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    85_yako_p

    カプ入り乱れの雑多です。
    昔の話は解釈違いも記念にあげてます。
    作品全部に捏造があると思ってください。

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    85_yako_p

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    北村のSF(少し不思議)です。ノリで読んでください。(2024/3/17)

    ##北村想楽
    ##カプなし
    ##レジェンダーズ
    ##葛之葉雨彦
    ##古論クリス

    雨なのに喫茶店とか入れない 今日はなんだか良くない日だ。厄日とまではいかないけど、きっと寝る前にため息を吐いてしまうような、そういう日。具体的に言うと今日はどんよりと曇っていたし、何度も人にぶつかる日だった。ぶつかるっていうのは物理的に。
     そりゃ人にぶつかるってことは僕だって相手を避けられなかったってことなんだけど、僕はぶつかった相手には頭を少し下げる程度のことはする。それなのにぶつかった相手は例外なく僕を無視して歩いていくから今日はあんまり良くない日だ。アイドルとして顔が売れているはずだなんて驕るつもりはないが、あんな透明人間を相手にするように無視することもないだろうに。
    「おはようございますー。あれー? 雨彦さんしかいないんですかー?」
    「よう北村。プロデューサーはちょいと野暮用でな、留守を頼まれてるんだ」
    「そうなんだー。賢くんもいませんけどー」
    「大学に忘れ物だそうだ」
     プロデューサーさんがいないときはわりとあるけれど、賢くんまでいないのは珍しい。クリスさんもまだみたいだし雨彦さんと二人きりだ。お茶でも淹れてこようかと思った矢先に雨彦さんが「茶でも飲むか?」と立ち上がる。遠慮するのもなんだし、お願いして僕はソファーに座ってのんびりとしていた。僕はひとりで、静かだった。ぼんやりと雨が降り始める音がした。
    「そら。熱いから気をつけてな」
    「ありがとうございますー。……ちょっとやなことがあったんだけど、ちょっと元気出たかもー」
     言う必要のなかった言葉を零してしまったから、僕は誤魔化すようにお茶を飲んだ。雨彦さんは何も言わない。僕が喋り出せば真剣に聞いてくれるんだろうし、僕が黙っていたら聞かないでいてくれるんだろう。
    「……大したことじゃないんだけどねー」
     人にぶつかって無視された、って言葉にしたら本当に大したことじゃない。ただ何回も同じように無視されたからちょっと嫌だっただけで、口にしたらだいぶどうでもよくなった。雨彦さんは笑いも怒りもせずに「災難だったな」とだけ言った。だから、なんだか良くない日はこれで終わりのはずだった。
     会話が他愛のないものに移ってから数分もしたころ、事務所の扉が開いて聞き慣れた声がした。深い海のような声はいつだって海を想わせる人を連れてくる。優しいはずの声は、言った。
    「おはようございます。おや、雨彦一人ですか」
    「……古論?」
     クリスさんは雨彦さんを見て少しだけ心配そうに言葉を続ける。その様子に嘘や悪意は見えない。
    「想楽もそろそろ大学が終わることだと思ったのですが。この時間まで来ないのは珍しいですね」
    「……ちょっとー、クリスさん。らしくない冗談は、」
     クリスさんの声とは逆に僕の声は震えていたかもしれない。不安を振り切るように少しだけ強い語気で投げかけようとした言葉は平坦な声に遮られた。
    「……ああ、なにかわからないことがあって教授に聞いているとか、そんなところだろう」
    「え? 雨彦さん……?」
    「わからなかったんだ」
     クリスさんじゃなくて僕のことを一瞬だけ見て、わからなかったって、雨彦さんはそう言った。わからなかったって、なんのことなんだろう。
     クリスさんは雨彦さんの言葉に疑問を持たずに僕のいる席に向かってくる。一度だけ「この湯呑みは?」と聞いてくれたのに、こともあろうに雨彦さんは「さっきまで山村がいたんだ」なんて言い出す始末だ。雨彦さんは今、僕をいないものとして扱っている。
     僕を無視してソファーに腰掛けようとするクリスさんを止めようとして、僕のことなんて見えてない様子のクリスさんとぶつかってしまう。良くない日、ってフレーズがぽこん、って脳内に浮き上がった。クリスさんは一度だけ不思議そうな顔をした。
     僕は逃げるようにしてクリスさんとは反対側に進んだ。そうして少し離れて──窓を見て、気がつく。
     僕が、窓に映っていない。
     ぴこん、とスマホがなった。雨彦さんが僕にメッセージを送ってきている。
    『すまん、気が付かなかった』
    「……は?」
    『きっと俺以外に見えてない』
     雨彦さんはもう僕の方を見ずにクリスさんと談笑なんかしてる。なんて薄情な男だろう。とはいえここでクリスさんを無視するわけにはいかないし、今日の僕はクリスさんには出会えない。雨彦さんを待ちたいけれど、透明な人間ってどこで時間を潰せばいいんだろう。
     とりあえず、今日は事務所に行けないとグループトークにLINKを送る。目の前で、雨彦さんとクリスさんのスマホから『ぴこん』とマヌケな音が鳴った。
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    85_yako_p

    DONEかなり捏造多めなタケ漣です。自分の知らない一面をなかなか信じたくないタケルの話。猫が死んでます。タケ漣とするか迷いましたが、タケ漣でしょう。(2024/10/12)
    野良猫の憂鬱 予感がした。それだけの単純であやふやな理由で俺はわざわざ上着を羽織って夜に踏み出した。目的地なんてあるはずもないのに、足は路地裏に向かっていた。
     歩けば歩くほど無意味に思える時間に「明日は朝から雨が降りそうだから、アイツを家に入れてやらないと」と理由をくっつければ、それはあっさりと馴染んでくれた。そうだ、俺はアイツを探しているんだ。訳のわからない予感なんかじゃなくて、でも愛とか同情でもなくて、この意味がわからない焦燥はアイツのためだ。
     明日が雨予報だってのは嘘じゃないけど、今夜は晴れていて月が綺麗だった。だからアイツがいたら一目でわかるはずだし、パッと探していなかったら今日は捕まらない。だから、と自分の中で線を引いてから路地裏を見ると、いつもチャンプが日向ぼっこをしているドラム缶の上にアイツがいた。片足をだらんと垂らして、片方の足はかかとをドラム缶のふちに乗せている。そうやって、何かを抱き抱えるように瞳を閉じている。
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