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    ナナ氏

    なんかいろいろ置いてる

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    ナナ氏

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    大切な相手の大切な思い出を傷つけた時、馬鹿はどうするのか
    ※女天使兵×女戦士の百合注意、最後がちょっと下品

    思い出は羞恥で補填される ばきん。
     ベッドと机、収納棚に窓といったシンプルな部屋の中で乾いた破裂音が響きました。
    「あん?」
     部屋の主のひとり、女戦士ミトンが怪訝な顔で右足を退けると、そこにあったのはバラバラになったプラスチックの欠片たち。
     並びからして指輪だった物のようです。
     金色に塗られていたであろうリング、石の部分は赤色の透明プラスチックを宝石に見立てて使っていたのでしょう。それも全て踏んだ衝撃でバラバラになってしまい、かつての人工的な輝きは見る影もありません。
     辛うじて拾えそうなのは宝石部分だった透明プラスチック欠片でしょうか、ミトンはそれを拾い上げます。
    「なんでこんなところにガキのオモチャが……」
     ぽつりとぼやいた時、部屋のドアが開いて、
    「ミトンちゃーん、今日のおやつ……」
     恋人兼幼馴染兼いとこの天使兵ソレイユがひょいっと顔を覗かせました。
     ミトンが振り向き少女の名を呼ぼうとする前に、
    「あっ!」
     この部屋のもうひとりの主人は驚きの声を上げると慌てて部屋に入ります。
     何事か意味のわかっていないミトンが目をぱちくりさせている中、ソレイユは割れてしまった指輪の前で膝をつきます。
    「あーあーあー……やっちゃったね」
    「これってお前のだったのか? 珍しく安っぽいの持ってるなあ」
     壊してしまった張本人、特に悪びれもせずに関心したように言ってます。
     すると、ソレイユはすっと立ち上がって答えます。
    「これね、ミトンちゃんがくれた指輪なんだよ?」
    「へっ?」
     まさか自分の名が出るとは思わず固まるミトン、その手から赤色の透明の欠片を取ったソレイユは何食わぬ顔で続けます。
    「小さい時に駄菓子屋のくじ引きでミトンちゃんが当てたやつ。指輪はいらねえからやるって言ってくれたんだよね」
    「……」
    「まあ覚えてないよねー、わかってたわかってた」
    「……」
     絶句したままの幼馴染を無視し、くるりと回って背を向けて、
    「アリスちゃんに自慢しようと思って久しぶりに出したんだけど、何かの拍子に落ちちゃったのかな? これじゃあ修復もできないねー」
    「…………」
    「安っぽいオモチャだしいつか壊れて当然だよ、それが今日来たってだけ。ミトンちゃんに悪気があったわけじゃないんだし事故と運命だったんだから気にしなくていいよ」
    「あ、えっと、ソレイユ……」
    「おやつできてるから食べておいてね。コタローちゃんに預けておいたから」
    「え、ああ、おお……ソレイユは」
    「私はこれを片付けてから行くね」
     その場でしゃがんで割れた欠片を片付け始めたソレイユは、ミトンを見ることは一切なく黙々と作業を初めてしまうのでした。





