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    85_yako_p

    カプ入り乱れの雑多です。
    昔の話は解釈違いも記念にあげてます。
    作品全部に捏造があると思ってください。

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    85_yako_p

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    タケ漣ワンドロ17「あせ」(2019/09/15)

    ##タケ漣ワンドロ
    ##タケ漣

    リベンジマッチ! 俺とコイツの間には一年と七センチの距離がある。
     一年を感じるときは少ないけど、七センチは何気にデカい。見つめる時に目線が上を向く。キスをする時つま先立ちになる。抱き合うと唇が首筋に埋まる。そして、今、とか。
     今、俺の脳裏にはどうでもいい疑問と少しの苛立ちがあった。熱帯夜って、どれくらいの気温からそう呼ぶんだっけ。知らないけど、きっと今日みたいな日を熱帯夜って呼ぶんだ。何もしなくても汗が吹き出てくるのに、俺は思い切り背伸びをして、同じように背伸びしたコイツが天井に向けて伸ばす腕からエアコンのリモコンを奪おうと躍起になっている。触れ合った部分の汗がくっつきあって、ますます暑い。コイツ、どういうつもりなんだろう。暑さで耳まで真っ赤だってのに。


     何回かに一回か、そういう夜がある。今日はたまたまそういう日で、俺は消えそうな声で問いかける。
    「……俺はそういう気分だけど……オマエは?」
     最初はどういう気分なのかと返されて困り果ててしまった質問は、まっすぐに意味が伝わるほど使い古された。コイツは短く同意して、足音を変えずに歩く。「ゴムは?」「まだある」。月が見ていた会話はそれだけ。
     帰宅したら真っ先にアイツがリモコンに手を伸ばす。いつものことだと冷風が部屋を満たすのを待ったが、アイツはボタンを押そうとしない。沈黙、こもった熱。開くに開けない窓、朱に染まる皮膚、俺の手元にやってこないリモコン。答えの返ってこない疑問と、熱。そうして、徐々に問いかけは文句に変わって、冒頭へ。
    「暑い」
    「そーだな」
     どうやらコイツはコイツで暑いらしい。じゃあなんでその手元のボタンを押さないんだろう。理由はわからない。疑問には一律の返答。「うるせえ」
     最近コイツに近づいた気になっていたけど、わからないときのコイツはとことんわからない。呆れか暑さか、少しの頭痛を覚えた俺にコイツは言う。
    「おら、やんだろ? とっととやるぞ」
    「はぁ!?」
     コイツ、バカなのか? いや、コイツはバカなんだけど、暑さでおかしくなったんだろうか。
    「こんな暑いなかでやれるわけないだろ! 死ぬぞ!?」
    「うるせー! いいからやるぞ!」
     やれるわけがない。コイツ、ニュースとか見てないのか。この暑さは命に関わる。俺はセックスで死にたくない。
    「やるならクーラーをつけろ……っ!」
     ちょうどコイツの後ろにはベッドがあったから、少し距離を取った後思い切りタックルしてやる。離れたことで油断したコイツは思い切り後ろに倒れ込んだが、リモコンは離さない。何が悲しくてこんな暑い部屋で取っ組み合いをしなくちゃならないんだ。
    「なんなんだよオマエ……いいからリモコンよこせ……!」
    「ぜってー……いやだ……っ!」
    「なん……っで……」
     月の見守る帰り道、期待していた肉体的接触はこんなんじゃなかったはずだ。俺たちはクーラーの効いた部屋で、触れ合って、キスをして、抱き合って、そして……ああ、考えるだけで現実とのギャップにめまいがしてくる。
     暑さでぼんやりしてきたが、それはコイツもおんなじだ。一瞬の隙をついてリモコンを奪い取る。ボタンを押そうとする俺の手をコイツの手が弾く。からん、って床をリモコンが滑る。追いかけようとする俺に抱きついて、コイツが言う。
    「おい! つけたら特訓にならねえだろ!」
    「……は?」
     しまった、って顔をコイツはした。問い詰める権利が、汗だくの俺にはあるはずだ。


     話を聞いてみれば、発端は数日前に行ったサウナでの出来事だった。
     まあ、案の定コイツはサウナで勝負だと言い出したわけだが、一番最初にダウンしたのもコイツだった。脱衣場のベンチでのびながら、俺と円城寺さんにリベンジを誓っていたらしい。
     そこで、特訓だ。コイツは言葉では否定するが、こういうところで地道な努力をいとわない。でも、なんかズレてるんだよな。サウナの特訓なら、サウナでやればいいのに。一人でサウナに行って、倒れられても困るけど。
     コイツは蒸し暑い場所を探したんだろう。事務所はダメ、レッスン室もダメ、円城寺さんの家も、ダメ。俺の家だってクーラーは効いてるけど、リモコンを奪えばいいとでも思ったんだろう。それと、やっぱりバカなんだよな。俺の家だと、その、汗をかくようなことができるから。
     なんかくらくらするとことか、ぼーっとするとことか、ふわふわするとことか、似てるし。そう言うコイツに内心、勘弁してくれよと呟く。これからコイツとサウナに入るたび、染まった皮膚を見る度にこんなことを思い出してしまったらどうしてくれる。これは、早めに忘れようと思う。
     しかし、果てしないバカだなコイツ。
    「果てしないバカだなオマエ」
     思ったことをそのまま口に出せば、コイツはリモコンを弄んでいた手を止めて噛み付いてくる。しばらく不毛な時間を過ごした俺は言う。
    「とにかく、やるならクーラーつけるぞ」
     やらなくてもつけるけど、リモコンを奪い取るのは手間なのでコイツがおとなしくつけてくれるのが一番いい。
    「……やるのか? やらないのか?」
    「…………チビが泣いて頼むなら」
     やってやるよ、って。アイツの白い指が電源ボタンを押した。
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    85_yako_p

    DONEかなり捏造多めなタケ漣です。自分の知らない一面をなかなか信じたくないタケルの話。猫が死んでます。タケ漣とするか迷いましたが、タケ漣でしょう。(2024/10/12)
    野良猫の憂鬱 予感がした。それだけの単純であやふやな理由で俺はわざわざ上着を羽織って夜に踏み出した。目的地なんてあるはずもないのに、足は路地裏に向かっていた。
     歩けば歩くほど無意味に思える時間に「明日は朝から雨が降りそうだから、アイツを家に入れてやらないと」と理由をくっつければ、それはあっさりと馴染んでくれた。そうだ、俺はアイツを探しているんだ。訳のわからない予感なんかじゃなくて、でも愛とか同情でもなくて、この意味がわからない焦燥はアイツのためだ。
     明日が雨予報だってのは嘘じゃないけど、今夜は晴れていて月が綺麗だった。だからアイツがいたら一目でわかるはずだし、パッと探していなかったら今日は捕まらない。だから、と自分の中で線を引いてから路地裏を見ると、いつもチャンプが日向ぼっこをしているドラム缶の上にアイツがいた。片足をだらんと垂らして、片方の足はかかとをドラム缶のふちに乗せている。そうやって、何かを抱き抱えるように瞳を閉じている。
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