小さくも、愛は。 夕闇に染まりゆく黄昏時のとある日。小高い丘の上で菜の花畑を見つめる審神者の姿があった。時折吹くやわらかな夏の風が花弁をさらうと夕焼け空の向こうへ飛ばしていく。その様を審神者は、夕焼けの光に目を細めながら眺めていた。
「主」
「あら、こんばんは、清麿」
審神者の背に呼び掛けたのは、江戸三作が一振、源清麿だった。審神者の霊力に似た淡い藤色のかの刀は、審神者に近づくと「こんばんは、結構探したんだよ?」と微笑んだ。
「あらあら、ごめんなさい。何時もは書き置きするのだけど忘れていたわ」
「ふふっ、折角の休暇だからね。浮き足立つのもしょうがないよ」
とある本丸に影響を受けてかこの本丸も数日間の夏休みという休暇を設けていた。都サーバに繰り出して買い物を楽しむものもいれば、趣味に没頭するものや修行に励むものもいて個々に休暇を楽しんでいるようだった。
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