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    85_yako_p

    カプ入り乱れの雑多です。
    昔の話は解釈違いも記念にあげてます。
    作品全部に捏造があると思ってください。

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    85_yako_p

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    ルミネセンスのウォリアサ(鋭百)です。
    シューターが年下の上官。名前はアイドルと同じ。暴力と血の描写があります。(22/11/17)

    ##鋭百
    ##ウォリアサ

    恋愛フラグ・戦場にて「モモヒトさんは友達いませんよね?」
    「はぁ?」
     シュウの言葉にモモヒトは不機嫌とも無気力とも取れる声を返す。モモヒトに友人がいないことは本人も他人も知っていることだからそれ自体に怒りはないのだが、断定的な物言いが彼の機嫌を少しだけ悪くした。
    「だからなに? キミが友達にでもなってくれるの?」
     友人など不要なくせにモモヒトはつまらなそうに笑って吐き捨てた。その言葉のひとつも意に介さずにシュウは続ける。
    「モモヒトさんに友達がいないと都合がいいんですよ。……そしてアンタは天涯孤独。そんで恋人もいない。ここまで間違いはないですね?」
    「……その通りだし隠すことでもないけどさ。キミに都合がいいのは面白くない」
     友人は不要。それは厭世的なシニカルだとかモラトリアムの感傷がもたらすものではなく、彼が長くも短くもない人生を生きた上での結論だ。
    「安心してください。俺だって都合がいいだけで面白くもなんともないので」
     むしろアンタが楽しめることですよ。そう言ってシュウは電子タブレットを手に取った。
    「まぁ、楽しくなかったら期待外れってことで。アンタみたいな人間じゃないと任せられない任務があるんです」
    「へぇ……?」
    「これを見てください」
     シュウが手にしたタブレットを起動させる。表示された地図に座標を打ち込めば、そこには見覚えのない空間が映し出された。
    「名称は……興味ないですよね。ここは次の制圧目標なんですけど……住み着いてるエネミーが厄介なやつなんです」
    「ふーん。で、戦えるの?」
    「むしろ戦ってほしいんですよ。……コイツらは俺でも……エイシンさんでもきっと苦戦するんで」
     だからアンタ頼りです。苦虫を噛み潰したようなシュウの表情は、モモヒトを軸に作戦を考えるのが嫌だと露骨に語っていた。度重なる命令無視、違反行為。本人は自分の享楽における暴力を優先しているだけで、悪意がないのが余計にたちが悪い。
    「強いんだ。マユミくんが苦戦するのは面白いね」
     スナイパーかな。そう呟いてモモヒトは笑った。スナイパーごときでエイシンを止められないことなんて、この組織に属している大抵の人間は知っていることだ。
    「コイツら、化けるんです。空間に入った人間の脳をスキャンして、その人が大切に思っている人間に姿を変える。変えるっていうか、そういう風に見せるんですよ」
    「……それ、別にキミでもよくない? キミだって友達いないじゃん」
     恋人もいないでしょ。モモヒトの言葉を聞いたシュウは顔色ひとつ変えず淡々と喋る。
    「敵が多いだけで俺には親友がいますよ。それに、俺は意外とおじいちゃんっ子です」
    「知らないよ。……てか、マユミくんこそ友達も恋人もいないでしょ」
    「そうだと思って声をかけたんですけど……」
    「わぁ、度胸あるね」
    「別に聞いただけじゃ怒らないでしょ。……なんと、彼は生粋のおばあちゃんっ子だそうです」
    「マジかぁ」
     それなら里帰りくらいしたらいいのに。モモヒトのぼやきにシュウは律儀に返す。エイシンの祖母は故人だ、と。
    「脳のスキャンですからね、思い出も読みとられるから死人もなんでもありですよ。……なんなら、死人のほうが辛いんじゃないですか?」
    「そう? マユミくんなら大丈夫だと思うけどなぁ」
    「大丈夫だと思いますよ。でも、もっと大丈夫な人がいるんです。適材適所ですよ」
     明日までに詳細を送るので確認しておいてください。そう言ってシュウは執務室に戻る。モモヒトは訪れた戦闘の機会に胸を躍らせながら、軽い足取りでトレーニングルームへと向かった。

