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    knot_bll

    @knot_bll

    全てが幻覚

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    knot_bll

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    完全思い付きといけるかもという見切り発車で書き始めた結果当日に間に合わなかったitsrnさんお誕生日おめでとうございます小説です。

    rnis推しのseの兄貴幻覚 ~itsrnさんBD編~ 休日の朝だというのに、潔は着信音に起こされ目が開けられないまま手探りで枕元の携帯を探し当てた。かろうじて見えた応答ボタンだけを頼りに応答すると、電話越しの相手はかなり怒った声で言った。
    「おい潔……」
     一瞬誰かと思ったが、この声を聞き間違えるはずもない。世界に名だたるMFの糸師冴が、なぜか朝から電話をかけてきて怒った声を出している。
    「さえ…?なんだよこんな朝に…まっていまなんじ?もしかしてもう昼?」
    「バカまだ朝の5時だ」
    「5時ぃ!?なんでそんな時間にかけてくるんだよぉ…」
     まだ眠気に負けそうになっている潔は、今にも睡眠の世界に戻りそうになりながらも携帯を耳に当てていた。冴から早朝に着信が来る理由が全く見当たらず、潔はむにゃむにゃと思いつく可能性を挙げていった。
    「要件なに…先月のイベントの話だったらもう聞いただろぉ…死ぬ程暑かったって…」
    「確かにクソ暑かったしぶっ倒れるかと思ったが、その話じゃねぇ」
    「えーなに…?あ…なんか来年の6月に決まったっていうおんりー?の話…?」
    「おい口の利き方に気を付けろよ。ただのオンリーじゃねぇ。凛潔愛好家が自分達の力で勝ち取った栄光のオンリーだ」
    「ごめん何言ってるかぜんぜんわかんない…じゃあなんだよ……」
     眠すぎて、今にも携帯を手から離してしまいそうだった。うとうととしていると、冴が特大のため息をついたのが聞こえた。
    「お前、今日は何の日か知ってるか」
    「ん……9月…9日?」
    「だから、それは何の日かって聞いてんだ」
    「りんの…誕生日だろ…それくらいわかってるよ…」
    「じゃあなんで予定立ててねぇんだよ。気になって凛に予定を確認してみたら、空いてるだと?舐めてんのか?この日のために凛潔を推してる連中がどれだけ準備したと思ってる」
     冴の言っていることは潔には理解できなかったが、冴が怒っていることだけはわかった。だが潔にも言い分というものがあった。
    「あのさぁ……そんなかんたんじゃないわけ。俺達もうせかいでプレーするサッカー選手で…りんは毎秒誰かに狙われてる…どうして同じブルーロック出身ってだけの俺がりんの誕生日を独占できるとおもうの…」
     忘れていたわけでは決してない。むしろ考え抜いた末の決断だった。潔が凛のことを大切に思っているからこそ、自分が凛の大切な日を横取りはできないと。だから凛にも日付が変わった頃に「おめでとう」とメッセージを送るだけに留めた。潔にとってそれは渾身の配慮だったわけだが、どういうわけか通話相手の冴はそれがお気に召さないらしかった。
    「腰抜け野郎が」
     冴のその心から失望し侮辱している口調に、流石の潔も眠気から覚めて飛び起きた。
    「何とでも言えよ。でもしょうがないだろ!俺には気の利いたデートプランもプレゼントもないし!軽々しく凛を誘える理由だってないんだから!」
     思わず声を荒げてしまい、潔は自分の失言に気づいて「ごめん」と小さく謝った。
    「普通のオフは誘えるくせに、肝心な時には無視か?随分あいつの気持ちを汲み取るのが上手くなったじゃねぇか」
     潔はベッドの上に胡坐をかき、手を伸ばしてカーテンを開けた。まだ少し暗い、朝になりかけているドイツの姿がそこにあった。
    「凛のことじゃ俺は一生冴に勝てっこない。でも今回ばかりは俺だって迂闊なことできない。会うなら別に他の日だっていいだろ」
     潔は凛に想いを寄せながらも、それを明言することを避けてきた。凛に拒否されてしまえば、潔はもうどうすればいいのかわからない。2人の関係には一生亀裂が入り元には戻せなくなる。軽口を言い合って休日を一緒に過ごせなくなってしまうくらいなら、自分の感情など封印して凛に知られることなく終わった方がまだマシだった。
    「別に俺だってお前が凛を誘って断られたって言うんならわざわざ口を出したりしねぇ。でもお前は誘ってもいないだろ。それで気遣ったつもりでいるのはただの間抜けだ」
     潔はしっかりダメージを受け、携帯を握っていない方の手で自分の髪をかき上げた。冴に口で勝てた試しなどない。普段でさえ勝てないのだから、凛のことで潔が冴に勝てるはずがなかった。
    「普段あんだけオフを一緒に過ごしてるお前達が、凛の誕生日だっていうのにSNS投稿の1つもなく一日を終わらせたなんてことになったら…凛潔の民は……ファンはどう思うだろうな?」
    「情に訴えようとしても無駄だぞ。つーか普通に凛潔の民って言っちゃってるじゃん」
     潔からすれば冴だろうが「凛潔の民」だろうが関係ないのだ。周りがどんなに自分と凛の仲を喜ぼうと、限度というものがある。これからもずっとこの心地いい関係が続けられるなどと、潔はそんな夢を見てはいなかった。むしろ現実を受け入れているからこそ、そろそろ凛と距離を取るべきなのではないだろうかと考えていた。
    「冴が応援してくれるのは嬉しいよ。でもだからといって調子に乗れるほど、俺は自惚れられない。凛の一番近くにいたい気持ちはあるけど、それは俺が思ってるだけのことだ。俺は怖くて凛に深いことを聞けないから…本当は凛に彼女がいるんじゃないかとか、誕生日を祝ってくれる特別な人との予定があるんじゃないかって……知りたくないんだよ」