     フードコート。
     ミニ魔界で働く悪魔の憩いの場所、昼夜問わず漂ってくるカレーの香りが玉に瑕。最近はカレーが出ている頻度もかなり下がってきたようですが。
     憩いの場所と言っても昼過ぎの時間帯に律儀におやつタイムに入る悪魔は少ないので、周囲にいる悪魔の数はお昼のピーク期と比べると少なめです。
     現在ここで目立った存在といえば、モップ片手に清掃活動に勤しむプリニーたちと、律儀におやつタイムを楽しむ悪魔たちぐらいでしょうか。
    「…………」
     その悪魔たちのひとり、恋人に悲しみもせず怒りもせず優しく納得されてしまったミトンは五人がけ丸テーブルで伏せていました。
     一言も発することはなく白いテーブルに額を押し付け沈黙を保って、
    「珍しく落ち込んでいると思ったらそういうことかあ」
    「自業自得だろ」
    「でも姉さんに美しい記憶を保有させるっていうのも無理のある話だし」
    「うるせー!!」
     極悪天使兵と犬猿の侍と弟戦士により沈黙は破られました。五分も持っていません。
     なお、本日のソレイユ手作りおやつはアップルパイ。すでに切り分けてある状態で皆の前にそれぞれ並べられていました。後は個々の好みに合った飲み物が添えられています。
    「ソレイユの悟っている様子を見る限り、君のある程度の横暴さと傍若無人さは受け入れつつ納得しているんだろうね」
     状況を知って自分なりに解釈するフィルスはアップルパイを食べて、
    「それを一般的に諦めと言うな」
     心底めんどくさいといよりもどうでもいいと考えている姫華はコーヒーを飲めば、フィルスは何も言わずにミトンを哀れむような視線を送りました。
    「うるせー! 口にプリニーの足突っ込むぞ!」
     とうとうミトンから怒声が飛び出し、清掃活動中の一般プリニーが怯えて一目散に逃げていく姿が確認できました。仕事をサボったと見なされ給料のイワシは無しの刑が確定ですね。
     すると、心の底から姉が好きなコタロウが口を開きます。
    「でも、無神経と横暴さを同居させているような人柄の姉さんがそこまで落ち込むのは珍しいね。何か決定的なことでもあった?」
     なんて優しく口調で語りかけました。重度のシスコンである彼は姉相手に限り口調が普段より若干柔らかくなるのです。
     弟の問いに姉は頬杖を付いて不機嫌そうに口を尖らせ、
    「……背中が」
    「背中が?」
    「アイツの背中がなんか寂しそうだった。それが親父が帰ってこない時期の母さんと重なって嫌だった……ってだけ」
    「……」
     コタロウは何も言いません。姫華も今は余計な横槍を入れず、フィルスも黙ってアップルパイを食べています。食べ終わったのでおかわりが欲しいところですが今は我慢。
    「寂しいって言えばいいのに言わないんだぞ? つまりソレイユにとってアタシは、テメーが弱音を吐いてもちゃんと受け取ってくれるほどの強さがないって思われてるってことじゃねえか。子供相手だった母さんはともかく恋人のアタシがそれなのは嫌だ」
     淡々と言った様子はどこか不貞腐れているようにも見えます。恋人に心から信用されていない不甲斐なさが悔しいようにも。
    「ミトンはミトンなりにソレイユのことを大切にしているってことかあ」
     感動しつつもおかわりのことをいつ言おうか考えているフィルスとは対照的に、
    「負けず嫌いなだけだな。ところでコーヒーおかわり」
     バッサリと断言してしまった姫華は空気を読まずにおかわりを要求するのでした。この差。
     姉弟の会話は続きます。
    「姉さんはどうしたら自分がスッキリすると思う?」
    「んー……わかんねえ。壊されて寂しい悲しいって言ってくれなかったことは、アタシがあーだこーだ言っても聞かねえ気がする」
    「コーヒー」
    「頑固でワガママだからなあソレイユは……じゃあ矯正は一旦諦めよう」
    「矯正? いや、諦めてどうすんだよ」
    「おいコーヒー」
    「目前の問題だけ解決しておくんだ、今の姉さんがスッキリするにはそれしかないと思うよ。あとコーヒーはちょっと待ってて」
     静かに、でもやや厳しい声色で諭されたので姫華は大人しく黙りました。
    「目前の問題ってなんだ? そんなのあったか?」
    「姉さん、ソレイユに指輪を壊したこと謝った?」
    「あっ」
     バカでも分かる迂闊。彼女の性格からして悪事を働いたら謝罪するという発想もないことでしょうが。
     無言で見守る二人が白い目でミトンを眺め始めますがさておき。
    「姉さんのことだからそうだと思ってたよ。ソレイユだって指輪を壊した姉さんが謝ってくれるなんて思ってもないし期待するだけ無駄だってわかってるから何も言わないだろうけどさ、とりあえず謝ったらちょっとはスッキリするんじゃない? 根本は解決できないにしても」
    「なるほど、一理ある……」
     真剣に考え始める馬鹿もといミトン。間違いなく本筋の問題からズレていますが馬鹿なので気付きません、目の前の物にしか興味を抱けない悲しい性なので。
    「謝ったらちょっとは見直してくれたりするか……? 寂しいを寂しいって言ってくれるか……?」
    「それの補償はできないけどなんとかなるんじゃない?」
     弟は肝心な時に雑です。姉関係になると何も考えなくなるので。
     ここまで黙って見守っていた姫華とフィルスですが、ここで苦い顔をしてミトンを指し、
    「コイツに謝罪要求は無理だろ……」
    「自分の非を認めるようなモノだし負けず嫌いには難しいかもよ? わかってる?」
     呆れるような口調で言えばミトンはテーブルを叩きつけます。
    「うるせえよお前ら! 謝るぐらいアタシにもできらあ!」
     叫び終わると同時に駆け出してしまいました。なんと、アップルパイとオレンジジュースに手をつけずに、です。
    「あっ姉さん! おやつ食べてからでいいじゃん! 姉さーん!」
    「よし、いなくなったからコーヒーのおかわりだ」
    「本当に姉さんのことはどうでもいいんだな、お前」
    「当然」





