースを縫い、1.2.3のリズムで2人のステップはスクエアを描いていく。
    「さすがアニキ!」
    ナガラが手を叩いて囃し立てる。
    「回って」
    言われてリュウジに軽く引かれるように緩く弧を描くターンをするが、シマカゼの足はもつれてバランスを崩す。
     倒れかけた腰を抱かれて受け止められる。近い距離と体温、リュウジの匂いにシマカゼの目の前は白黒する。
    「危なかった」
     シマカゼを引っ張って立て直したリュウジはシマカゼの前で片足をつく。片手を自分の胸に当て、もう片方の手をシマカゼに差し出して言う。
    「私と結婚してください。」
    シマカゼは王子様のように言うリュウジを見下ろす。
    「は、はい。」
    思わず返事をしてその手を取ってしまってからシマカゼは一気に顔が熱くなる。
    「わーーー!!かっこいーー!!」
    「よっ!名古屋支部の王子様!」
    ナガラと浜松が歓声をあげ、羽島も拍手する。
    「これでいいですよね。」
    そう言ってスッと立ち上がり、ギャラリーに言い放ってから、シマカゼに視線を戻して、少し目を見張る。
    「シマカゼ、照れすぎだ」
    赤い顔のシマカゼと目が合ってリュウジにも照れが伝染した。
     2人は視線を逸らしてパッと手を離す。
    「……確かにこれは惚れてしまいますね!」
    シマカゼは心臓が高鳴るのを誤魔化して、両手を腰に当て、冗談めかして言うが顔は赤い。
    「アニキ照れてやんの!」
    ナガラに茶化されて、慌ててシマカゼはナガラの頭をぐりぐりと押さえつけに行く。
    「照れるに、決まってるだろ」
     みんなに笑われて、シマカゼは口を引き結ぶ。
    「姿勢もステップもアラが多いが、全く初見にもかかわらずついてくるとは、さすがシマカゼだ」
     小さく笑いながら言うリュウジの眦も少し赤い。
     シマカゼの心臓はその後しばらく1.2.3のリズムを刻み、リュウジと触れた部分はじわじわと熱を持ち続けたのだった。


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