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    yori

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    yori

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    コノキラ
    初めてのちゅーを書きたかった、そんだけです。。。

    #コノキラ

    SS(コノキラ)「隊長大丈夫ですか?」
    シンが心配そうにキラを見る。
    それに微笑むことで大丈夫、と返しながらキラはホテルの部屋へ戻った。
    今日はコンパスへ新加盟した国が中心となった親睦会という名のパーティーが開かれており、キラたちヤマト隊をはじめ、艦長のコノエやアークエンジェル組も参加していた。
    地球に降下しているため、主催した国がホテルも手配してくれている。
    パーティー自体はまだ終わっていないが、キラは体調不良を理由に早々に引き上げていた。
    実際気分は悪い。
    けれどそれは酒に酔っているわけでもなく、本当に体調が悪いわけでもないことは自分でわかっていた。
    本気で心配してくれるシンには悪いが、仕方ないのだとキラは滑り込むように部屋に入った。
    パタン、と扉が閉まると同時にロックがかかり、それを耳で確認するとキラはずるり、と床に座り込んだ。
    先程まで目にしていた光景が脳裏を過ぎる。
    それにきゅ、と唇を噛んだ。
    恋人関係になったばかりのコノエは、基本的にこういう場にはあまり出ない。だが、今回は総裁であるラクスも不在とあって、ミレニアムの留守番は私がしますからーとアーサーの申し出もあり参加していた。
    彼は元々は教師であるが、ザフトの軍人としての歴も長い。
    その為護衛に来ていたザフトの軍人たちに囲まれて酒を飲みながら談笑していた。
    それはいい。
    いい、けれど寂しくはなった。
    グラスを片手にその輪の中にいる彼は、とても遠くてキラよりずっと「大人」なのだと思い知るのだ。
    そもそもキラがコノエに想いを伝えた時でさえ、キラは子供のように大泣きしながら好きだと言った。
    コノエはとても驚いた顔をし、本気ですか?と聞いてきた。
    20以上も年下の、それも同性に告白されるなんて思わなかったのだろう。
    頷くキラに、彼は少し思案して、分かりましたと答えた。
    だから恋人なのだと思う。
    だがその関係が変わったかと言えば特に変わってはいなかった。
    昼間はもちろん他のクルーが居るためいつも通りだ。けれど夜、寝る前は、と思うとコノエはキラの頭をぽんぽん、と撫でて「おやすみなさい」と言い自室に戻る。
    頭ぽんぽんは嬉しいが、完全に子供扱いである。
    恋人になれば、キスやその先もあっておかしくないと思うのに、コノエにそんな様子欠片もなかった。
    だから本当に恋人なのか怪しい、と思ったりもしたが、ふとした時にキラに向ける視線がとても優しくて、少しは好かれてはいるのかな、と思ったりもしていた。
    だが。
    ああして、かつての仲間だろう人達に囲まれて、なおかつーーーこれが一番キラの気分を下げる要因だったのだが、鮮やかなドレスを着た女性に微笑む彼を見るとどうしようもなかった。
    嫉妬であることは理解しているが、それをしていいのかさえ分からない。
    キラなんかよりずっと経験値の高いコノエだ。あの中に元恋人がいたっておかしくなかった。


    はぁ、と何度目かになる重い息を吐いてシャワーでも浴びようと立ち上がる。
    風呂場に行けば珍しく風呂タブもあったけれど、そんな気分にもなれずシャワーのコックを思い切り捻ってお湯を出した。
    のそのそと隊服を脱ぎ適当に放り投げると、頭からそれを浴びる。
    少し熱めにした温度は逆にキラを冷静にさせた。
    頬を伝うものをお湯に誤魔化してざざっと洗うとふろ場を後にする。
    大きめのバスタオルで適当に拭きながら、下着とホテルのルームウェアを着用した。
    髪から滴る水滴は首にかけたタオルに吸い取ってもらうとして、冷蔵庫を開けたが何も入っていなかった。
    それもそうか、とキラは記憶を辿る。
    確かこのフロアに自販機があったはずだ。
    水でも買いに行こうとしてーーー……

