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    うたかた君(泡沫星夜)

    @5ugcjgvhhcu

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    3話&4話掲載しておきます!番外編、ヨウジの過去はPixivへ…(重い話なので…)

    #電波人間のRPG
    radioFrequencyManRpg
    #擬人化
    Humanization
    #電波人間
    radioPerson

    電波人間の擬人化シリーズ 3話&4話3話 クレープと彼の正体


    「おはよぉ、ケイタ君」
    「おはようございます、ソラさん」
    時は経ち、桜の花もそろそろ散ってくる頃。少しづつだけど、僕らは高校生の生活に慣れてきた。
    「はよ〜」
    「おはようございます‼︎」
    「あ、おはよう2人とも」
    「おはようございます」
    「ケイタさんもソラさんも早いですねぇ」
    僕は、いっつも教室に着くのは2番目。(何故か、どんなに早い時間に行っても、ケイタ君が1番に居るため、ケイタ君を抜かすことができないからだ。)
    ちょっとすると、少し遅れてガトー君とヨウジがやってくる。ガトー君はクラスが違うから、教室の廊下側の窓から顔を出して挨拶をしてる。
    「A組は今日の授業ってなんですか?」
    「えーっと、1時間目が…す、数学です」
    「わぁ…C組は今日数学無いんですよねぇ」
    「うっわうらやま!俺マジで数学嫌いなんだよなぁ…」
    「僕も…」
    「あらら…それはドンマイです」
    そんな他愛のない話を暫くして、一区切りつくと、また後で、って言ってガトー君が自分のクラスに向かう。また後でね〜と見送って、僕たちも自分の席に着いて、各々が自由に行動する。
    僕とケイタ君はお隣の席同士ということもあり、よく話すようになっていた。
    「あれ⁉︎僕数学の用意忘れてきちゃった!ケイタ君見せてくれない?」
    「ええ、良いですよ。ノートとか、ワークとかは大丈夫ですか?」
    「うん!ノートは別の教科のやつ使う!ありがとねぇ、ケイタ君!」
    「い、いえいえ!私も何か忘れ物することってありますし、持ちつ持たれつですよ!」
    「そっかぁ、でもありがとうね!」
    「うふふ、どういたしまして!」
    クラスの人達とも馴染めて、何だか夢みたいだ。中学生の時の自分からは想像もつかない。
    「あ、先生が来たみたいですね」
    「おはようさん。みんな席につけ〜、朝のホームルーム始めるぞー」
    先生の言葉で、僕たちはお話をやめて、話を聞く姿勢を整えた。



    「や、やばい…」
    「おー?ソラ、どうした?」
    「す、数学が本当に分かんない…」
    「あらら、それはそれは…」
    「ケイタ君教えて‼︎」
    「えぇ、仕方ないなぁ、じゃあ放課後で良いなら教えられますけど…」
    「やったー!」
    「うわぁ、お前ら勉強熱心だこと。俺はパス〜」
    「はいはい。でも、ヨウジさんも勉強しておいたほうがいいですよ」
    「へぇへぇ、わかってるって」
    「どうだかねぇ…」
    ただ、休み時間に友達と話す。ほんとにそれだけなのに、学校が楽しくなった。最近じゃ授業も集中できるし、なんだか不思議。
    「あ、ケイタ、お前昨日メール未読無視したろ」
    「え、気付きませんでした。夜は電源を切ってるので…」
    「えぇ〜…いっつも徹夜してる癖にいつ電源切ってんだよ…」
    「あ、私ソラさんとLI○E交換したいです!アプリ入ってます?」
    「おい無視すんな」
    「も、持ってるよ!でも良いの?メルアド交換しちゃって」
    「あら、ソラさんのお家ってご両親に許可取らないとダメな感じですか?」
    「ううん、そういうわけじゃないんだけど…ケイタ君のお家は?」
    「あぁ…ご心配なさらず」
    「そっか!なら交換しよ〜!」
    「おい俺を空気にすんな!つか俺もソラとLI○Eしたい」
    「いいよ〜!はいこれ!」
    そういって画面を差し出す。あとは画面の指示に従って…これで良し。
    「ありがとな!」
    「ありがとうございます」
    「僕の方こそありがとうね!」
    やった!2人と、もっと仲良く慣れた感じするなぁ…あ、後でガトー君にも聞いてみよう。
    「うふふ、LI○E交換なんてなかなかしないから、新鮮です」
    「えぇ〜、そうか?」
    「ヨウジ陽キャだし…」
    「それほどでもある」
    「あるんかい!」
    みんなであはは、って笑ってたら、他の子たちも寄ってきて、その後は授業が始まるまでLI○E交換大会になった。これからよろしくね、って言ってくれた子もいっぱいいて、心がじんわり温かくなった。学校って、悪いところじゃ無いんだなぁ。ちなみに、ヨウジから、今日は一日中にやけてた、って後から聞いた。




