これから 花束をもらうのは実に久しぶりのことだ。
フィルムに包まれたミニバラやガーベラはピンクやオレンジの明るい色合いで、自分が持つには少々可愛らしすぎる気もしたが、影山さんの印象で選びました、と言われてしまえば面映くも悪い気はしなかった。
花が痛まないように胸元に抱えて、もう片手に持った鞄と紙袋を持ち直す。
これからも、何なら明日も通るだろう、駅から家に至る道の夕暮れの風景が、目に明るく鮮明に映るのは僕の心持ちに他ならない。
角を曲がって、自宅の灯りがついているのを見つける。そこを目指していく一歩一歩が大切なものに思えて、ゆっくり歩いた。
「ただいま」
「おかえり」
鍵を開ける音で気づいたのか、玄関をくぐるとすぐに師匠が出迎えてくれる。
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