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    85_yako_p

    カプ入り乱れの雑多です。
    昔の話は解釈違いも記念にあげてます。
    作品全部に捏造があると思ってください。

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    タケ漣ワンドロ13「かお」(2019/08/18)

    ##タケ漣ワンドロ
    ##クロファン

    正反対の似た者同士 普段は豹のような男が子犬のように僕の顔を舐めている。鼻からこぼれている血だとか、切れた額から流れる血だとか、まぁ概ねほとんど血なんだけど、僕の顔を伝う液体が舌に絡め取られていく。
    「こんなに怪我しちまって……かわいい顔に痕が残らないといいな?」
    「ありがとファング。でもね、君が今掴んでる肩は刺されているし、多分だけどアバラも折れてるんだ。顔はいいからそっちを労ってほしいんだけど」
    「オレのクローにこんな傷つけやがって……」
     まったく人の話を聞かずにファングは僕の頬を撫でる。本当に君は僕の顔が好きだね。そう聞けばニヤニヤとした口調で返される。曰く、「カラダも好きだぜ?」
     ファングは僕が好き。僕もファングが好き。お互いのどこを好きかってのは少しずつズレているけど、まぁ、概ねうまくやっている、いわゆる普通の恋人同士。
     僕はファングが傷つくのが嫌い。だから、怪我をしたのが僕でよかったと思ってる。ファングはいつも自分から危険な場所に配置されるのを望むけど、今日みたいに裏をかかれて、僕の控える裏路地なんかが最前線になったりもする。そんな日もある。
     ファングとしては物足りない一日だっただろう。この男は生粋のマゾヒストだから、痛みがない日は退屈で、弄んでた鼠が死んじゃった時のネコみたいになってしまうのだ。ところが、戻ってきたら僕が怪我をしているもんだから、ファングの感情はグラグラと動かされている。
    「ファング、君が乗っかってる太ももにはさっき銃弾がかすったんだ。実は、顔よりもうんと痛かったりする」
    「なんてこった! 代わってやれるなら、代わってやりたいよ」
     ファングは僕が傷ついて悲しんでいる。流れる血を舐めて事実を確認して、修道女のように胸を痛めてみせる。生きててよかった、って柔らかく口にして、触れるだけの口吻をくれる。そうして僕を抱きしめて、何かに気がついたように肩を震わせてみせる。
    「……オマエが死んだら、オレはどうなっちまうんだろうなぁ」
     震える声、震えるカラダ。そして、目。僕はこの目を見るとゾクゾクするんだけど、そのゾクゾクっていうのはこの白いカラダを組み敷いた時みたいな快感に近い震えじゃなくて、戯れに転がした石の下にびっしりとついていた、名前がわからない大量の虫を見たときのそれに似ている。
    「……死ぬほど、気持ちいいんじゃないか?」
     ああ、本当にたちが悪くて歪んだ男。その目は、僕を失いことを想像してみせたその目は、欲望でギラギラと湿っているのだ。
     僕のことを自分のように愛しているこの男にとって、僕の負う傷はそのまま心の傷になる。残念なことに、この救いのないマゾヒストは心の傷すら快楽に捧げてしまうようで。
    「あーあ、僕はファングが汚されたらイライラするのにな」
     ぐり、と。痛む足で押し上げたファングの中心は少しだけ固くなっている。「クローくんのえっち」、だなんて笑っている、本当にサイテーな男。自分の片目を賭けたときも、失ったときも、興奮してたでしょ。僕は可愛らしくていいと思うけど、セブンは思いっきり引いてたからね。
    「楽しそうで何よりだよ……僕が生きてて、残念?」
     わかってて問いかける。
    「まさか。壊されちまったら壊せないからな」
     知ってるよ。君は大切なものは自分で台無しにしたいだろうからね。
    「ありがと。僕もファングが生きてて嬉しいよ」
     ファングは僕のもの。僕はファングのもの。僕らの共通見解。「自分のものを壊していいのは自分だけ」
     共通の感情を生み出すのは真反対の性的嗜好。このマゾヒストは一番の痛みがほしいだけ。僕のはたんなるサディズムだ。
    「……早いもの勝ちだね。僕が壊すか、壊されるか」
    「なんだよ、ゆっくり楽しもうぜ? おしまいまで、せいぜい長生きしようや」
    「君が生きててくれるならね。ま、どっちがどっちでもきっと楽しいさ」
     心からそう思ってる。君を終わらせるか、君で終わるか。どっちでもいいんだけど今はまだその時じゃないから、いい加減僕の上から降りてほしい。
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