タイトル未定 第6話 真夜中のキッチンは、息をするのを躊躇う程に静かだ。
蛇口から落ちた水滴の音に鼓膜を打たれながら、晶はコップを傾ける。程よく冷えた水に、より思考が研がれていくのを感じた。
「余計に目が冴えちゃったな……」
零した声が、コップの水面を揺らす。窓越しに映り込んだ月が歪んだのを見下ろし、晶はそっと息を吐いた。
ミスラが眠るのを見届けて、諸々の寝支度を終えてひとり寝台に転がってから、今に至る。いくら目を閉じても一向に訪れない眠気は、もしかしたらミスラの部屋で使い尽くされてしまったのかもしれない。
(それならそれで、よかったかな)
おかしな想像が、少しだけ晶の心を慰める。しかしすぐ、その口元から笑みは薄れていった。
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