双子に関するショートショート 朝起きたら三つ子になっていた。一人増えただけって言っちゃえばそれまでなんだけど、18年間双子をやってきた身としては非常に困る。
増えた一人は落ち着いているけれど非常に居心地が悪そうだ。とりあえずは俺たちの家にいてもらっているけれど、食器も机もベッドも二つしかない。ならばせめて名前くらいはと『介』で終わる名前をいくつか考えてみたけれど、彼は『まぁ、一過性のものだから』と言い受け取ろうとしない。
彼について聞けば、双子の片割れを失ってからというもの……というよりは彼は失われた側、つまりは死者らしく、ふいに姿形が変わり双子のもとに現れてしまうようだ。
「悪霊みたいなものなんだ。紛れ込んで双子の片っ方に成り代わっちゃう、みたいな」
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