70% 会議室から帰ってきた津川アガノが、研究室の自動ドアを開ければ、自分がいつも座る椅子に、誰かがいるのがチラリと確認できる。
アガノは息を殺して小さく笑うと、研究員用の長い上着を翻して、その後ろ姿にそっと近づく。察しのいいその相手は、アガノが帰って来たことに気がついて、回転椅子をくるりと回し、少し困ったような顔で近付いてきたアガノを見上げた。
「お久しぶりです」
そう言ったのは指令員の岩見沢ソラチだ。
「久しぶり、かな」
アガノが笑みを浮かべれば、ソラチは少しムッとしたように眉を寄せる。
「じゃ、ありません。ここのところずっと根をつめてるでしょう?ここに籠りきりで、画面越しか音声でしか会ってませんよ」
「いやぁ、そうだっけ?」
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