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    ナナ氏

    なんかいろいろ置いてる

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    ナナ氏

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    ぽいぴくが文章もできるって聞いたので書きかけのガレ魔女人形兵小話をひとつ、完成させるとは言ってない

    ガレリア宮怪異 がたり。と、物音がひとつ。
     お屋敷の地下に人はいないはず。だって鉄格子に鍵がかかっていた。人がいるはずがない。そう、思い込んでいただけ。
    「え……」
     さっきまでの威勢はどこへやら、細く小さな声を漏らし、兄はゆっくり振り向きます。
     視線の先に人影はなく、赤色の大きなワードローブが静寂を保ったまま佇んでいるだけ。
    「んー? なんじゃこりゃ“呪われているため触るべからず”? 一見ただのガラクタのようにしか見えないけど? アニキーどうしよー」
     物音に気付かなかったのか鈍感なのか、弟は何食わぬ顔で棚を物色中。忠告文があった貼り紙をさっさと剥がし、どれを持っていこうか吟味しています。
     呼び掛けられた兄はビクリと肩を震わしましたが、すぐに首を振り、
    「え、あ、ああ……そうだな。こういう時は根こそぎ持っていくに限る。どっかの国に“下手な鉄砲数撃ちゃ当たる”っていう言葉があるように、ガラクタに見えるような骨董品も大量に持って帰っておけばそのうちのひとつぐらいは大金に変わるだろ」
    「さすがアニキ! 博識だなーおいら、頭の良いアニキの弟に生まれて幸せだよー」
     本心からのセリフをぼやきつつ、弟が棚の中の物品に手を伸ばした刹那……、

    「ちょっと待ちなさい」

     耳元から制止する声が聞こえ、手を止めました。
     それは、生まれてから当たり前のように聞いている兄の声ではありません。女性……自分と同じ歳ぐらいの女の子の声でしょうか。確かに、ハッキリと聞こえたのです。
     屋敷に仕えているという女の子が起きてきたのでしょうか、それにしてはかなり至近距離で聞こえたような……? と、疑問を抱くと同時に振り向いて、
     とんでもないものを見ました。
    「…………あれ?」
     肩の上に、人形が乗っていたのです。
     全長はおよそ十センチほど、可愛らしい顔つきにノースリーブの服にミニスカートから見える肌は白く、それでいて女性特有の柔らかさも伺えます。
     人形だと思ってしまったのは体の小ささからですが、それにしてはよく出来ています。まるで本物の女の子をそのまま縮めてしまったような……。
    「ちょっと待ちなさいよ、アナタ」
     再び女の子の声がして弟は驚愕します。なんせ、人形から女の子の声がするのですから。
    「……!? ……、……!」
     驚きのあまり言葉を失う弟の後で、兄も同様に無言で驚愕中。
    「アナタねえ……こんなところで何、やってるのよ」
     人形が喋るという前代未聞の事態に驚くしかできない弟の心境をよそに、少女の人形は問答無用で続けます。
    「アナタのことよ、ねえ、わかる? アナタでしょ、わかってるでしょ? ねえ」
     何が分かっているというのか、弟には何もかもがさっぱり分かりません、兄もわかりません。
    「わ、わからない……です、けど……あの……」
     やっとのことで出した言葉。そして、
    「なんで分かってないのよぉ!!」
     怒声が飛んだ次の瞬間には、弟の視界は九十度ほど回転していました。同時に側頭部を鈍い痛みが走り、十年前に父親に殴られた記憶がフラッシュバックしました。
    「ごえ」
    「アンタが当番でしょうがぁ! しっかりしなさいよ! こっちの酒を切らしてんじゃないわよ!」
     反対側の側頭部と床が激突し、理不尽に叱り付ける声が頭の中をキンキンとうるさく響き、すぐに立ち上がるという選択肢を放棄させました。
    「弟―!?」
     兄驚愕。人形の女の子が弟の側頭部を殴って軽く吹っ飛ばしたのですから、驚かない方が難しい。ちなみに緊急時でも名を呼ばないのは仕事中では絶対にお互いの名前を呼ばないというルールがあるためです。
     愛しの弟を殴った人形は、拳をお見舞いすると同時に彼の肩から離れ、空中で美しい三回転を披露して床に着地しています。無駄のない洗礼された動きでした。
     状況が全く理解できないものの、この人形が自分の倍以上の背丈の男を吹っ飛ばすほどの力を持っていることは明らか。もしかすると地下を守っている番人かもしれないと思考を切り替え、懐からナイフを取り出して、
    「こらぁ!」
     後頭部に固いガラスのようなものがぶつかり、小さな痛みが走りました。
    「ってぇ!?」
     反射的に振り返った兄が見たのは、テーブルの上にあぐらをかいて座っている……人形。青年のような風体でした。
    「女の子に刃物を向ける野郎は死ぬ価値がある!!」
     正論のように聞こえる理不尽な怒声を飛ばしました。
    「あ……はぁ? なんなんだよいきなりよぉ……!」
     青年の姿をした人形に気を取られたのが兄の運の尽き。
     脳天に、重い、重い、衝撃が襲います。
    「がァっ……!?」
     かすれるような声を出し、前方に倒れる兄。
     途切れる寸前、遠い世界のことのように聞こえた声が、
    「いや〜あーたんのかかと落としはいつ見てもすごいよなぁ、遠くで見ているおじさんもこう、ずしん! どしん! って重い何かがおじさんの全身のいろいろなところに来ちゃうよ〜」
    「お前の首もかかとで落としてやろうか」
    「あれー? おじさんまだ逆鱗に触れそうなこと言ってないのに〜?」





