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    85_yako_p

    カプ入り乱れの雑多です。
    昔の話は解釈違いも記念にあげてます。
    作品全部に捏造があると思ってください。

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    85_yako_p

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    タケ漣ワンドロ52「あか」
    捏造しかないクロファンです。(2020/07/26)

    ##タケ漣ワンドロ
    ##クロファン

    あしたにはさよなら クローがナンバー持ちになるそうだ。アイツとしては念願が叶うということなのだが、オレは複雑な気分でもある。実のところ、アイツの願いはオレと一緒にいることであって、ナンバー持ちというのは手段だからだ。
     まあ、ナンバー持ちには条件がある。誰もがみんな通る道だ。単純に、目を弄る。それだけ。
     弄られた目は赤くなって、みんなで仲良くお揃いって寸法だ。これを『家族』の証と言うから笑わせる。まっとうな家族があるやつはこんな仕事してねえよ。寄せ集めのガラクタでもう意味なんてなくなる単語に縋っているのは滑稽を通り越して哀れだ。まあ、ここにマトモなやつはいねえから、オレが憐れむ男は一人しかいない。
     で、クローも目を弄くられてオレとおそろいになるわけだが、それはナンバー持ちになる最終試験と言ってもいいだろう。オレも経験したくだらねえ試験──目を弄られると、数日は世界が真っ赤に見えるって言うくだらねえ現象だ。ここで発狂なんてしようものなら人生単位の落第だが、ここまで残るやつで気の触れたやつは見たことがない。だって、どうせもう狂ってるんだ。いまさら狂いようもない。
     
