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    悪魔🟥🟥×聖職者(?)🟩🟩。承。

    #マリルイ
    marijuana

    迷える羊関わりたくない。
    「でも関わらないと命がない」
    「世の中とはどうもこうして世知辛いものなのだ」
    地獄の魔王様直々の命により、あのデタラメ聖職者二人を堕落させる事となった悪魔二人は嘆く。しかしてそんな事をしていても時間の無駄なだけで。
    「てな訳で、僕らの手を取ってくれないか?」
    あの町に戻った悪魔二人は人間に擬態する事もなく、片膝を付いて聖職者二人にそれぞれ手を差し出していた。それに神父ルイージと修道士エルはぱちくりと瞬き。
    「…………まさか悪魔から正々堂々と堕落のお誘いをされる日が来るなんて、思ってもみなかったなぁ」
    「それも白昼堂々となぁ」
    「ボクらもまさか正々堂々とこんな事する日が来るなんて発想すらなかったさ」
    「だよねぇ」
    ルイージは目の前の男達に生える黒い翼と鋭い角と尻尾をしげしげと見つめる。
    「え〜と、僕らはこれでも、聖職者なんだけど?」
    「わかってる。わかってるさ。けど君達は色々と…………ほんっっとうに色々とイレギュラー過ぎて、どんな繊密な作戦を何個も何個も立てようと三日間寝ずに試行錯誤して考えたけど、全て無駄に終わるイメージしかないんだよ!」
    「う、うん?」
    「ならばいっそ真正面から突破してみようという結論に至ってな!」
    「はぁあ?」
    汗を垂らして力説するマリオとドクターにルイージは若干身を引いて頷いており、エルは腰に回した手を浮かせたままに首を捻っていた。
    「黒衣を着たあんた、賢そうなのは格好だけか?」
    「時には思考を放棄する事もまた有効打になり得る事もあるので試す価値は一理ある」
    「けっ、屁理屈ゴネやがって」
    ドクターの言葉にエルは唾を吐く。ルイージはんん、と一つ咳払い。
    「…………悪いけど、流石にその手は受け取れないよ。僕はこれでも神父だからね。神様は裏切れないな」
    「俺も。一応修道士だし。パス」
    「信仰心なんてないのに?」
    先程までの慌ただしい表情と声から一転、突き刺すようなマリオの一言にルイージとエルはぴくりと固まる。
    「…………自分で言うのも何だし、こんな姿を見せた後で言うのも恥ずかしいんだけど、僕らはエリート悪魔として活動しててね。君から受けた法術を少し解析させてもらったよ」
    マリオの青い目が揺らぐ。
    「その結果、術を構成する大部分が君自身の法力だけで作り上げられていた。信仰心による『奇跡の力』など殆ど、いや、まるで無いに等しい量しか含まれていなかったよ」
    青い虹彩の中央で黒い瞳孔が縦に細くなる。
    「基本的に法術ってのは深い信仰心により神から僅かに与えられる奇跡の力を、自身の長年の修行で鍛え得た法力で自身の思うように操って発動させる仕組み。だから神に頼らず自身の力のみで法術を扱うだなんて本当は不可能は筈なんだ…………なのに何でそんな力技が君には出来るのかわからないけど、今回の問題はそこじゃないんだよなぁ」
    に、と犬歯を剥き出して悪魔は笑った。
    「皆に神の教えを説く聖職者が神を信じていないなんてバレたら、どうなると思う?」
    「……………………」
    「ッ調子こくなよクソ悪魔!」
    マリオの脅迫にルイージは無言。その代わりというようにエルは憤慨し、宙に浮いていた右手は銃のグリップを握った。
    「この町は男手が少ない」
    瞬間、ドクターが口を開く。
    「みな妻子を残して大きな町に出稼ぎに行っているのだろうな。その間は君が率先して町の安全を守っているから、信頼されているから、堂々と銃を見せびらかして町中を歩いても誰一人怯えない。良い人間関係が築けている証拠だ」
    淡々と冷えた声を発する。
    「だからこそ『ボクまたはボクのバディを撃ち殺した瞬間、町の住民は各々の最愛の人間を君に撃ち殺されたと認識してしまったら』どうなるか、試してみたいのならばその銃を抜くがいい」
    「…………!!」
    ドクターの脅迫にエルは黙り込む。その代わりにルイージが口を開いた。
    「そう認識するように、町の皆に暗示をかけたんだね」
    その顔は少々怒っていた。
    「何が万策尽きたから正々堂々だよ。嘘つき」
    「嘘は悪魔の専売特許なんでね」
    「尽きた万策の中から使えそうなものを纏めて新しい策を考案しただけの事」
    「Fuck!!!!」

    こうして聖職者二人がこちらの手を取るまで町に居座れるように仕組んだ悪魔二人は人間に擬態し、『新しい町民』として迎え入れられた。町民達は貴重な男手に喜び、悪魔二人も快く頼み事を申し出を受け入れてくれるものだからマリオとドクターは早々に町の輪に溶け込んでいた。
    「…………しかして暇だぁ〜…………」
    「右に同じく」
    溶け込んだものの、平和で呑気な町の暮らしはエリートとして様々な仕事や戦いに参戦してきた悪魔二人にとって、あまりに刺激の足らない生活だった。
    「あの二人について何か新情報あるドクター」
    「無い。二人共に孤児院育ち、才能を見込まれて教会に引き取られ、その後はお決まりの聖職者育成コース人生。それだけだ」
    「だぁ…………」
    ぐったりと項垂れるマリオ。あれだけ聖職者として破天荒な二人なのにその生活ぶりはまともで大人しく、ルイージは神父として町の人々に心の平穏を届け、エルは町の暮らしを少しでも向上させる為に資金繰りに勤しみ任務に出る。それの繰り返しだけだった。
    「二人共、昼は畑仕事のお手伝いしてくれてありがとう」
    与えられた家のテラスで二人してぼ〜っと座っていると、渦中の一人が飲み物を持ってやってきた。
    「はい。今朝とれたばかりのミルク。美味しいよ」
    ニコニコと笑って瓶を差し出してくるルイージ。それに悪魔二人は顔を見合わせて、それからそっと瓶を受け取る。
    「悪魔に感謝して報酬まで渡す神父など前代未聞だよ」
    「え?じゃあ僕って今凄い事しちゃったんだ!」
    ドクターの呆れた声にルイージは髭をふにふにと揺らして笑う。それにドクターは溜息を吐いて瓶の蓋を開け始めた。それを見たルイージの目は今度はマリオに向く。
    「どう?僕は堕とせそう?」
    「どうだが…………今は何もとっかかりがなくて」
    大袈裟に肩を竦めるマリオ。それにまたルイージは髭を揺らした。
    「君達が僕らを堕落させようと粘れば粘る程、君達はここに縛り付けられる。そうすれば自然と悪魔の被害を食い止められる。…………この作戦、あんまり良くなかったんじゃない?」
    「っ」
    べっ、と舌を出してマリオをからかって、ルイージはくすくす笑いながら去っていく。それを今のマリオには見送る事しか出来なかった。

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