    ***

    「なんでキミが一緒なのさ」
    「お前が万が一行動不能になったときのためだ。それに俺は作戦に参加できると言っていた……勝手に戦闘から外したのはシュウの一存だ」
     適材適所。そうモモヒトが呟けばエイシンはため息を吐いた。
     なんで、とは言ったものの、モモヒトにもエイシンにもこの二人でチームを組まされることは想像していた。モモヒトが行動不能になったとき──もとい、制御不能になったときはモモヒト以上の戦闘能力を持った人間が必要となる。モモヒトを制圧できる人間は多くない。だからモモヒトはエイシンと同じチームにいるし、シュウの管轄下で飼われている。
     心地よいわけではないが、仲良く会話をするよりは幾分かマシな沈黙を続けていると目的地についた。トレーニングルームよりも少しだけ広い空間に、人間に成りきれないデッサン人形のような影が数体、なんの意味も規則性もなく彷徨っていた。
    「……マユミくん、顔色が悪いね」
     興味がなさそうにモモヒトは言う。
    「……死んだ祖母が何人もいるように見えるんだ。当たり前だろう」
     いくつもの影が、エイシンには祖母に見えていた。
    「……確かにシュウが俺を戦闘要員から外したのは正解かもしれないな。お前が行動不能にならない限り、俺は戦いたくない」
    「へぇ、戦闘狂のキミが珍しい」
    「戦闘を楽しんでいるのはお前だろう」
    「お互い様だよ。……へぇ、じゃあ僕って本当に友達いないんだね。変な影にしか見えな……っ!?」
     呑気に影を眺めていたモモヒトが息を飲む。影に──エイシンから見たら祖母に釘付けになるモモヒトの呼吸が徐々にあがっていた。
    「……モモヒト? まさか、お前も……?」
     瞳孔の開ききった薄紫の瞳が揺れている。まずい、とエイシンが舌打ちをした。
    「すごい……僕にも、好きな人がいたんだ……」
     その言葉でエイシンは確信した。モモヒトにも、影が『誰か』に見えている。
    「想定外の事態だ。戻るぞ。……聞こえているか、モモヒト」
    「ああ……ねぇ、マユミくん」
    「どうした」
    「僕、キミが見える。キミがね、何人もいるんだ」
    「……は?」
     モモヒトはエイシンが見えると言った。そして、好きな人がいる、とも。
     それは告白と同じだ。恋か愛はわからないが、この人間に興味のなさそうな男が自分を好きな人だと言っている。エイシンは多少驚いたが、それが作戦に支障をきたすと判断してモモヒトの肩を掴む。
    「戻るぞ。失礼な話だが、お前にも幻覚が見えるとは思っていなかった。……親しい人間の姿をした敵には判断が鈍る。作戦を立て直すぞ」
     この場にいる誰よりも強いはずの人間が苦い顔で撤退を指示する。その様を見て、モモヒトは興奮を滲ませて笑っていた。
    「どうして帰らなきゃならないのさ」
     爛々と、瞳が輝いている。オーバーヒートだ。この状況でモモヒトはリミッターを解除しようとしている。
    「モモヒトっ……」
    「キミとやりあえるんだ……キミと殺し合いできるんだよ!? あははっ!」
     刹那、モモヒトは影の真ん中に躍り出た。一斉に反応した影が敵対行動を取る。いや、取ろうとした瞬間に、影の一体は首を裂かれていた。とことん精神を追いつめるためにプログラムされているのだろう。過剰なまでの血液が飛び散り、耳を塞いでも無駄だと言わんばかりの断末魔が響いた。
    「うっ……」
     エイシンの目には喉を裂かれ倒れ伏す祖母が映っている。エイシンの耳には祖母の悲鳴がこびりついた。その悲鳴に隠れて、狂気じみたモモヒトの笑い声が聞こえてきた。
    「楽しい! 楽しいね! マユミくん!」
     モモヒトは影の腕を取ると曲がるはずのない方向に曲げた。オーバーヒートで身体能力を限界まであげたモモヒトはそのまま影を地面に叩きつけ、そのままかかとで頭を潰す。熟れすぎたトマトに麺棒を叩きつけたように、真っ赤な飛沫が舞い散った。
    「ぅ……え……」
    「あはは! ねぇ、僕さぁ! ずっとこうしてマユミくんを遊びたかったんだ!」
     祖母が何人も次々と惨殺されていくのを目の当たりにしているエイシンだが、作戦行動中である以上はその惨状から目を逸らすことは許されない。重くなった息を吸って、吐く。そんなことをしている間に、祖母の足が、腕が、飛んだ。
     このままいけば制圧は容易だ。精神的に削られるが問題はない。そうエイシンが考えた瞬間、モモヒトの表情が変わった。
    「あはは…………はぁ。……なんか、つまんなくなってきた」
     急にモモヒトの動きが止まった。だらりと脱力し、瞳の熱は冷めている。オーバーヒートが解除されていた。
    「……なんか、醒めちゃった」
    「おい! モモヒト、」
    「弱いマユミくんに興味なんてない」
     そう言ってモモヒトは距離を取った。オーバーヒートは解除したときの反動も大きい。身体的な負担が一気にかかったのだろう、距離を取って、チャクラムで戦う気だ。
     影はあと二体いた。接近してくる影に牽制のようにチャクラムを投げて足下に爆薬を転がす。反応の遅れた一体は左の下半身が吹き飛んだが、うまくよけた影がモモヒトに肉薄する。
    「っ……!」
     モモヒトが距離を取る前に影が殴りかかる。咄嗟に腕でガードするも、影も弱くはないのだろう。ガードしたモモヒトの手から、チャクラムが落ちた。
    「モモヒト!」
     こうなれば、もう見た目が祖母だなどは戦わない理由にならない。エイシンが刀を取ろうとした瞬間、モモヒトが自らチャクラムを蹴り自分から遠ざけた。それを合図にしたわけではないだろうが、影の口が開く。
    「……エイシン?」
     ぞわ、とエイシンの背筋が粟立つ。報告にはなかったが、影は音声まで記憶から掘り出すのか。なら、今モモヒトは俺の声を聴いたのか。
     一瞬の出来事だった。モモヒトが勢いよく手を動かせば、チャクラムについていたピアノ線が思い切り引かれる。モモヒトの元に勢いよく戻ってきたチャクラムが、背後から影のからだを裂いた。
     断末魔が響きわたる。その人間が愛おしいと思う、その人間の声が。
     あとはもうゴミ掃除みたいなものだ。下半身が吹き飛んだ影に近づいたモモヒトはチャクラムを手にとってその喉を裂いた。大げさな血液が飛び散って、戦いが終わる。
    「……つまんな……」
    「モモヒト、怪我は……」
    「あるわけないじゃん。見てたでしょ? ……それとも、大好きなおばあちゃんが殺されるところは見てられなかった?」
     エイシンが咄嗟に反論出来なかったのは、偽物であるとわかっていても祖母の死に思ったよりダメージを受けていたからだ。エイシンが口を開く前に、モモヒトが独り言のようにぼやく。
    「一瞬ハイになれたけど……ダメ。あんなのつまんない。……マユミくんの見た目をしてればいいってもんじゃない……」
    「……俺を嬲れて楽しかったんじゃないのか?」
    「はぁ? 人を変態みたいに言わないで。……別に、キミをいじめたいと思ったことなんてない」
     本気のキミと戦いたいだけ。そう言ってモモヒトは背を向けてしまった。エイシンは任務完了の報告を入れて後を追う。
    「おい、モモヒト……」
    「……でも、少し面白かったかも」
     振り向いたモモヒトは、少しだけ柔らかく微笑んでいた。
    「僕は、キミが好きなんだね」
     初めて知った。そうモモヒトは呟いた。