    ピンポーン

    部屋の中に控えめな高い音が鳴り響いた。
    誰だろうか。
    シンでももしかして心配して戻ってきてくれたのかもしれない。
    彼はあの後パーティーに戻っているはずだったから。
    「はい」
    スコープから確認もせずドアを開ける。
    するとそこに立っていたのは、少し息を荒くしたコノエだった。
    「……かん、ちょう?」
    あれ?と首を傾げる。
    彼はフロアは同じだが、エレベーターを挟んで反対側の部屋のはずだ。
    こっそり確認していた自分が少し恥ずかしいので言えないが、キラはきょとん、とコノエを見つめた。
    「体調が、よくないとシンに聞きまして」
    「あ……」
    しかしコノエから出た言葉に合点がいく。
    パーティー会場を出る時には固辞したが、確かに報告しないわけにはいかないだろう。キラがいない今彼がコンパス代表となる。
    「すみません、勝手に」
    「いや、それで体調は」
    「大丈夫です。ちょっと酔っただけなので」
    本当はキラはザルも通り越すほどだが、それはコノエは知らないはずだ。
    適当に返して問題ないことを強調した。
    それにコノエは少しだけ顔を顰めた。
    「…………?」
    何かあっただろうか、と思う前にコノエが手にしていたボトルをキラに差し出した。
    「ひとまず水です。准将の事だから何も用意されてないでしょう?」
    「ぅ……助かります」
    ちょうど買いに行こうとしたいたところだ。
    セリフからするにコノエは事前に用意するのだろう。
    そんな事にまでキラは気が回らない。
    だから子供だと言うのに。
    受け取りながらドア先であることを思い出して、キラは体を捻り、どうぞ、と奥を指した。
    「いや、体調が悪いのでしたら」
    失礼します、と言い去ろうとするコノエの裾をーーー気がつけばキラは握っていた。

    (心配、して来てくれた)

    それならば、少しくらいワガママを言ってもいいだろうか。
    きゅ、と握り込みながら、いいかな、の気持ちを込めてキラはコノエを煽り見る。
    「大丈夫、なので。艦長がよければ……」
    それにコノエは少し考える素振りをして、では少しだけ、と入ってくれた。
    キラの横を通り過ぎる際、鼻を掠めた匂いがあった。
    微かなそれはすん、と小さくキラの鼻を刺激する。
    甘い、香り。
    (女性ものの、香水ーー?)
    引き上げる前に見えた、コノエのそばに居た赤いドレスの女性のものだろうか。
    来てくれたことに気分が上がったが、簡単に沈められた。