     終わらせなければと思いながらも、終わりが見えるのが怖くて仕方がない。自分は凛の隣にいるべきではないと思い知る日が来るのが怖い。年齢を重ねていくこと、周囲の友人が恋人を作り結婚していくこと。凛はいつまで独身だろうか、気になる人はいるのだろうか。ピッチの上ではあれほど強気でいられるのに、それ以外の自分はまるでダメ。こんなことを考えている場合ではないとわかっていながら、潔は気づけば凛のことを考えている。
    「お前はもっとピッチ外で自分勝手になるべきだな。あの潔世一がプライベートでこんな情けねぇ奴だとバレるのは流石にまずい」
    「余計なお世話だっつーの」
    「会いたくないわけじゃねぇんだな?」
    「当たり前だろ。冴だって俺の気持ちわかってるだろ」
     そう言って、潔はなぜ自分の恋心がよりによって本人の実兄に知られているのだろうと思った。なぜかは全くわからないが、冴は誰よりも潔の恋路を後押ししてくれていて、冴以外には決してこの感情を打ち明けることができない。
    「じゃあいっそ3人で集まるか?凛潔に挟まる趣味はねぇが、凛の誕生日に全世界に向けてマウント取れるような凛潔写真が一枚も上がらないのは認められねぇ」
    「い、いやそれは……」
     正直かなり魅力的な申し出だった。冴を加えた三人でなら、変な噂が立つ心配もない上にブラコンの凛は予定があったとしても蹴るだろう。潔は冴の提案に乗っかって、凛が特定の誰かと過ごす予定がないと安心できる。だがそれは、とても卑怯な手だと思った。
    「すげぇありがたい話だけど……」
    「だと思った。お前本当にさっさとどうにかしろよ。俺がこんな朝に電話したのは、今ならまだ間に合うと思ったからだ」
    「そんなのわかんないじゃん…チームメイトに誘われるとか…彼女いるかもだし…」
     冴は小さくため息をついた。
    「その自己評価の低さも課題だな。この世で一番凛に対して自惚れていい奴が、こんな謙虚だと進展するものもできやしねぇ」
    「なんとでも言えよ」
    「潔、これだけは言っておくが、別に特別なプランもプレゼントも、理由だって必要ない。お前の言う通り俺達はもう世界的な選手で、サッカーが盛んな国であればどこへ行ってもバレるし特別扱いされる。こっちが望んでるかなんて関係ない。もう俺達はサッカーのことだけ考えりゃよかったガキには戻れねぇ。たとえやってることが変わらなくてもだ。店に入れば特別扱いされ、VIP席に通されて頼んでもない酒が奢られる。何も変わっていないはずなのに、変わったことになっちまってる。そんな世界で何の気兼ねなく一緒に時間を過ごせる奴がどれほど貴重かくらいわかるだろ」
    「それは……」
    「お前が考えてることをくだらねぇと一蹴したりはしない。お前が思慮深いことは、凛にとっては救いにもなる。ただ思慮深さと無駄な自問自答は違うだろ。本当に凛のことを考えるなら、まずは一回本人の意思を確認すべきだ」
     潔はため息をつきたくなった。冴の言っていることは正論だ。冴に背中を押してもらえるのはとても嬉しい。だがそれでも潔は怖かった。凛に拒否されてしまうのが、一日の予定ではなく今後の未来の関係が変わってしまうことが怖くてたまらなかった。
    「とにかく一回メッセージ送るなり電話するなりしろ。ダメでも俺が慰めてやるから」
    「簡単に言うなって」
    「いいから早く。まぁ流石に今は時間が早いから、昼までに報告しろ。いいな」
     冴はそう言って通話を切ってしまった。すっかり目が覚め起こされてしまった潔は、二度寝をする気にもなれずベッドから下りて身支度を始めた。久しぶりにロードワークに出掛けて、帰りにお気に入りのパン屋でパンを買って帰った。部屋で一人朝食を取りながら、ここに凛がいたら、今日一日の中に凛がいてくれたらどれだけいいだろうと考えた。そしてそう考えていたら、自然と手が動き凛へと電話をかけていた。通話のボタンをタップしてようやく我に返り目を丸くしたが、ここで切ったところでもう凛の元へ通知がいってしまっている。それならばもう、留守だろうと伝えるしかないと考えていたところ、すぐに呼び出し音が止んだ。
    「あ、凛?潔だけど…えと、朝からごめん。寝てた?」
    「いや、起きてた」
     凛の口調ははっきりしていた。相変わらず言葉は少なかったが、その口調には特に感情がこもっていないような気がした。つまり潔からの着信に気分を害しているわけではなさそうだった。
    「あのさ…もし、もし今日何も予定なくて暇だったら……会いに行っていい?凛の誕生日だからっていうのもあるけど、なんか普通に…会いたくて」
     潔が正直にそう伝えると、凛は黙った。
    「ごめん、誕生日だし予定あるよな?また今度……」
    「空いてる。今日のいつ来るんだ」
    「あ、え、いいの!?」
    「いいから言ってんだろ」
    「あ、そか、ごめん。でも俺プレゼントとか何もなくて……」
     計画も何もあったものではない。これでは凛に笑われると覚悟した潔だったが、凛は静かに一言言った。
    「別にそんなのいらねぇ。お前がいればそれでいい」
    「え!?あ、」
    「時間決まったら言え。なるべく急げよ」
     凛はそう言ってさっさと通話を終了させてしまい、潔はしばらく画面を眺めていたがこうしてはいられないとフランス行きの航空券を確保し、冴に「今からフランス行ってくる」と連絡した。すると即座に「写真絶対撮れ」「SNSのマウント用と、俺に提出する用の最低2枚」「もちろん多ければ多いほど良い」と返信が来た。
    (またそういうことを…写真頼むの結構緊張するんだからな)
     すぐに2人のツーショットを要求してくる冴に少し呆れたものの、その後に「楽しんで来い」とメッセージが来たので腹が立つことはなかった。
     フランス行きの飛行機に乗り込み到着するまでの間、潔はずっと凛に会いたい気持ちを募らせていた。
    (ああどうしよ、全然上手くいかないな…)
     凛への気持ちに蓋をして、見ないふりをして、凛のことをそんな意味で好きではないと自分に言い聞かせる覚悟をしていかなければいけないと思っていたはずなのに、気づけば凛のことが好きだ、早く会いたい、顔が見たいという気持ちでいっぱいになりネガティブなことなど全て飛んでいた。

