成長と痛み あの頃、夜になると足がよく痛んだ。
グレミオに話すととても慌ててあちこち調べられたが怪我をしたわけではないようで「大きくなられましたね」と少し涙ぐみながら微笑まれた。
そんな痛みもあの日を境になくなった。テッドから紋章を受け取ったあの日から。
あの日を境に僕の成長は止まった。
髪や爪だって伸びるし、日々の姿なんて前から1日で大きく変わるものではなかったので最初違和感なんてなかった。ても衣食を共にする仲間の姿が少し変わったなと気づいた時、あの時からずっと変わらない僕の姿はとても異質なものに思えた。
その日を境に僕は鏡を見なくなった。
シークの谷、クリスタルに囲まれた神秘的な谷間。そこでしばらくぶりに会った彼は記憶の中の彼とは違う人に見えた。
「ずるいよテッド……」
力なく横たわる手を掴む
「もうすぐテッドを抜くところだったんだよ?なんで大きくなってるんだよ……」
「ははっ、わりぃ……」
久しぶりに見た友。あの時より背が伸びて少し大人になった僕の親友。
「もうずっと……追い越せないじゃないか……」
「俺を追い越そうなんて甘いんだよ」
そう言ってニヤリと笑う。姿は違うのに笑顔はあの頃と変わらない。
言いたいことがたくさんあったはずなのに、聞きたいこともたくさんあったはずなのに、何一つとして浮かばない。ただただ少しずつ力を失っていく手を握りしめる。
「あとは頼んだぞ、親友……俺のただ一人の友……」
「いやだよテッド!!僕は……僕はまだ!!!!」
テッドはにこりと笑って僕の手を握り返す。その手からスッと力が抜けた。
その後のことはあまり覚えていない。ソウルイーターに取り込まれたテッドは姿を消した。僕の中のテッドはもう姿を変えることがない。それでも僕は彼を抜くことができない。どれだけ時を重ねても。
そして僕は夢を見る。僕より少しだけ背が高い彼とたわいない話をして笑い合う夢を。