     掃除を終えたソレイユは自室に篭ったままでした。
     部屋にひとつしかないベッドの淵に腰掛け、手のひらに乗せた赤色の透明の欠片を眺めています。
    「……」


    「はい、三十五番はこれね」
    「えー! 指輪かよー! あたしは光る腕輪がよかったのにー!」
    「またお小遣いを貯めるしかないよねえさん」
    「くっそ〜……おいコタロー、お前は」
    「ねえさんに駄菓子を買ってあげたからもうお金ないよねえさん」
    「ちぇっ」
    「ミトンおねえちゃん? どうしたの?」
    「ソレイユ…………そうだ、これやるよ」
    「かわいい! ゆびわだ! いいの!?」
    「おお、あたしは指輪とかいらねーし、お前ってこういうの好きだろ?」
    「すき! やったあ! ありがとうミトンおねえちゃん!」


     何百年も昔に気まぐれでくれたオモチャの指輪。
     天界で迫害を受けた時も、両親が行方不明になった時も、修行が辛かった時も、自分が天使なのか悪魔なのかよくわからなかった時も、こっそり出して眺めて、元気をもらっていました。
     今はもう大きくなってしまって指には入らなくなってしまっていた指輪はもうありません。
    「……ミトンちゃんから貰った指輪」
     ぽつりとぼやいた刹那、外からバタバタと大きな足音が響いて、
    「ソレイユ!」
     ミトン突然の帰宅。勢いのまま部屋に飛び込んでソレイユの前で足を止めました。
     特に驚かないソレイユは欠片をそっと握り締めて隠し、大好きな彼女を見上げます。
    「ミトンちゃん? どうしたの?」
    「指輪壊してすまん!」
     すんなり謝罪の言葉が出ました。頭は下げません、言葉だけです。
     ソレイユ、鳩が豆鉄砲を食らったようにきょとん。
    「……えっ?」
    「なんだよその顔」
    「ミトンちゃんが謝るなんて珍しいね……って」
     静かに言い切った表情は珍しいというよりは呆気に取られている様子。完全に想定外だったので。
     この反応でも不機嫌にはならず、ミトンは淡々と答えます。
    「アタシが指輪を壊したからお前が寂しそうにしてたじゃん? だったら謝るだろ?」
    「気にしてないって思ってたのに」
    「お前が気にしてないならアタシも気にしねーよ。でも指輪が壊れたこと気にしてんだろ? なら謝る、アタシが原因だから」
     なんて言ってから鼻を鳴らしました。アタシでも謝れるんだぞと、フードコードに残してきた三人に自慢するように。
    「そっか」
     正直に答えてくれたので、ソレイユも正直な気持ちに従って疑問を投げます。
    「悪いって思ってる?」
     と。
     すると、ミトンはゆっくりと目を逸らし、
    「…………少し」
     ちょっとした沈黙の後に短く言いました。
     そこで、長年の付き合いだからこそ気付いた可能性をひとつぶつけてみることに。
    「ミトンちゃんってば、また何も考えてないで来たでしょー」
     呆れる……と言うよりもいつも通りでホッとしたように安堵の息も吐きながら微笑みました。
     その顔に寂しさはもう、ありません。
    「は!? ちゃんと考えてらあ! 謝ることは考えてる!」
    「謝罪っていうのは相手に対して申し訳ないからお詫びしたいって気持ちを態度や物で示すことで、償おうって気持ちがないと成立しないんだよ? ミトンちゃんは私に償ってくれるの?」
    「え? ああ? おお!」
     突然難しいことを言われて理解が追いついていないものの、償ったらちょっとはスッキリするだろうという短絡的な考えのままに返答してしまいました
     途端にソレイユの赤色の目が怪しく光ります。悪巧みをした時のように。
    「じゃあ言葉だけだと足りないなあ〜?」
    「なにぃ!?」
     ミトン驚愕。恋人の悪どい顔に気付いてはいません。
    「私の言うことをひとつ聞いてくれたらそれを指輪を壊した謝罪とみなして受け入れてあげる! どう? やる気ある?」
    「やるやる! なんでもやる! 言ってみろ!」
    「これ着てほしいの」
     ベッドから降り、クローゼットに向かったソレイユが要求した「これ」は。