    キラに用意された部屋はさすがに広めだ。
    手前にソファ、テーブルなどの応接セットがあり、奥が寝室になっている。
    奥の大きめのソファに座ると、コノエが隣に座った。
    近い体温に心臓がうるさくなる。
    けれど掠めた甘い香りも同時に近くなって泣きたくなった。
    「キ…………准将」
    「え?」
    顔を上げると水の入ったボトルを取り上げられ、蓋を開けられる。再度差し出してくれたそれを1口飲むと、ちらりとコノエを見上げた。
    立てば離れる顔も、座れば少し近くなる。
    それが恥ずかしくて逸らしてしまった。
    すると急に首にかけていたタオルを取られ、そのまま髪を挟みながら拭かれる。
    「わっ」
    「だいぶまだ濡れてますよ」
    「す、すみません……」
    どうしよう、恥ずかしすぎる。
    考えてみればキラが想いを伝えてからーーー恋人関係になってから初めての二人きりだ。
    けれどわたわたするキラを他所に、コノエは実に落ち着いていた。ぽんぽん、とタオルに水滴を吸い取らせていく。
    気持ちがいいが、やはりコノエは意識をしていないのだろうか。
    しょせん同性の子供だ。
    「あ、あの!ありがとうございます。すみません、艦長も疲れてるのに……」
    なんで入って貰ったんだろう、と今更になって後悔した。
    心配してくれて浮き足立ってしまって恥ずかしい。
    「私はかまいませんが、准将、なぜ私に言ってくださらなかったのですか?」
    「なにを、ですか?」
    「体調が悪いことです。私はシンから聞きましたので」
    「報告できずすみません……」
    「そういうことではなく」
    「ー?」
    珍しく歯切れが悪い。
    意味が分からずきょとん、としていると
    「ーーーーーー!!」
    その腕に包まれていた。
    傍から見るよりずっと大きな胸だ。
    「か、艦長?!」
    「あなたから、聞きたいだけです」
    頼ってください、と耳元を掠めるように言われる。
    ワクとはいえ、酒も入っているキラは大げさなほど肩が跳ねた。
    「だって、ーーーーーてた、から」
    「なんですか?」
    「話して、たから」
    知らない人たちと。
    知らない顔で。
    自分なんて子供は置いてけぼりの、大人な顔をしていた。
    「こんな匂いも、知らない」
    甘ったるい匂いにクラクラする。
    気持ち悪い。
    本当に体調が悪くなりそうだ。
    キラの言葉に自身の腕を鼻まで持ち上げーーーコノエは苦々しい顔をした。
    「すみません、話してる間に移ったようだ」
    「移るほど、近くにいたんですか?」
    嫉妬する立場じゃないかも、などと思っていたのに、一度吐き出した想いは次々と出てきてしまう。
    子供じみていると呆れられるだろうか。
    「キ…………」
    「ぼ、僕はどうせ艦長より、艦長の周りの人達より子供だし、男だし、だから、だから……」

    堰を切ったように言うと、堪えていたものがぽろりと落ちる。
    あぁ、情けない。
    こんな風に言う予定ではなかったのに。
    「それは、ヤキモチと受け取っても?」
    「ーーーーーー……」
    ふるりと落ちた雫をコノエの指が受け止める。
    大粒のそれはとてもキレイで、勿体無いと思ったから。
    「准将?」
    「ーーーーーなまえ、だって」

    呼びかけて、やめられる。
    言われてコノエは目を見張った。
    気がついていたのか。

    「なんでですか?階級が上だからって、敬語も止めないし、それに、それに」

    触れてもくれない。
    僕は触れたい。
    好きだから。

    「ーーー私は、貴方に愛されているのか」
    「僕は言ってますっ好きですって、冗談でこんなこと言えない……」
    「そう、ですね。すみません。自信がありませんでした」
    「じしん?」

    抱きしめていたキラを少し離して、コノエはその瞳に自分を写すと、小さく頷いた。

    「貴方がそう思うように、私も思う。貴方からすればだいぶおじさんだ」
    どちらかと言えば彼の両親の方が年齢は近いだろう。
    だから、キラのそれは実務経験が少なく、他に頼れない故の勘違いかもしれない、と。
    それでもあの時そう言えず、受け入れてしまったのは自身の浅ましさだと言った。

    「私はずっと貴方を想っていたから」
    一度目を閉じる。
    「けれど、貴方の私への想いはもしかしたら勘違いかもしれない。触れれば、その事に貴方が気がついても、私はもう貴方を手放せなくなる。」
    目を開けて、キラを瞳にうつす。
    キラの目にも、コノエが映っていた。
    「私は情けないことに、貴方を失うことが怖い。だからキラ。あなたから私にキスをして欲しい」
    請われてキラはコノエに手を伸ばした。
    「勘違いなんかじゃない、です。僕だっていっぱい考えて悩んで、でも……どれだけ考えても違うって思っても、結局溢れてくるのは好きって気持ちで……僕は艦長が好きです。すき、大好きーーー……」