    ***

    「モモヒトは俺が一番好きなようだ」
    「みたいですね」
    「俺の幻覚を見たと」
    「その報告、不要なんで書面からは削除しときました」
    「告白まがいのことをされた」
    「はぁ……」
     医務室にはエイシンとシュウがいた。帰還後、エイシンの様子がおかしかったので彼が想定よりもショッキングな映像を見たと判断したシュウがバイタルチェックのために引っ張ってきたからだ。詳細な結果が出るまでと座らされた椅子に腰掛けて、エイシンがぽつぽつと話しだす。
    「……俺はモモヒトのことが好きなのかもしれない」
    「はぁ? ……はぁ」
    「好きだと言われたとき、嫌ではなかったんだ。なぜか……少しだけドキドキした」
    「それは、えっと……吊り橋効果では?」
    「俺は、モモヒトが好きなんだろうか」
     聞いてないし。シュウはため息を吐く前に口にした。
    「なら、同じエネミーが出たら任務に駆り出して戦わせますよ。そこで影がモモヒトさんになったら……そういうことでいいんじゃないですか?」
     そんな目一杯の皮肉に対して、エイシンは素直な瞳で一言「助かる」とだけ言った。社内恋愛に関しての規則はあっただろうかとシュウは思考を巡らせる。
    「めんどくさすぎる……」
    「ん?」
    「なんでもないですよ」
     お似合いだと思います。本心から投げやりに口にすれば、エイシンはいつもの顔で「そうか」と言った。
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