    「それで、ここに代入をして…」
    「あ〜!そういうことかぁ!」
    「分かりましたか?」
    「うん!もうバッチリ!ケイタ先生のおかげだよぉ〜!」
    「褒めても何にも出ませんけどね。さ、後は確認問題だけですよ。今のソラさんなら難なく解けるレベルなので、今終わらせちゃいましょう」
    「はーい!」
    放課後、僕とケイタ君は2人、教室に残って勉強会をしていた。勉強会っていっても、僕が教えてもらってるだけなんだけど。今は、ケイタ君が作ってくれた確認問題を解いてる真っ最中。
    「なんかごめんね…僕ケイタ君に教えられること何にも無いや…」
    「ん〜…そんな事ないですよ。人に教えるのも勉強になりますし…って、ほら、早く終わらせちゃって下さいよ」
    「うん」
    かりかりと、シャーペンが紙をなぞる音と、お互いの呼吸音しか聞こえない。放課後の教室って、本当に静かだなぁ。よし、終わった。ふと、ケイタ君の方を見ると、スマートフォンで音楽を聴いていた。目を伏せて、頬杖をついていたので、僕の視線には気付いてないみたい。僕の方が身長も高いから、その分目線の高さも違うし。若干日に焼けた、健康的な肌色。ほっぺがちょっぴり色付いている。目はいっつもきりっとしてるけど、今は目を伏せているからか、ちょっと優しい目になっていた。鼻もすらっと高くて、外国の人みたい。入学式のときにも思ったけど改めて、美人さんだなぁ、と思った。
    「…ソラさん、そんなに見つめられると、照れちゃうんですけど」
    「え?あぁ、ごめん!はい、解き終わったよ!」
    「じゃ、採点しちゃいますね…………あ、すごい、満点じゃないですか!」
    ケイタ君が微笑む。
    「えへへ、ケイタ君のおかげだよ!」
    「私も良い復習になりました。ありがとうございました」
    じゃあ帰ろうか、と僕たちは支度を始めた。
    「あ!勉強教えてもらったし、お礼になんかご馳走したいな」
    「え、いいんですか?」
    「うん!ケイタ君、確か甘いもの好きだったよね。クレープとかどう?この前おいしそうなクレープのお店駅の中で見かけたんだよぉ〜!」
    「ちょ、それソラさんが食べたいだけじゃないんですか〜?」
    「違うもん!…まぁ、ちょっとはそう思ったりしなくもなかったり…」
    「まぁ、ご馳走していただけるというのであれば、断る理由はないんですけどね」
    「よかった〜!じゃ、行こっか!」
    「はい!」
    僕たちは軽い足取りで駅へと向かった。




    「おいし〜!」
    ちょっと並んだけど、買えてよかった。無事クレープを買えた僕らは、駅から出て直ぐの公園のベンチに座っていた。僕はチョコメロンで、ケイタ君は苺アイスのクレープ。どれもおいしそうだったから、大分迷ってしまった。
    「どお?ケイタ君おいしい?」
    そう聞くと、ケイタ君は一瞬だけ固まってから
    「…はい!美味しいです!」
    と答えた。
    「…?ケイタ君どうかした?」
    「いや、びっくりしたんです。私、ちっちゃい頃にクレープ食べたことが一回あるんですけど、そのときはただ生クリームが乗っかった甘ったるいだけのものだったのに…このクレープは苺アイスがとってもさっぱりしてるんですけど、中に入ってる練乳のソースが甘いので、バランスがとっても良くて美味しいなって…」
    「ケイタ君食レポ上手〜!」
    「えへへ…そうですかね…?」
    楽しんでくれてるみたいで、良かった。ケイタ君は今みたいに固まっちゃうことがよくあるから、その度にどうしたんだろうって心配になっちゃうんだけど、今日は大丈夫だったみたい。
    「というかソラさん、よかったんですか?お夕飯の前なのにクレープ食べて」
    「だいじょーぶ!僕ご飯いっぱい食べれるから!」
    「んふふ、元気いっぱいですね」
    クレープを食べ終わった後も、なんとなくお喋りをしていた。
    「ケイタ君、なんでここの学校にしたの?ケイタ君の頭の良さならもっと高校あったと思うんだけど…ほら、立波高とか、電葉高とか…」
    「…あなたに会いに来た、って言ったら?」
    「え?だって僕たち高校生で初めましてだったのに…僕もしかしてケイタ君に会ったことあるの?」
    「いいえ、もしもの話ですよ?」
    「そっかぁ…そうだよね〜。で、ほんとうは?」
    「えぇ、今の逃れられた雰囲気だったんじゃ…!?」
    「逃がさないぞ〜!」
    「え、あ、じゃあ…内緒です!」
    「ふぇぇ!?まぁしょうがないかぁ〜」
    「あら素直」
    その後も、取り留めなく会話をしていたが、空が暗くなってきたことに気がついたケイタ君が、そろそろ帰りましょうか、と言ったので、その場はお開きとなった。
    「僕、今日はすっごく楽しかったよ!」
    「私もですよ、ソラさん」
    「そっかぁ、良かった!」
    また明日、そう言って別々の道へと歩き出す。2、3歩歩いてから、急にケイタ君の方が気になって、後ろを振り返った。すると、もうそこにケイタ君の姿は無く、ただ、四月の暖かい風に木々が揺らめくばかりだった。