     空港では変装した凛が迎えに来てくれており、潔は嬉しさのあまり飛びつきたいのを我慢して足早に空港を出た。プランは何もなかったが、やはり凛に何かを贈りたかったので一緒に店を回りたいと提案すると意外にも凛はあっさり頷いた。
     2人でああだこうだ言いながら、買うわけでもなく商品を物色しているのがまるで一般人に戻ったかのようだった。ずっとこうして、凛の隣で過ごせたらいいのにと潔は思った。

    「結局プレゼント何も渡せてないんだけど!?」
     夜の便に乗って帰ろうとしている潔は、空港で凛に訴えた。一応夕食の代金を払わせてくれと頼んでいたが、気づけば支払いが終わっており潔は祝いらしいことを何もできていないことに帰る直前になって焦っていた。
    「別にいいだろ誕生日なんて」
    「よくないだろ!あー無計画で来ちゃったの反省だな…ごめん後日改めて何か……」
     潔が肩を落としていると、凛が潔の目の前に立った。まるで周囲の視界を遮り潔を隠すかのような動きに、潔は驚いて凛を見上げた。すると凛の顔と体がぐっと潔に近づき、驚いて目を見開いている間に凛の頬が潔の頬に降れた。遅れて聞こえたリップ音にビズをされているのだと気づき、反対側の頬に同じことをされる。完全に硬直しただ凛を見つめていると、凛は満足気に「じゃあな」と言って振り返りもせずさっさとその場から離れてしまった。
    「なんでそんなことすんの……」
     潔は誰にも聞こえない、聞き取れないような声で呟いた。
     気持ちを整理するどころか乱されるばかりで、潔は大いに苦しみ悩み、ドイツの自宅に戻ってすぐ冴に物申したが「俺も行くべきだった」「最高の凛潔チャンスを逃した」「おい写真提出しろって言っただろ」とうるさかったので、結局部屋で一人悶々とするだけになってしまった。
     冴に言われ写真を一枚も取れなかったことに気づきやってしまったと思っていたたが、買い物中にファンに気づかれ撮られていた凛とのオフショットが出回ってしまい、また冴が「一般人に後れを取るな」「これじゃマウントには弱い」と騒ぎ出したのでしばらく無視することにした。
     潔はしばらくの間、頬に触れた凛の肌の感触や、凛の鳴らしたリップ音のことばかり考えてしまって上手く眠れない日々が続いた。
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