    そうして触れるだけのキスをする。
    恐る恐る目を開けると、すぐ目の前に当然だがコノエの顔があった。
    真っ直ぐキラを見ている。
    彼の目にはキラだけが映っていた。

    だいすき

    そう言ってまた唇を重ねる。
    触れるだけの。
    少し離れると、唇を舐められキラは思わず小さく口を開いた。
    その隙間にねじ込まれる熱いもの。

    「ぁ、ん……ん」

    驚いて奥に縮こまった舌を見つけられて絡めとられ、恥ずかしいがキラは必死に応えた。
    くちゅくちゅという水音がやたらと耳に響く。

    「今まで我慢してきたんだ。もう、止まれませんよ?キラ」

    熱を帯びた瞳がキラを見つめて、合間にまた舌を絡ませて唾液を渡し合う。
    我慢なんてよかったのに。
    そう思うが今が嬉しくて仕方ない。
    小さく頷いたキラに再度キスをしようとしてーーーぴたりとコノエの動きが止まった。

    「艦長ーー……?」

    キラから離れるとコノエは少しの間も惜しいのか、嵌めたままだった手袋を口で抜き取りながらベルトを外す。
    「え?!えっ?!!」
    「失礼。シャワー室をお借りします。ーーーーにおい、嫌でしょう?」
    「あーーー……」

    コノエから発せられる甘いそれがキラは確かに嫌だった。
    うつるほど近くに誰かがいた痕跡など消してしまいたかった。
    けれど。

    (いい雰囲気だったのにーー……)

    がくり、と項垂れる。
    あんなキスをしておいて、キラを煽っておいて放置するというのか。
    そんなキラの心情が読めたのか、コノエはクスリと笑ってキラの頬に唇を落とした。

    「直ぐに戻ります。ーーー安心してください。私は今すぐにでも貴方を抱きたい」
    「ーーーーーー!!!!」

    真っ直ぐ言われると何故だろう。
    恥ずかしさもあるがむず痒い。
    心臓は壊れてしまったかのように煩く鳴っている。

    キラは真っ赤になりながら頷くと、コノエはシャワー室へ姿を消した。






    side:kne


    コンパスへの出向が打診された時、初めて彼に会った。
    ザフトの白服に身を包んでいた彼は、聞いてなければ軍人とも、ましてやMSのパイロットとともお思えない風貌だった。
    若いとは聞いていたが、まだ10代であるというキラ・ヤマトというその人は、サラサラの亜麻色の髪で、長いまつ毛に縁取られた瞳はアメジストを嵌め込んでいるかのようで、吸い込まれそうなほど大きくキレイだった。それなのに顔は小さく、手足も細長い。
    コーディネイターは整った容姿に調整されることが多いが彼は群を抜いてそうだと思えた。
    若干19歳の若さで二度の大戦を経験し、恐らく今後他に出ないほどのパイロットとして優秀な腕を持つ彼が、いわゆる「優男」であることにも驚いたし、何より自分を推挙したと聞いてさらに目を見開いた。
    教師をしていたが、ユニウスセブンの悲劇から軍人へと転向した。
    自分のような人間は多いだろうと思う。
    恐らく違ったのは、同胞を非情なやり方で大量虐殺したナチュラルへの復讐心ではなく、もうこれ以上誰も死なせたくないゆえの、守るための志願だったくらいか。
    その為どれだけ軍人らしくない、と非難されようともコノエは命を守るために、時には逃げの選択肢を取り続けた。
    そこに誇りなどいらない。
    生きて帰るのだという、たった一つの思念を貫く。
    揶揄されながらも、駆け抜けるように「守り」に徹していると、戦火の拡大にあわせて同期たちはどんどん減っていっていた。
    代わりにコノエが賞賛されるようになり、いつの間にか白服を着るまでになっていた。
    そんな自分になにを期待して彼は選んだのだと疑問に思った。
    確かにコンパスは平和維持のための組織である。
    率先して戦うためのものでも、ましてや殺すためのものではない。
    けれどその特性上、後手に回らざるしか得ない状況ばかりだというのに、「守ってばかり」では活路は見いだせない。
    けれどキラは微笑んで首を振った。
    だからいいのだ、と。

