不完全犯罪「High×Jokerのみんなと、ゲーム?」
「はい。隼人がよかったらって」
High×Jokerのみんなと僕たち三人、それと、アマミネくんがよくゲームをするっていう大河くん。九人もいると多すぎないかと思ったけれど、これくらいがちょうどいい人数らしい。
「どんなゲームなんだ?」
「ええと、ウインクキラーって名前のゲームなんですけど……」
まずはランダムで犯人と共犯者が決まる。残りの人は市民と呼ばれ、犯人を特定すれば市民の勝ちだ。ゲームを開始したら全員で輪になって談笑をするのだが、その時に犯人や共犯者にウインクされた人間は数秒後に死んでいまい、脱落。全員が脱落するまえに犯人を見つけなければならないが、犯人の告発にもルールがあって──。
内容を聞いたがイマイチぴんとこない。その不安を伝えればやりながら覚えれば問題ないだろうとマユミくんが返してくれる。少し緊張するけど楽しみだったし、アマミネくんもマユミくんもやる気に満ちていた。
「絶対負けませんからね」
「俺もそのつもりだ。やるからには勝つ」
「ふふ。それなら僕だって頑張っちゃう」
ランダムに役割が決まる以上、アマミネくんとマユミくんが味方になるとは限らない。僕たちはスポーツマンシップに則って、正々堂々戦うことを誓い合った。
のに。
「……マユミくん……あのさぁ…………」
「…………本当にすまない、百々人」
耳まで真っ赤になっているマユミくんに不満をもらせば、伊瀬谷くんが無邪気に笑う。
「いやー、鋭心っちって百々人っちのこと大好きっすね!」
ゲームを開始して二時間弱。僕が犯人になったのは今回で四回目。そして、僕が犯人だとすぐにバレたのも四回目だ。
「……マユミくんが赤くなるから、僕が犯人だってすぐバレる……」
「……本当にすまない。わざとではないんだ……」
消え入りそうな苦情と消え入りそうな謝罪。そして突き刺さるあたたかい視線。
「……えっと、その、僕たちは……その……」
「……いや、アイドル活動に支障がなければ、いいんじゃないですか?」
「マジレスやめてよ冬美くん……」
「ま、まぁ、見ててそんな感じはしたから、うん。大丈夫」
「そうそう! だろうなーって思ってたし!」
なにが大丈夫なんだろう。若里くんと秋山くんのフォローが申し訳ない。丁重に扱われる僕とマユミくんに、アマミネくんがトドメを刺した。
「鋭心先輩……百々人先輩のこと、好きすぎません?」
僕ら二人は黙るしかない。そう、僕も知らなかったんだけれど、こっそりとおつきあいさせていただいている眉見鋭心という人は、思ったよりも僕のことが好きみたいだ。
「でもこれではゲームになりませんね。百々人さんが鋭心さんにウインクをしただけで、こんなに赤くなってしまうとなると……」
「すぐ……わかっちゃう……」
そう。僕が犯人になったときに判明した事実。僕にウインクされたマユミくんは、耳まで真っ赤になってしまう。
「……鋭心さんを後回しにしたらいいんじゃないか?」
大河くんが真剣に対策を練るが、それは僕だって考えた。それでもできない理由がある。
「後回しは無理かな……マユミくん、よく僕のこと見てるから……後回しにして他の人にウインクしたら絶対にバレちゃうと思う……」
「ああー…………」
「すまない……つい視線がいってしまって……」
「いいよ……もう……」
マユミくんの肩をぺちりと叩く。まぁ、ぴぃちゃんが選んだ人たちなら大丈夫かな。
マユミくんとアイコンタクトをしてみんなにおつきあいしていることを打ち明けたが、さほど驚かれもせずに受け入れられてしまう。つまり、僕らが好きあっているのは思ったよりも筒抜けだったらしくって。
「……めちゃくちゃ恥ずかしい……」
「……俺もだ……」
「いや、マユミくんのせいだからね?」
マユミくんのせいで僕は四連敗。仕方がないから愛しい恋人が勝利するのを祈っていよう。願いもむなしく、優勝は若里くんがかっさらっていった。