    今日は、楽しかった。
    私は、友達と遊ぶということをしたことが無かったのでどんなものかと思っていたが、思った以上に楽しかった。それに、ソラさん、私が甘いものが好きって、覚えていてくれてたんだ。
    この前、学食を食べに行ったときにした、他愛ない会話。
    「あ、今日のデザートプリンなんですね」
    「そうだねぇ、ケイタ君甘いもの好き?」
    「はい、好きですよ」
    たったこれだけの会話。それだけなのに、覚えていてくれたことが嬉しかった。そもそも、何故私はこんな他愛ない会話を覚えているのか。確かに、人と話すのは好きだし、友達のことも覚えている方ではあるが。ソラさんに対するそれは、少し違う気がした。なんでだろう。私には、わからないことがたくさんある。
    …ただ、彼が私のことを覚えていなかったのは、少し残念だった。
    そりゃそうだ。道端で倒れてた人の顔なんて、覚えていられるはずがない、というかそれどころでは無かったと思う。私は、中学の下校時に、一回貧血で倒れてしまったことがあった。頭がぐるぐるして、とても怖かったのを覚えている。目の前が砂嵐のようにざらざらして、気持ち悪かった。このまま死んじゃうのかな、そう思ったとき、「大丈夫ですか!?」と声をかけてくれた人がいた。その後は、その人に言われるがままに救急車に乗って、病院へと向かった。ぼんやりとだが、その人の髪が青かったのを覚えている。今度会えたらお礼がしたいなぁ。そう思っていたが、再会は叶わず、結局諦めていたのだ。だが、まさか惰性で選んだ高校の屋上で再会するとは思いもしなかった。あのときみたいな顔では無く、随分冷たい表情をしていたけれど。声は、あの時とほぼ同じ、少しふわふわとしたような声だった。
    …気がつけば、玄関に着いていた。
    あぁ、嫌だな。どうせ今日も誰もいない。幼少期の記憶が曖昧なのであまり覚えてはいないが、母は、私は生まれてすぐに家を出ていったらしい。父は、七歳の時に。父は有名な企業の社長だかなんだかだったので、じいやが私と共に居てくれていたが、そのじいやも十歳のときに父からの命令で家から出ていってしまった。
    侘しい。
    家に居るとなんとも惨めで堪らなくなるのだ。
    そう思うと、やはり居ても立っても居られなくなってしまった。
    玄関のドアを突き破らんとする勢いで家に入った。そして、身支度を整え、再び外に出た。
    「ケーイタ!」
    「ヨ、ヨウジさん…それにガトーさんまで…」
    家の庭には、私と同じようにスーツを身に纏った友達が立っていた。違う点は、私は日本刀を腰に下げているが、ガトーさんはサイホルスターを身に付けているところや、ヨウジさんはメリケンサックを持っているところである。
    「ケイタさん聞きましたよ?この間、たった1人でヤクザんとこ乗り込んで皆殺ししたんですって?」
    「そ、それは…」
    「とぼけても無駄だぜ。なんせお前の部下が目撃してっかんな」
    「う、うぅ…」
    「どうせ今だって、家に居たくなくて飛び出そうとしてたんでしょう?」
    「んでまたどっかの暴力団とこ乗り込んで憂さ晴らししようとしてたろ?」
    「うぐ…と、というか!貴方たちなんでうちに居るんですか!」
    「あぁ?お前がまたどっかいってなんかやらかさないように迎えに来たんだよ!」
    「そうですよ。ケイタさん、あなたのような人が単独で行動するというのも少し体裁が良くないものでして…ご了承くださいね」
    「は、はぁ…」
    「さ、いこうぜ」
    「ええ、行きましょう」
    そうして私たち3人はガトーさんが手配した車に乗り込んだ。

    「お前最近おかしくねーか?ふらっとどっか行ってみたり、急に血濡れで帰ってきたり」
    「そうですね…私も心配なんですよ。ケイタさん、1人で抱え込みがちだから」
    「え、えぇと…ちょっといろいろあって…」
    「お?なんだそのいろいろってのは」
    「す、好きな人でもできました!?」
    「ちょっと、そんなんじゃないですから。ただ高校生活慣れないな〜ってだけですから」
    「え〜、本当にそれだけですか?」
    「ほ、本当に!心配しないでください」
    「ま、そーゆーことにしといてやるけどさ…なんかあったら言えよな」
    「はい、ありがとうございます…」
    「あ、そろそろ着きますよ」
    「おー」
    キキッと車が停まる。車を降りると、そこには人の列があった。
    その人たちは私の姿を見るなり、ザッと頭を下げた。
    「ちょっと…なんですか、コレ」
    「なんだもなにもヤクザの定番だろ。一回やってみたかったんだよ」
    「やってみたかった、で人の部下使うのやめてくださいます?そもそもヤクザじゃないんですけど」
    「さーせん」
    頭を上げてください!とガトーと2人で説得する。すると人の列は少しずつ散らばっていった。
    「ごめんごめん。まぁ、しっかりしろよ、ボス。お前最近気ィ抜けてそうだったしよ」
    「そうですね。それには私も同感です、ケイタさん。ここらで気合い入れていきましょう」
    「そう、ですね…以後、気をつけます」
    おし、じゃあ仕事するか、とヨウジさんを皮切りに私達もビルへと歩いていく。
    ここのビルこそ私の居場所であり、家みたいなところだ。
    バシッと、ほおを叩く。よし、と気合いを入れて、再び歩き出した。

