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    85_yako_p

    カプ入り乱れの雑多です。
    昔の話は解釈違いも記念にあげてます。
    作品全部に捏造があると思ってください。

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    タケ漣ワンドロ32「ひる」(2020年のどっか)
    ワンドロ本を作るときの書き下ろしです。クロファン。昼夜逆転。

    ##タケ漣
    ##タケ漣ワンドロ
    ##クロファン
    ##web再録

    大迷惑 最近、昼と夜がひっくり返ってる。おはようと笑うのは三日月で、眠るつもりかと太陽が責め立てる、そんな日々だ。
     何も不摂生というわけじゃなく、これはれっきとした任務なのだ。僕とファングは夜に起きて朝に眠る。仕事場が不夜城なので致し方ない。
     僕はデキる男なので文句は言わない。ファングも行きつけのハンバーガーが食べれないこと以外は気にしていないようだ。どこかで聞いた通り、配られたカードで勝負するしかないのさ。だから当然、逆転した生活にも楽しみを見いださなければならない。退屈はファングの瞳を殺していくので、定期的に刺激を与えないとならないんだ──死んだ目のファングも、それはそれで色っぽいんだけど。
     まず僕たちは起きてすぐに星を見た。僕はそれなりに予習をして星座の名前やロマンチックな逸話とかを仕入れてきたのに、ファングはものの五分で飽きた。ファングが僕の話を聞かないなら僕だって飽きる。あんな遠くの光に価値なんてない。ファングと一緒に笑えないものは総じてガラクタだ。結局星は朝のニュースの代打にもならないと知った。星を見ながら食べるシリアルはちょっとロマンチックだと思っていたのに。
     次に、眠る前に早朝の公園を散歩した。これはなかなかよかった。澄み切った空気のなかで誰も居ない遊具を占拠するのはそれなりに楽しい。ジャングルジムに登って、ブランコを滑って、鉄棒に座って笑いあった。でもファングが一番ハマったのは、健康のために体操に集まった老人を眺めながらビールを飲むことだ。ファングは背徳感が大好き。あーあ、目立つなって言われてるのに。まぁ、面白かったからって眺めてた僕も同罪だ。でもこれって仕事帰りだとちょっとできない。公園に血まみれの僕たちはちょっと似合わない。
     仕事帰りはまっすぐ帰ってこないとならないから、家でできる遊びを考えなくてはならなかった。別にいままで夜にやっていたことを朝にやればいいんだろうけど、夜空と朝日はだいぶ違う。きっと、違う遊びが望ましい。
     スリルがあって刺激的なのがいいな。それにファングの好きな背徳感を足してミキサーで思い切り混ぜるのだ。
     で、僕らがハマった遊びってのは、子供が登校している時間からセックスをすることだった。いや、これが思った以上に燃えてしまった。
     部屋の外では一日が始まっている。みんなが目を覚まして一日の始まりを過ごす。ちょっと慌ただしく新聞配達が駆け巡って、背広が公共機関に揺られ、子供は我先へと学校へ向かい、家に残った母親たちが洗濯物を干す。みたいなそんな時間。限りなく健全な時間だ。そんな世界をコンクリート一枚で遮断して、僕らは性行為に耽る。
     組織の質素な部屋と違って、あてがわれたアパートの一室には生活の匂いがする。そんな中で僕たちは恋人に相応しく肌を合わせる。子猫のように安堵してみせてもよかった。信者みたいに切望しても良かった。でも僕たちにとってこの安寧は非日常でしか無くて、それはセックスを盛り上げるためのネタにすぎなかった。
     最悪で最高に刺激的なのは、宅配便を頼んだ日にわざわざやるセックス。あれは楽しい。一回本当に真っ最中にチャイムがなったことがあるけど、ファングには僕のが挿ったままだった。僕が応対してもよかったけど、確かあの日はファングが玄関に向かったんだ。目線に気づかれていないと思いこんだ男に全身をじっくり舐め回すように見られて押す偽名の判子は、最高のいたずらだったに違いない。
     こんなに日が昇っているのに眠たい。安っぽいカーテンじゃ日差しは防げない。太陽で目が焼けそう。徐々に上がっていく気温と体温。全身がぐちゃぐちゃ混ざり合うころ、きっと学校では空腹を持て余した生徒が早弁してる。おひさまはもう少しでてっぺん。でも僕たちはこれから眠るのだ。
     結局いつもどおりセックスしてたわけだから、やることはたいして変わってない。でも、ちょっと燃え上がったよねって話。あとはやってる店が少ないから自炊が増えた。それだけ。
     あ、ファングのバカ舌を知ったのもここ。
     それだけだけど、楽しかったな。まぁ、ファングさえいればいつでもどこでも楽しいんだけどさ。



    「ということで、また左遷してくれたっていいよ、セブン」
    「言い方が悪いな。それに、今度地方に飛ばすならおまえとファングは別チームだ」
    「絶対ヤダ」
     だからこうしてチームを組んでやっていると、セブンは大きなため息を吐いた。僕はデキる男なので仕事はスマートにこなす。でも、最高のパフォーマンスをするためには最高の環境が必要だ。つまり、僕にはファングが必要ってこと。
    「今度の休暇にはひさしぶりに昼間にやろうかな。ねえセブン、宅配便の役やってみる?」
    「お断りだ。というか、そろそろ俺に性事情まで全部ぶっちゃけるのはやめないか?」
    「僕のこと全部報告するようにって言ったのはセブンだよ。僕は律儀だから、約束を守ってる」
    「何年前の話だ。はあ、心配してやっただけなのに……永遠に惚気を聞かされる羽目になるとはな」
     ほい、と資料が渡される。なんと、今度の僕らの設定は異母兄弟らしい。ファングが兄で、僕が弟。
    「宅配便のお兄さん、兄弟がセックスしてたら驚くかな?」
    「……可愛そうだからやめてやれ」
     その辺りはファング次第だ。ファングが楽しければ僕はなんだっていい。そんなことを口にしようとした矢先、ドアが開く。ファングが帰ってきたんだ。
    「おもしれー話してるじゃねえか。俺も混ぜろよ」
    「いま、兄弟のセックスを目撃する、罪なき宅配便のお兄さんのことを話してたよ」
    「だ、そうだ。その青年が不運を被るかは、おまえの判断次第なんだと」
     セブンは苦笑しながらファングにも資料を手渡す。ファングは笑いながら言った。
    「クローが楽しそうなら、オレはなんでもいいぜ」
     ありがと。やっぱり僕らは相思相愛だ。
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