もう、忘れさせて「ほら、これ噛まないで飲み込んでみ？」
　口元に運ばれたご飯を大きな口で迎え入れ、言われた通り噛まずに飲み込む。ごっくん。すると、喉をイガイガと痛めていた魚の骨は無くなって、差し出された麦茶で喉を潤し一安心。
「大丈夫？」
「うん。大丈夫！」
　ごめんな、ちゃんと骨も取っておけば良かったな、と眉を下げたたかしお兄ちゃんにブンブンと頭を振る。
「たかしお兄ちゃんのご飯、美味しいよ。いつもありがとう！」

　ルナちゃんのお兄ちゃんであるたかしお兄ちゃんは、いつだってとっても優しい。お父さんとお母さんが忙しくて、ひとりで家に居ることが多い私を夕飯に誘ってくれる。たかしお兄ちゃんの作るご飯はどれも美味しくて、温かくて、何よりみんなで食べるのがとっても楽しい。

ran夢 『忘れてあげる』　何度この台詞を言っただろう。私が別れようと告げる度、貴方は至極綺麗な笑みを浮かべて「俺は優しいから、今の言葉は忘れてやるよ」と囁く。その笑みの裏に潜む何かを知るのが怖い私は結局それ以上食い下がれなくて。だけどまた数ヶ月後に同じ台詞を言うのだ。結果なんて最初から分かっているのに。