     舞台は再びフードコートに戻ります。
     おやつのアップルパイを食べきり、お茶とコーヒーに舌鼓を打っていたコタロウたちの前に現れたミトンとソレイユはというと。
    「というワケで双子コーデになったよー! じゃんじゃかじゃーん!」
    「……」
     お互いがお揃いのファッションで着飾る、俗に言う「双子コーデ」を実行した姿で現れました。
     ニコニコしていて上機嫌のソレイユとは対照的にミトンは顔を伏せて大きなため息を何度も吐き出します。まるで夕食のメインおかずが揚げた肉だと思っていたら、実際は魚の煮物だった時のよう。
     テンションが最低値まで下落しているのには理由があります。
    「なんでアタシが……よりにもよって……よりにもよって……メイド……」
     双子コーデの内容がミニスカメイド服だったから。
     黒のワンピースに白いエプロン、頭にはヘッドドレスで胸元には白いリボンといったオーソドックスタイプのメイド服。タイツは白で靴は黒というシンプルだがそこが王道で可愛らしい。
     突然可愛らしい姿で現れた二人に対し、
    「二人共似合ってる!」
    「贖罪としてのコスプレってことかあ、ミトンがスカートなんて珍しいね」
    「アホらし」
     拍手喝采のコタロウ、純粋に感心するフィルス、悪態を吐く姫華とリアクションが綺麗に分かれました。
    「…………」
     犬猿の仲である姫華に馬鹿にされているというのにミトンは何も言わずにノーリアクションでため息を吐くばかり。
    「……んん?」
     これには姫華も首を傾げました。
    「噛みついて来ないね、どうしたんだろ」
     その疑問をフィルスが言葉にしますがミトンは答えずに、
    「なんで……よりによってメイド服なんだよ……なんで……」
     ぼやきながら歯をギリギリと鳴らしています。表情には「屈辱」の二文字しかありません。
     テンション下落中の彼女とは違い、ソレイユはこれ以上にない上機嫌。
    「だって一度でいいからやってみたかったんだもん。双子コーデ」
    「ならメイド服じゃなくてもいいじゃねーか! お前知ってるだろ! 知ってるだろうが!」
    「これがよかったんだもんっ」
    「チクショー!!」
     「なんでもやる」と言って要求を受け入れてしまった自分に責任があるのは馬鹿でも分かってしまう悲しい事実。力があってもどうすることもできない現実に直面した彼女はその場で崩れ落ちてしまい、床を殴るしかできなくなってしまいました。無力。
     その姿がちょっとだけ可哀想に見えてしまったフィルスはコタロウに訪ねます。
    「拒絶反応がすごいね、何があったの?」
    「父さんが無類のメイド好きなんだよ。それで俺たちが被害を被ったこととかはないんだけど、父さんのことが大嫌いな姉さんからすれば父親の性癖に基づいた衣装は見るのも着るのも嫌って言うな」
    「なるほど」
     納得したのは姫華でした。そしてコーヒーを飲み干します。
    「……心底嫌いな奴が屈辱を味わっている最中を眺めながら飲むコーヒーは格段に美味いな。クセになりそうだ」
    「後で覚えてろよテメェ!!」
    「どうせお前の方が先に忘れるだろ」
    「ギー!!」
     語彙力が無いため反論する言葉が無くなった途端に鳴き声が出るのです。野生児なので。
    「そういう事情があるなら嫌がるのも納得だよねえ」
    「ソレイユのために嫌いなメイド服に袖を通した姉さんを讃えよう」
     ここぞとばかりにフィルスはスマホ、コタロウはカメラ付きのタブレットで屈辱にまみれたミトンを撮影。コタロウに至っては連写機能を駆使していますね。
    「撮るんじゃねえよ!!」
     崩れ落ちたままの絶叫。取り上げに行かないのはメイド服で暴れたくないから。
    「フィルスさんいっぱい撮っておいてね、後でまとめておくから」
    「自撮りとかしないのかい?」
    「部屋でめちゃくちゃやった」
     得意げに言ったソレイユは自分のスマホを取り出してカメラで撮影した写真をスライドして次々に見せてくれました。どれもこれもミトンの表情が死んでいますが。
    「こんなこと聞くのは野暮かもしれないけど、恋人が死んだ魚みたいな目をしているツーショットを撮りまくって君は満足なの?」
    「ミトンちゃんが大人しくメイド服を着ていることが奇跡に等しいから表情とか贅沢なことは言ってられないんだよ」
    「そっかあ」
     これが二人の愛の形であるなら追求してはいけません。愛情については人並みに理解があるはずのフィルス、ここで納得しておくことにして、
    「でも俺が撮った物でいいの? コタロウじゃなくて?」
    「いいよ。コタローちゃんはオカズ用の写真しか残さないし」
    「っ!?」
     白昼堂々大変な台詞が出ました。この話の流れでたどり着くとは思えない到達点。
     えげつない話題の爆心地にいるコタロウはタブレットの連写を止めて、
    「さすがソレイユ、よくわかってるじゃん」
     なんて笑顔。
    「私がコタローちゃんなら同じことするもん。そうじゃなくてもコタローちゃんならやるもん、信じてるもん」
    「俺についての解釈力が高くて大変よろしい。ご褒美に厳選した写真を送ってしんぜよう」
    「やったね」
     現恋人と実の姉にガチ目の気持ちを抱く青年の間に芽生えている友情なのか信頼なのか……表現するには少し難しい関係の二人は今日も互いをリスペクトしているのでした。
    「……」
     フィルス、一般的な感覚は普通の天使と変わらないので当たり前のように引いてます。
     この二人の信頼関係は知っていましたが、あまり表沙汰にしてはいけない話題を堂々とする下品さもありますし何より本人が近くにいると分かった上での発言が特に理解不能。
    「おかず……?」
     会話の真意がわからず首を傾げている姫華は置いておくことにします。まだ純粋でいて欲しい天使心。
     崩れ落ちたまま一行に動こうとしないミトンに、フィルスはそっと声をかけます。
    「ミトン、姉として、恋人としてそれはいいの……?」
     と、いつになく真剣な声色で。
    「……どうでもいい……好きにしろ……それどころじゃねえんだこっちは……」
    「えぇ……」
     目前の下品よりも現状のメイドの方が彼女にとってはダメージが大きいのでしょう。引くばかりのフィルスは次にかける言葉が出て来なくなったのでした。
    「あっ! この写真いいね! コタローちゃん後で送って〜」
    「じゃあさっきの自撮り写真も送れよソレイユ」
    「おっけー!」
     意気消沈している彼女をそっちのけに盛り上がる恋のライバル(?)なのでした。
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    ナナ氏

