嘘と魔法(A〼)「クダリ、実はわたくし、クダリに秘密にしていたことがあるのです」
隣で、一緒に事務仕事に取り組んでいたはずの兄さんは、いつの間にかペンをデスクの上に転がして、いたずらっぽい笑みで僕を見ていた。
思わずキーボードを叩く手を止め、兄さんの方を見る。兄さんは、にこにこと僕を見つめており、完全に僕の反応を楽しんでいた。
僕はチラリと時計を見て、そしてデスクトップの右端に表示された日付を確認した。
四月一日。十一時四十五分。なるほど、今日はエイプリルフールか。
午前中ならば一回、悪意のない嘘をついても許される日。午後になったら種明かしをして、嘘を笑い飛ばしてやろうという日。つまり、兄さんは今から、僕に何か嘘をつこうとしているのだ。
2010