     赤い世界からは逃げられない。だったらどこにいたって変わらない。何をしてたって構わない。基本的な雑務は任されるが、あとはもうベッドでゴロゴロしててもポップコーンを食べてもセックスをしててもいい。まぁ、外で発狂されると厄介だから、この巨大な隠れ家から出てはいけないけれど。
     クローはずっと部屋にいた。だからオレは甲斐甲斐しく世話を焼いてやることにした。クローが望んだからだ。
     別に、誰かに助けてもらったっていいんだ。いや、むしろ誰かといることはリスクだ。ソイツがいきなり血に染まるんだから、気分の悪さは加速する。それでもクローはオレと一緒にいることを選んでいた。
    「ファング、ジュース飲みたい」
     子猫のような甘ったるい声を出してオレに甘える、布団をかぶった小さなこども。コイツが猫なら喉がくるると鳴っていただろう。その姿はなかなか見られない、珍しいものだった。
     クローが甘えてくること自体は珍しいことではない。ただ、いつもの甘え方はこれとは異なる。具体的に言うと、コイツが甘えてくるのは性交渉のあるときだけだ。クローは自分が大人だと言って、オレとは対等であろうとした。だから、甘えるために、と精一杯考えた結果が現状なんだろう。クローは真剣で、オレは貞操観念がなかったから軽々しくオーケーしちまった。その結果がこのザマだ。何度か抱かれたが態度を変えないオレにがっかりしたかと訪ねたが、クローがめげることはなかった。
    「チョコをとってよ。マシュマロじゃないよ。ああ、どれもこれも真っ赤で、区別がつかないんだ」
     チョコなんざ普段は食べないくせに。お菓子が食べたいと言うから手当り次第買ってきてやったらこれだ。あーんと口を開けて、ひな鳥よろしくオレの指先を待っている。オレは指先でチョコレートをつまみ上げ、溶けないうちに口元に運んでやった。
    「うまいか?」
    「うん。でも、まだそばにいてね。ファングがいないと困るんだ」
    「そうか。でも、大好きなオレが真っ赤なのは辛くないのか?」
    「ファングは何色でも大好きだよ。虹色に光ってみせたって、世界で一番好きなのはファングだ」
    「そりゃどーも」
     今度はジェリービーンズがほしいとだたをこねるクロー。オレは知っている。コイツは嘘を吐いている。
     ナンバー持ちにならないと知らないことなんだ。本当にくだらないことだけど、コイツが知らなくてオレが知ってることなんていくらでもある。
     異常な世界から戻ってきた時、その赤い目にはもとの目の色が少し光る。クローの赤い目にはうっすらとした青。つまり、クローの世界は正常だ。コイツはもうなにもかも元通りになったくせに、真っ赤な世界が終わっていないと嘘を吐いているのだ。
     オレに、こうやって子供のように甘えるためだけに。
     別に怒ってない。嘘なんて吐いてなんぼだ。組織にまで嘘を吐いてるのはちょっとハラハラするけど、まぁ大丈夫だろう。それよりも、こんなくだらない嘘でオレに甘えてみせるクローはかわいい。かわいくて、愚かで、笑えて、どこか辛い。それに同情までもが絡まって、よくわかんなくなる。こういうの、恋人にへの感情として正解なのかはわからない。いや、恋人というかセフレなんだけど。
     だって、友達にはなれない。家族なんて言葉は反吐が出る。同僚だと嫌なんだと。だったら願われるまま、からだをつなげてやるのがたったひとつできることだと思うじゃねえか。
    「クロー」
    「なに?」
    「…………別に、いつだってチョコレートくらいとってやるよ。リンゴだって剥いてやる」
     本心にさっきのよくわからない気持ちが絡みついて口から吐き出された。
    「……どうしたの? ファング」
    「気まぐれだけど、思ったんだよ。……セックスしなくても、こうやって甘えていいんだ」
     これはクローの弱さじゃない。オレの弱みになるものだ。気まぐれなのもわかってる。それなのに、与えてしまったのはなぜだろう。
     でも、クローはこれを受け取るようなやつじゃなかった。
    「いつもは嫌だ。子供じゃないんだから」
     そうだった。コイツが執心しているのはここだった。きっと甘えたい気持ちに嘘はないだろう。でも、それよりも強い望みがクローにはある。
     きっとコイツはオレと対等いたいんだ。特別で、ありたいんだ。
     クローはバカだ。クローにとってセックスは大人の証明であり、オレと並び立てる手段なんだろう。コイツはオレの特別になるために、大人になるしかなかったんだ。
     吐き出されたため息には呆れしかのっかっていなかった。それなのに、クローは笑う。まるで、オレになにか重大な欠落があるかのように。
    「……ファングは勘違いしてる。僕は特別になりたいからセックスしたいんじゃない。ファングが特別だから、好きだからセックスしたいんだ。……ねえ、ファングには、難しい?」
    「は?」
     なにが違うのかよくわからないが、オレの考えを否定されたのはわかる。でも、クローのこういう、人の心を土足で踏みにじって飾られた家宝のツボを粉々に叩き割った挙げ句冷蔵庫のケーキを無断で食べていくようなとこどは嫌いじゃない。
    「別に難しくねえよ。でも、それだとオレを特別に思ってる人間が何人いるんだって話だ」
    「そういうやつとは気持ちが違うんだ。愛のないセックスと一緒にしないでくれないか」
    「愛してるってみんな言うぜ?」
    「じゃあ全員殺す。これで特別は僕だけだ」
    「どいつもこいつも殺していいわけじゃないからな? 生かしとかなきゃならねえ情報源もいるんだ……頼むから間違えるなよ……っと」
     ふいに腕を取られ、布団の中にひきずりこまれそうになる。
    「……なんだよ。やりたくなったか?」
    「ううん。今日はただ一緒に寝ててほしいんだ」
     世界が赤いんだ。まだコイツは嘘を吐く。バレてないと思って、嘘を吐く。
    「抱きしめていて」
     朝までずっとそうしていて。甘える子猫の声で言う。
    「ああ、世界が赤いとこわいもんな……でも大丈夫。きっと明日にはオマエの目も治ってるよ」
     こんなクローも見納めなのかもしれない。今日くらい、子供扱いしてもいい。いや、ずっと子供でいてくれたっていい。それなのに。
    「うん……だから、今日だけ」
     おやすみ。
     きっと、こんな穏やかな夜は二度とこない。額に触れるだけの口付けを落とし、オレもそっと布団に入った。抱きしめたからだはまだまだ小さくて、コイツが明日には捨てようとしている『子供』を腕に閉じ込めるようにして目を閉じた。
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    Replies from the creator

    85_yako_p

    DONEかなり捏造多めなタケ漣です。自分の知らない一面をなかなか信じたくないタケルの話。猫が死んでます。タケ漣とするか迷いましたが、タケ漣でしょう。(2024/10/12)
    野良猫の憂鬱 予感がした。それだけの単純であやふやな理由で俺はわざわざ上着を羽織って夜に踏み出した。目的地なんてあるはずもないのに、足は路地裏に向かっていた。
     歩けば歩くほど無意味に思える時間に「明日は朝から雨が降りそうだから、アイツを家に入れてやらないと」と理由をくっつければ、それはあっさりと馴染んでくれた。そうだ、俺はアイツを探しているんだ。訳のわからない予感なんかじゃなくて、でも愛とか同情でもなくて、この意味がわからない焦燥はアイツのためだ。
     明日が雨予報だってのは嘘じゃないけど、今夜は晴れていて月が綺麗だった。だからアイツがいたら一目でわかるはずだし、パッと探していなかったら今日は捕まらない。だから、と自分の中で線を引いてから路地裏を見ると、いつもチャンプが日向ぼっこをしているドラム缶の上にアイツがいた。片足をだらんと垂らして、片方の足はかかとをドラム缶のふちに乗せている。そうやって、何かを抱き抱えるように瞳を閉じている。
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