    「僕たちの帰る場所を、守って欲しいんです」

    だから僕たちは戦えます、と言った。

    それこそ、自分はターミナルにいる彼の幼なじみや、ザフトのエースパイロットだった彼の部下のように、彼と背中合わせに戦うことはできない。
    だからこそ、彼が望んだように、彼らが、彼が帰ってくる場所を守ることに努めようと決めた。
    共に戦うようになって、やはり彼があのフリーダムのパイロットなのだと思い知るのと同時に、その微笑みの裏側に眉をしかめた。
    消えぬ戦禍の種に、無くならぬ悲痛の涙と、ああすればよかったという悔恨。
    キラ・ヤマトはその微笑みにすべての嘆きを封じ込めて戦っていた。
    それほどまでに、彼は優しく強かった。
    MSの腕だけでなく、プログラミング能力も高かったキラはそちらでも才能を見せつけ、他に追随を許さずひたすら走り続けていた。
    やはりその裏に全てを隠して飲み込んで。
    だがそれでも他者への労りと優しさを忘れずに接し、時折見せる綻ぶような笑みと、泣きそうな微笑みに、惹かれぬ理由などなかった。

    ずっとひたすらに前線のパイロットをしていたキラは指揮官としての経験は少ない。
    本人いわく身内人事というが、それが准将、最高指揮官という肩書きを持ったがゆえの未熟さを自分に頼ってくれた。
    彼の両親の方が近いほど年の差がある。
    同性でもあり、到底恋愛対象などにはならぬだろう、と、頼って慕ってくれるこの関係に感謝こそすれ、不満などなかったはずだった。

    けれだ、あの日彼から想いを告げられた。
    それは、隠していた欲望の仮面を簡単に剥がし落とすほどの衝撃を持っていた。
    縛り付けたい、私だけを見てほしいという欲望はずっとあったけれどそれは過ぎた望みだとしまい込んでいたのに。
    顔を見せてしまう。
    だが同時に不安も生じた。
    彼のその気持ちは、勘違いではないのだろうか、と。
    年上の男に誰しも憧れる。
    そんな時期のあれそれと、常に命の取り合いのような最前線にいる極限状態ゆえの、本当は違う感情なのではないかと疑った。
    そもそも、キラはその中性的な顔立ちと柔らかな雰囲気から、男女問わず惹かれる者も多い。
    その中で、ただのおじさんのような自分などを選ぶというのだろうか。
    だから顔を出した触れたいという欲望を無理やりねじ伏せた。
    触れて、彼が勘違いだったともし気がついたら、全て失うような気がしたからだ。

    コンパスへの加盟国が増えたことで、そのひとつが主催したパーティーに彼と参加した。
    その類はあまり出席することはなかったが、クライン総裁が不在とのことでキラに請われたのだ。キラにはアーサーが快く留守番を引き受けてくれたと言ったが、実は頼み込んで出席をする。
    キラは何度か総裁と出席しているはずだが、やはり想像通り慣れないのだろう。
    最初から疲れた顔をしていた。
    何人か見知った顔が声を掛けてくれる合間にキラを見続ける。すると気がつくのは彼への無粋な視線だ。
    舐め回すような、下卑たもの。
    彼への、恋慕の視線。
    どうしたものかと思っていたら、キラがシンに寄り添うように会場を後にしていた。
    後を追いたかったが、キラが席を外したとなれば最高位は自分ということになるから離れられなかった。
    しばらくするとシンが戻り、キラが体調不良の為先に引き上げました、と報告をしてくれた。

