12/25『……もしもし』
きっちり三コール目で繋がった相手に、ソファの背凭れに身体を預けたセトは、上機嫌に話しかける。
「おう、可愛い甥っ子。ちゃんと飯は喰ったか?」
『はい。ご機嫌ですね、叔父様』
「あぁ、最高の時間を過ごせたからな」
『それは良かった』
壁にかけられた時計が示す時刻は、12月25日の21時。クリスマスの夜だ。
かつてエジプトで悪神と畏怖されたセトや天空神と仰がれたホルス達が人間に王権を移譲し、人間達に紛れて暮らすようになって長い時が過ぎた。
贖罪の旅路を経た後にセトはホルスの求愛を受け入れたが、それでもネフティスとアヌビスを、愛する家族との絆を捨てることはできない。家族を優先する自分を赦してくれるかと俯くセトの手を取り、その指先に口付けて、そんな叔父様を愛していますと、ホルスは永久の愛を誓ってくれたのだ。
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