禁煙応援キャンペーン夜の路地、待ち合わせの場所に立っている男が目に入り、声を掛けようと上げかけた手を止める。忙しないリズムで足先をトントンと鳴らし、ストレスに顰められた表情で虚空を見つめている。かりかりと爪を立てながら唇を触り続けている手。どうやら禁煙は順調なようだ。
「お待たせ。酷い顔してるよ」
小走りに近付いてようやく声を掛ければ、眉をぴくりと動かしたKKは暁人を睨みつけた。
「遅え!」
「ごめんって。ちょっと準備に時間かかっちゃってさ」
「良いから早くしろ、限界なんだよ!」
「分かってるってば……ほら」
KKの要望通り、爪で弄られて赤くなった唇にそっと触れる。待ちきれないと疼くKKの視線に促されながら、優しくキスを落とした。舌で軽く唇を舐めると、少しだけ鉄の味が滲む。
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