    (なぜーーー……)

    自分は恋人ではないのか。
    少なくとも頼ってくれていたのではなかったか。
    シンはキラの直属の部下とはいえ。
    キラから自分に言ってくれなかったのか。
    浅ましい嫉妬だ。
    分かっている。

    「大佐、お久しぶりですですわ」

    キラが退出する前に声をかけてきた女が腕を回してくるが鬱陶しい。あられもなく真っ赤なドレスからはみ出そうな豊満な体を押し付けてくるが、邪魔でしかない。
    お開きになれば部屋にいける。
    それしか頭になかった。
    かつての仲間たちに適当に相槌を打ちながら時計に視線をやれば、キラが退出して一時間ほど経った頃、漸く一旦解散のアナウンスが流れた。
    後は各々自由に、と暗に言われ、先程の女が再度近づいてきたがそれを無視してシンに向かった。

    「准将の様子を見てから休む」

    そう言って途中の自販機で水を買い、自分と同じフロアに上がった。
    インターホンを鳴らせば少しして扉が開く。
    ……これは恐らく、スコープで確認をしていない。
    高官ばかりのフロアとはいえ、少し無防備すぎるのではないだろうか。
    出てしまいそうなため息を飲み込んで具合を伺えば、確かに顔色の悪いキラが「飲みすぎて」と答えた。
    それに顔をしかめる。
    キラは確かザルさえもこえたワクのはずだ。
    どの程度飲んでいるかは分からないが、酔うはずなどない。
    もし酔っているのなら、何かの薬の可能性さえ出てくる。
    買った水を差し出すと受け取り、体を寄せてくれる。
    入れとばかりのその行動に面食らう。
    いや、確かに付き合っているのだが……。
    少し思案して、裾を掴む目の前の存在への欲には勝てなかった。

    キラの隣に腰を下ろす。
    シャワーを浴びたばかりなのだろう。
    その高くなった体温が近い。
    これはだいぶ理性が試されるな、と少し入ったことを後悔した。
    「キーーーーー准将」
    名前を呼びそうになって思いとどめ、ボトルの水を飲みやすいように渡す。こくり、と一口嚥下する仕草にも欲を刺激された。
    水の滴る髪の毛を、肩に掛けられていたタオルで拭き取ることに意識を集中させて雑念をやり過ごす。
    廊下で漏らしたシンへの嫉妬をもう一度言えば、キラからは全く違う返事が返ってきた。
    それは、まさか。

    その時初めて移ってしまっていた匂いに舌打ちをしたくなった。
    年齢も性別もこえて焦がれる存在がいるというのに、なぜあんな女に靡かねばならないのか。
    けれどヤキモチにしか思えないキラの吐露が愛しくて堪らなかった。
    勘違いではないのだと、自惚れてもいいのだろうか。

    名前を呼べば、呼ぶと溢れる想いが止まらないから。
    けれど呼びたくて、気軽に彼の名前を呼ぶクルーたちが羨ましくて。
    何度も呼びかけて止めていたその行為はキラにバレていて、窘められる。
    触れたいのに、触れてくれないと泣かれた。
    あの時のように、言葉を尽くして自分に想いを告げてくれるキラ。
    疑ったことを、自信が持てなかったことを初めて恥じた。

    「私はずっと貴方を想っていたから」
    一度目を閉じた。
    「けれど、貴方の私への想いはもしかしたら勘違いかもしれない。触れれば、その事に貴方が気がついても、私はもう貴方を手放せなくなる。」

    それでも、キラ。
    貴方に触れていいというのなら。
    貴方からキスをして欲しい。
    私はとうに貴方のものだ。貴方に全てを奪われている。
    だから、貴方のことも奪っていいというのなら。

    「どうか、キラ」

    大人気ない私の、最後の枷を外して欲しい。


    そうして触れ合ったキラの唇は甘く酔いしびれるようなものだった。








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