     ガレリアの地下迷宮を探索する人形兵たちは少し特殊な作りをしていました。
     通常であれば迷宮の外では物言わぬ人形に戻るはずですが、どういうワケかその理屈が通らず、ガレリア宮を自由に動き回れることができます。お屋敷の外に出られないという制約はありますが、それを差し引いても十分に異常でした。
     屋敷に仕える魔女、マダム・マルタも特別な細工をした心当たりは当然なく、ダメ元で人形本人に尋ねてみたところほとんどの人形が「異世界でボコボコに倒した化け物の影響がウンタラカンタラ」と言い始めた為、真面目に取り繕うのをさっさと諦め、とりあえず言うことは聞いてくれるからいいかと受け入れる方針を固めました。
     謎の制約か不具合なのか迷宮内で起こったことは喋れませんが、彼らは彼らなりに作り手には従順で、特異性奇品の回収も順調に進んでいました。
     しかし人形とはいえ彼らも生き物、労働の対価を欲するのは当然と言えば当然です。
     特異性奇品を発見する度に伯爵から臨時収入が得られるため、なにか労ってやろうと申し出たマダム・マルタ。そして、人形たちが欲したものは……お酒でした。
     全体的に見て酒好きが多い旅団の人形兵たち、屋敷に伯爵が滞在していない日を見計らって、暇さえあれば地下で飲み会宴会を開いて大騒ぎしていたのです。




    「……」
     ルテューアは黙りました。目の前で喚き散らしている大人たちを冷静に、そして、軽蔑のこもった眼差しで見つめます。子供が大人を見て「将来こんな大人には絶対にならないようにしよう」と決意する時に見せる、静かな決意の眼差しです。聞いてますか親御さん。
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    Replies from the creator

    ナナ氏

    DONE【世界樹X】付き合ったばかりのクレナイとカヤが夜にトラブルに見舞われるお話
    (花ショー×ショタパラ(女性設定)の百合)
    ※直接的な表現はないけど背後注意、強姦を思わせる描写あり
    秘めた想いの攻防戦 カヤとクレナイが交際を始めてから一週間が経ちました。
     若い二人の初々しい交際……やりたいことやしてみたいことが溢れ出てくるような毎日、過去の悲しい記憶を塗り替えるような楽しい日々。
     その中で、思うことがありまして。

    「クレナイさんのことだから、そろそろ性行為がどうとか言ってくるんだろうな……交際前は怪しいぐらい何もしてこなかったというか意外なほど誠実だったけど、そういう話題は好きそうな感じだったからいつ誘ってきてもおかしくない……もう私から誘った方が……? いや、こっちがガツガツしてそうで嫌だなあ……」

     そう考えるカヤ。

    「カヤちゃんと……したい……! しかし、カヤちゃんは性的交渉にトラウマを持っている子。本当なら今すぐにでも押し倒したいものですがご法度、迂闊に事に及んでしまってはフラッシュバック等を発症してしまう恐れがありますわ。事は慎重に進めなければなりません。カヤちゃんから誘ってくれれば話は早いものですが…」
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