    私は、守屋警夛。昼は普通の高校生。夜はマフィアのボスである。






    4話 苦い思い出も、いつかは。






    時が経つのは早いもので、気がつけばもう1学期も終わりそうな頃となっていた。
    「あち〜!」
    「そうですね…今って7月ですよね…?」
    「あはは…今年は酷暑になるってお天気キャスターさんが言ってたよ…」
    「え〜!?俺ぜってぇ嫌なんだけど!」
    「天気に文句言っても仕方がないでしょう…?」
    「で、でもよ…お前らだって暑そうだろうが!?」
    「叫ばないでください、暑苦しい。貴方があんまりにも暑苦しいせいで今地球温暖化が進みました」
    「俺そんな地球に影響及ぼす…?」
    こんな風に軽口を叩きながら放課後の教室で駄弁るのも、恒例行事となっていた。
    「あ、ガトー君来たよ」
    「うっわ…皆さん揃いも揃ってだらしない…」
    「開口一番悪口かよ!」
    「いやいや、机に突っ伏してだらけてるのみたらそりゃ言いたくもなるでしょう…?」
    「が、ガトーさん暑く無いのですか…?」
    「全然。ま、寒いのは嫌いですけれど」
    「よし、俺は決めたぞ。冬になってお前が凍えてたらぜってぇ馬鹿にしてやる。許さん!」
    「あはは、冬が楽しみだねぇ」
    「いやいや、冬なんて来なければいいですよ」
    「ガトーさんが冬アンチすぎる…」
    みんなで放課後におしゃべりするのは、とても楽しい。だが、気温には抗えないもので…
    「ぼ、ぼく、暑いしもう帰ろっかなぁ…」
    「んぇ!?ソラさん帰っちゃうんですか!?」
    「だって教室あっついんだもん!気温計見てよ!35℃だよ!?」
    まだ一緒にいましょーよー、なんて駄々をこねるケイタ君を横目に、帰り支度を始める。そんな僕らを見かねてか、ヨウジが言った。
    「あ〜しゃあね〜な〜…そんなに言うなら俺ん家来るか?」
    「え!?いいの!?」
    「い、いいんですか…?」
    「わぁ、ヨウジさんのお家行ってみたいです!」
    僕とガトー君は身を乗り出す反面、ケイタ君はちょっと心配そうな顔をしていた。
    「ケイタ君どうしたの?」
    「え?い、いや…ヨウジさんのお家の人に、迷惑かかりません…?」
    「いんや、今母ちゃんは仕事、育匡いくまさと源太郎げんたろうと克仁かつひとは学校、通仁みちひとと忠勝ただかつと廻威みいと和秀かずひでは保育園だから家には誰もいないし…大丈夫だろ!」
    「し、知らない間に兄弟が増えてるんですけど…」
    「あ?言ってなかったっけっか?この前、和秀が産まれたぜ!」
    「おめでとう…!」
    「ありがとよ!じゃ、行くかぁ!」
    「はい、行きましょう!」
    「れっつごー!」
    「お、お邪魔しま〜す…」
    満場一致(?)でヨウジの誘いに賛成した僕らは、荷物をまとめて、ヨウジの家へと向かった。





    電車から降りて少し歩いたところで、ヨウジがコンビニに寄りたいと言ったので、みんなで寄ることにした。
    「コンビニ涼しーい」
    「生き返るぜ…」
    「はわぁ…」
    「流石に外は暑いですよね…」
    各々お菓子やジュースを買ってみんなで食べようということになったので、僕は飲み物を買うことにした。売り場は思ったより広くて、何にしようか迷ってしまう。
    「う〜ん…コーラとかみんな好きかな…でも今日暑いしサイダーの方がさっぱりしてていいかな…」
    しゃがみ込んで熟考していると、自動ドアがピーンポーンと音を鳴らしながら開いた。最初は気にもとめていなかったが、そこから入ってきた影が、だんだんこちらへと近付いていることに気がついた。それこそ、この人も飲み物買いに来たのかな、くらいにしか思っていなかったが、声をかけられたことにより、その予想は打ち砕かれることとなった。
    「あっれれ、隠キャのソラじゃん?こんなところで何してんだよ」
    「うわ、本当だ。ウケる」
    「ちょーひっさしぶりじゃん?元気ィ〜?」
    「…ッ!!」
    ………それは、こっちの台詞だった。なんで?だって、僕、この人たちに会いたくなくて、わざわざ県外の学校を選んだのに。県外の頭良い学校に行けるように、死ぬ気で勉強頑張ったのに。
    「あっれ、反応無いなぁ、あ!そうか!お前頭足りてねぇから反応トロいんだっけっか?」
    「…ぁ…」
    「え?何?聞こえなーい。相変わらずどんくせぇなぁ」
    「…………!」
    「うわ、相変わらずやっぱウザいわ。チンタラしてんなぁ?え?」
    怖くて、顔を上げられなかった。だって、顔を上げたら………!