    DONE【世界樹X】付き合ったばかりのクレナイとカヤが夜にトラブルに見舞われるお話
    (花ショー×ショタパラ(女性設定)の百合)
    ※直接的な表現はないけど背後注意、強姦を思わせる描写あり
    秘めた想いの攻防戦 カヤとクレナイが交際を始めてから一週間が経ちました。
     若い二人の初々しい交際……やりたいことやしてみたいことが溢れ出てくるような毎日、過去の悲しい記憶を塗り替えるような楽しい日々。
     その中で、思うことがありまして。

    「クレナイさんのことだから、そろそろ性行為がどうとか言ってくるんだろうな……交際前は怪しいぐらい何もしてこなかったというか意外なほど誠実だったけど、そういう話題は好きそうな感じだったからいつ誘ってきてもおかしくない……もう私から誘った方が……? いや、こっちがガツガツしてそうで嫌だなあ……」

     そう考えるカヤ。

    「カヤちゃんと……したい……! しかし、カヤちゃんは性的交渉にトラウマを持っている子。本当なら今すぐにでも押し倒したいものですがご法度、迂闊に事に及んでしまってはフラッシュバック等を発症してしまう恐れがありますわ。事は慎重に進めなければなりません。カヤちゃんから誘ってくれれば話は早いものですが…」
    18189

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