透明な血が流れたとして 血は水よりも濃いのだという。
ならばこの大地に累計を持たぬ彼の人は、唯一人清流に咲く蓮であろうか。
リー探偵事務所の所長が、ロドスの指揮官の訃報を受け取ったのは、その死から数日経った後だった。
ロドスで葬儀が開かれるのだという。その案内をトランスポーターから受け取ったリーは、執務室に置いてある茶葉や茶菓子はどうなったのだろうかと考えた。自分が置きっぱなしにしたものだけではない。リンが手入れをしていた鉢植え、ブローカが用意した毛布、イースチナが少しずつ読み勧めていた推理小説。それも全て、棺に詰めて燃やすのだろうか。
喪服に袖を通し、本艦へと向かう。場違いなほどの晴天の元で、参列者の表情だけが六月の空模様と同じだった。すすり泣きがそこかしこから聞こえる。心を引っ掻くその声に耐えかねて、故人が起きてくるのではと不安になるくらいに。
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