    「ちょっと、貴方達、う・ち・の・ソラさんに何の用ですか?」

    その凛と澄ました声にハッとして、顔を上げた。ケイタ君だ。ケイタ君が、僕を庇うように、彼らの前に立ち塞がる。それだけで、心臓の脈の狂いが、少し引いた。でも、だめだよ、ケイタ君。その人たち、肩に刺青入れてるような、不良なんだよ?僕、その人にお腹を蹴られて、気絶したことあるんだよ?だめだ、このままじゃケイタ君が…!
    ケイタ君が、殴られちゃう。
    そう思ったのに、足は力なく震えるだけだった。手からはサッと血の気が引いて、持っていたペットボトルを床に落としてしまった。
    「あ?んだテメェ」
    「あら、それはこちらのセリフですよ。なんなんですか?さっきから聞いていればやれ鈍臭いだのウザいだの。ここはみんなが使う場所なんですよ。騒ぐのはよして下さります?あ、それともアレですか?頭が足りないから、そんなことも分からなかったんですか?」
    ケイタ君が微笑みを湛えながら小首を傾げる。その仕草が気に入らなかったのか、彼らはケイタ君に掴みかかろうとする。するとケイタ君は流麗な動きで彼らの手を払いのけると、僕の手を掴んだ。
    「さ、行きましょう」
    「えぇ?」
    「あ…おい待てや!!」
    「…あら、負け犬がなにか吠えてますね。でも私、人間なので畜生の言葉は分からないのです。では」
    「テメェ…!!」
    そう言って、再びケイタ君に掴みかかろうとする。危ない!そう思って咄嗟にケイタ君を庇ったが、覚悟していた衝撃は、いくら経ってもこなかった。
    「…!!」
    「ケイタ、コイツら誰?」
    「本当失礼ですね、ケイタさんをテメェ呼ばわりだなんて。ふざけるのも大概にして頂きたいです」
    ガトー君とヨウジが、不良達を牽制している。ただそこに立っているだけなのに、目だけでびりびりと空気を震わせているかのような感覚がした。
    「あぁ、放っておいて構いません。畜生の鳴き声なんて聞く必要がないでしょう?」
    「お、それもそうだな。じゃあ帰るか」
    「私ポッキーとポテチ買いましたよ!あとサイダーも!」
    「あら、奇遇ですね。私もポッキー買いましたよ」
    「わぁ、ケイタさんとお揃いで買っちゃった!でもどうせ食べきれますもんね〜」
    「んふふ、そうですねぇ。では、行きましょうか」
    「はい!」
    「おう!こっちだぜ〜!」
    「え、あ、ちょ…!」
    「ソラさん、行きましょう!」
    そうして、呆気にとられている彼らの横を過ぎ去り、ケイタ君に手を引かれてコンビニを後にした。






    「ほんっと失礼しちゃいます!アイツらはソラさんの何を知ってるって言うのですか!?」
    「おーおー荒れてんなー」
    「ケイタさん、私途中からしか見てなかったんですけど、何があったんですか?」
    ヨウジの家に着いて早々、ケイタ君が堰を切ったように叫んだ。顔からは怒りが滲み出ていて、こんなケイタ君初めて見た。
    「私お買い物終わってソラさんの方に行こうとしたらアイツらが先に話しかけてたから待ってたんです!そしたらなんかソラさんの様子がおかしかったから近付いてったら、アイツらソラさんの悪口言ってやがったの!めっっっちゃくちゃムカついたからちょっと煽ったらあのザマよ!怒り通り越して呆れてまったわ!あんの馬鹿どもが…!」
    「ケイタ君、お、落ち着いて…!」
    「あ、うぅ…ごめんなさい…でもやっぱりムカつくもんはムカつきます。というか、あの人達とソラさんってどういう関係何ですか?」
    「あ〜それは俺も気になるかも」
    「私もです。ソラさん、無理のない範囲でいいので教えて下さりませんか…?」
    3人の心配そうな目線がこっちに向く。この3人になら話しても良いような、なんだか話さなきゃいけないような気がしてきて、僕はサイダーを一口飲んでから話し始めた。






    僕の通っていた中学校は、巷で噂のヤンキー校だった。特に1組は問題児で固められていて、僕はそのクラスにいた。別に、素行が悪かった訳ではない。ただ、他の子よりも頭が足りていなかったからだ。他の子にできることが、僕にはできない。会話ですら、どもってしまって、上手くできない。そんな僕を見て面白がっていたのが、あの人たちだった。
    「ソラ〜、次の授業なんだっけ〜?」
    「ん、えっと、その、」
    「あっれ、おしゃべりできないのかなぁ?」
    「あ…えっと…」
    「ぎゃはははは!喋り方まるっきり隠キャじゃーん!」
    「「「ぎゃははははははは!!!!!」」」
    「……!!」
    自分でも、分かっていた。僕は、何にもできない。だから、話すために練習をした。自分の部屋だったり、先生とだったり。質問にすぐ答えられるように、どもらないように。それでも、この人達だけは、だめだった。この人達に何か言われると、胃がひゅくひゅくと震えて、どうしようもなくなる。だけれど、答えなくてはいけなかったので、答えようとすると、どもってしまう。そんな地獄の悪循環を繰り返しているうちに、僕はいじめの格好の的となってしまった。

    「ソラ君、今日もお喋りできないのかなぁ?」
    「んっ…!う…」
    「ぎゃははは!きっもちわりぃなぁ!」
    「ぅ……」
    「そんなソラ君のために俺ら準備してきたものがあんだよ。じゃーん」
    そういって見せられたのは、ボロボロになった国語の教科書だった。所々が破れていて、随所に落書きがなされている。
    「…僕の…!」
    「そうだよ?俺らやっさしいからさ、フリガナふっといてあげたの。ほら、こことか読んでみ?『ぼくはかんじもよめないあかちゃんです』ってな!」
    「「「ぎゃははははは!!」」」
    「ほら!読めよ!」
    「「よーめ!よーめ!」」
    「…ッ」
    唇を噛むことさえ許されない。泣くことだって、できない。それが悔しくて堪らなくて、コイツらに一矢報いてやりたくて。でも、足りない僕がそんなことできるはずもなくて。夜な夜な、枕に顔を埋めて泣くことしかできなかった。

    いじめは、日に日にエスカレートしていった。
    「お馬鹿なソラ君は放課後返上でお勉強した方が良いんじゃないの?」
    「そうだねぇ、俺ら優しいからソラ君に特別授業してあげるよ」
    そういって、トイレに顔を突っ込まれたり、気を失うまで殴られたりした。

    「魚食うと頭良くなるらしーよ」
    「ほら、ソラ君のだーいすきな鯖缶あげるよ」
    そういって、僕の大嫌いな魚を口いっぱいに詰め込まれたこともあった。

    「ソラは頭悪りぃからちっと懲らしめてやるよ」
    「ほら、見てみ?これなんだか分かる?」
    そういって、画鋲がいっぱいに敷き詰められた上履きをはかされて、足の裏を血塗れにしたことだって。とにかく、いじめられた。暇さえあれば殴られた。先生に相談しても、先生もあの人達が怖いから、何にもしてくれなかった。








    「それで、それで…」
    「ソラ、もういいよ」
    ハッと目を見開く。すると視界はぼやけていて、自分の手の甲にはいくつもの水滴が付いていた。
    「ごめんなさい、ソラさん。辛いこと、お話しさせてしまいましたね」
    ケイタ君が、僕を抱きしめる。僕よりも、一回り、もしかしたら二回りくらい小さいその体は僕より温かくって、その温もりが一層涙を誘った。
    「ソラ、ごめんな」
    ヨウジが、僕の頭を撫でる。かつて小さい頃に母が撫でてくれたみたいに優しく、大切なものを扱うかのように撫でてくれて、心が温かいもので満たされていくような感じがした。
    「ソラさん、もう大丈夫ですよ。何があっても、私たちがソラさんを守りますから」
    ガトー君が、僕のことを真っ直ぐ見据える。その視線がとても真摯に思えて、頼もしくって、僕は自然と体の強張りが消えていくのを感じた。
    「…ありがとう、みんな。もう大丈夫だよ」
    「ほんとに、大丈夫か?ほら、ティッシュ」
    そういって、ヨウジが箱ティッシュを手渡してくれた。ありがとう、とお礼を言ってから受け取る。いつのまにか体の震えはおさまっていた。
    「それにしても、お前がそんな過去持ってたなんてな…気がつかなかったぜ」
    「私もです…ソラさん、とっても明るいから…」
    「…ソラさん、もしかして入学式のとき屋上にいたのって…」
    ケイタ君が、顔を青ざめさせて言う。何となく、ケイタ君なら分かってるんじゃないかな、なんて思いながら、質問を返してみる。
    「…何でだと、思う?」
    「…自殺、しようとしてたんじゃないですか」
    「!?」
    「おい、ケイタ、それどう言うこと…」
    「…やっぱりね、ケイタ君は分かっちゃったか」
    そう。僕は、あわよくば死ねないかな、なんて思ってた。別に、それが目的で屋上に入ったわけではなかった。最初はただ、教室が怖くって、屋上へ逃げ込んだ。でも、そこでケイタ君と出会って、それで…
    「僕ね、あのときは本当に辛かった。実は、もう、死んじゃおうって思ってた。でもね、ケイタ君が場違いに明るく屋上に入ってきて、僕に話しかけてくれて、また明日ね、って笑ってくれて。その後、本当は死んじゃおう、って思ってた。でも、ケイタ君の『また明日』って笑う声が耳から離れてくれなくて。だから、あの日はあのまま家に帰った。そしたら、ヨウジとガトー君と友達になれて、クラスにも馴染めて、授業もちゃんと受けれるようになって…ケイタ君があの日僕に話しかけてくれて良かった。改めてお礼言ってなかったよね。ケイタ君、ありがとう」
    「………」
    正座をして、深く、深く頭を下げる。精一杯、『ありがとう』と伝えられるように。数秒、数十秒経った。すると、ケイタ君のすすり泣く声が聞こえて、反射的に顔を上げた。視線の先に見えたものは、目を大きく見開き、ぽろぽろと涙を流すケイタ君の姿だった。
    「ケイタ君…」
    「…ソラさん、良かった…!私もね、あのとき屋上に行ったのは学校探検のつもりじゃなくて…ただ、家に帰りたくなくって…そこで、たまたまソラさんを見かけて…上履きの色が黄色だったから一年生かな、って…それに、ソラさんが、私を助けてくれた人にそっくりだったから…」
    「助けた人…?」
    「はい。私、中学生のときに、下校中、貧血で倒れてしまったことがあって…あぁ、死んじゃうのかな、怖いな、って思ってたら、ソラさんみたいな人が、『大丈夫ですか!?』と声をかけてくださって…救急車まで呼んでくれて…」
    「…!あのときの…」
    「や、やっぱりソラさんだったんですか!?」
    驚いて、ケイタ君と顔を見合わせる。そんな僕らをヨウジとガトーが不思議そうな顔をして見ていた。そうだ、中学…2年生かな?のときに、道で倒れてる男の子を見かけて…しどろもどろになりながらも何とか周りの人に助けを求めて救急車を呼んでもらったんだ。倒れていた彼が、白い学ランを着ていて、顔を真っ白にしていたのを思い出す。
    「どうしたんですか…?」
    「何だ?感動の再会でも果たしたか?」
    「大方そんな感じかも…」
    ヨウジとガトー君の質問に答えていると、ケイタ君があっ、あの!と話しかけてきた。
    「ソラさん、あのときは、ありがとうございました!私、ソラさんが声をかけてくれたおかげで、すごく安心したんです。そしたら、体の力が抜けちゃって…お礼、言えてなかったですし…とにかく、ありがとうございました…!」
    深々と頭を下げるケイタ君に、なんだか申し訳ない気持ちになった。
    「ううん!僕の方こそ、ありがとね!」
    そういうと、ケイタ君は顔を上げて、えへへ、と笑った。
    「私たち、前に会ったことがあったんですね」
    「うん、僕びっくりしちゃったぁ」
    2人で再会に驚きながらも喜ぶ。すると、ヨウジとガトー君がおぉ、と声を上げて、
    「わぁ、なんだか素敵ですねぇ…奇跡みたいで…」
    「お〜…なんかよくわからねぇが良かったじゃねぇか!」
    とポッキーを食べながら言ってくれた。
    「あ!ポッキーもう無くなりそうじゃん!」
    「食べない奴がわりーんだ!」
    「ちょっと私の分ないじゃないですか!」
    「あ、ごめんなさい!ケイタさんの分食べちゃったかも!」
    「ひどい…」
    憎まれ口を叩きながらも、笑い合う。今はまだ苦い思い出も、いつかは笑い話にできるかなぁ。もしそうできたら、いいな。ちょっとしたセンチメンタルに浸りながら、僕らは夕日が差し込んでくるまで話に花を咲かせた。




    「じゃあね、また明日」
    「おう!また来いよ〜!」
    「はい、またお邪魔しますね!」
    「また明日〜!」
    別れの挨拶を告げて、各々が帰路につく。
    「あ、ソラさん、私ガトーさんのお家寄ってから帰るので…ここでバイバイです」
    「そっかぁ…じゃあまた明日だね!ガトー君、ケイタ君、また明日!」
    「はい、また明日!」
    「ソラさん明日勉強教えてくださいね!」
    「うん、約束ね!」
    バイバイ、と手を振りながら2人と別れる。最近は、ケイタ君と帰ってたから一人で帰るの、久々。ちょっと寂しいなぁ…と思ったが、すぐに2人の言葉を思い出す。
    『はい、また明日!』
    『明日勉強教えてくださいね!』
    よーし、明日も頑張るぞ!自分の中でやる気が湧き上がってくるのを感じる。帰ったらワークを進めよう。そう思い、帰る足をすこし速めた。














    ヨウジさんの家の前でソラさんと別れ、ガトーさんと一緒に再びヨウジさんの家に戻った。
    「おー、いらっしゃい、つってもさっき別れたばっかだけどな」
    「あはは…お邪魔します」
    「おー」
    私たちは再びヨウジさんのお家に上がらせてもらった。すると開口一番、ガトーさんが言った。
    「ケイタさん、珍しいじゃないですか。あなたが人を引き留めるなんて」
    何の話か分からず、一瞬ぽかんとする。直ぐに、今日の放課後、暑さ故に帰ろうとしていたソラさんを引き留めたときのことだと思い出した。
    「あぁ…それがどうかしました?」
    「いいえ、何も。ただ、珍しいな、と。あなたが涙を流している姿も、初めて見ました」
    「それは俺も同感。ガキの頃でさえ泣かなかったお前がなぁ」
    「…悪いですか?」
    なんだか小馬鹿にされているようで、悔しい。少し不機嫌になって尋ねれば、二人とも微笑みながら首を横に振った。
    「いえ、今まで人形みたい笑ったような姿しか、見たことがありませんでしたので。まぁ、あ・の・よ・う・な・出来事があったことですし、仕方ないといえばそうなのですが…私、高校に上がってからは、初めて見るあなたがいっぱい居るんです。心から笑っているようなケイタさんも、暑がっているケイタさんも、泣いているケイタさんだって。だから、なんだか嬉しいです」
    「そうだな…俺も、なんか安心したよ。俺が親父のこと………なんて言えばいいんだろうな、色々やったとき、一番最初にケイタに電話かけて、お前が出たとき、ちょっと怖かったんだよ。声は小学生んときと変わらねえのに、話し方や態度はまるっきり違ってよ。何だか、人格自体が違うみてぇな…でも安心したぜ。ケイタ、ソラと会ってからはあの頃みたく笑うことも増えたしよ。やっぱお前ソラのこと好きなんか?」
    ヨウジさんが冗談めかして言う。その隣にいるガトーさんが今にも叫び出しそうな勢いでわなわなと肩を震わせていることに気がつき、慌てて訂正をする。ガトーさんの前で色恋の話をすると面倒なのだ。過去に冗談で〇〇さんが好きです、と言ったことがあるのだが、そのときのガトーさんは手の付け所がない位に取り乱していた。挙げ句の果てに、「ケイタさんのことを誑かす人間など始末してくれますよ!!」などと言いだし…とにかく、大変だったのだ。
    「やっぱり、とは何ですか。冗談も程々にして下さいよ…それよりもほら、やるんでしょ?皆さん、ソラさんが話し始めてからずっと気配が鋭かったですし」
    そう返してやると、ヨウジが苦笑いをした。
    「大事なところは話さず仕舞いかよ…でもまぁ、お前の言う通りだがな。ソラのこといじめてたやつら、妙に見覚えあると思ってお前らが雑談してるときに部下に調べさせたんだよ。どうやら、暴力団の下っ端やってるらしいじゃねぇか。これで大義名分もついたことだしよ…」
    いつの間に…と驚いたが、同時に彼の優秀さに感心もした。さすが友達兼、私の優秀なる右腕。
    「じゃあ、〆しめますか!ケイタさん、行きましょ!」
    「ちょっと、まだ制服なんですけど」
    「まぁまぁ。どうせ顔見られたところで、生き延びてる人間なんて居ないんだしよ」
    「そーですよ!武器はありますし、行きましょうよぉ〜」
    前言撤回。やっぱり優秀ではない。制服姿で銃や刀など持っているところを警察や近隣住民などに見られてみろ、彼奴らに制裁を下す前に私たちがお縄につくことになる。私には分かる。いかにも人畜無害そうな、この二人の笑みにドス黒い殺意が渦巻いていると。そして、この状態の二人を野放しに外に出すとろくなことにならないということも…
    「ダメです。せめてスーツには着替えましょう。どうせ居場所は割れているのでしょう?」
    「おう、部下たちに後をつけさせてる」
    「なら良いじゃないですか。そして、急いてはことを仕損じますよ。…なので、つべこべ言わずに着替えるのです!ボス命令ですよ!」
    「はーい」
    「へぇへぇ、分かりましたよ」
    この暴れ馬二人をなんとか着替えさせることに成功する。ふぅ、一安心。私も一緒に着替えて、腰に日本刀、太ももに銃を携える。
    「よっし、母さん帰って来る前に出かけねぇと」
    「あら、ヨウジさんまだお母さんたちにお仕事のこと言ってないんですか?」
    「はぁ!?言ってねぇよ心配かけるわけにゃいかねぇんだよ!!つかガトーは言ったのかよ!?」
    「いいえ、聞かれていないので」
    「このやろー!」
    「まぁまぁ、落ち着いて…行きますよ」
    わちゃわちゃと楽しそうな二人を制止して、声をかける。
    「…完膚なきまでぶっ潰してやるよ」
    「そうですね。私達の親友とも言えるソラさんを傷付けた人たちにはお仕置きが必要ですものね…?」
    「そういうことです。さ、殺しは厳禁ですが、思う存分暴れて下さい。私が許可します」
    「おう!」「はい!」
    そういうや否や、私たちはすっかり暗くなった夜の街へと駆けて行った。





    次の日の朝、危険指定暴力団の一つである組織の者たちが最低でも全治5ヶ月の重症を負った状態で何者かの手によって警察に突き出された、という都市伝説になりそうなニュースが流れたという。





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