サシャアニ飲酒静まり返った空間に金属が重なる音と不規則な足音が響く。その音に呼応するようにゆっくりと閉じていた瞼が開いていく。どれくらい眠っていたのだろうか。ぼやけたままの眼を擦りながら音が鳴る方へと目を遣ると、ふらふらと頼りがいのない足取りをした愛しい恋人が電気をつけながら玄関に倒れ込んでいた。
「あーあーもうこんなになるまで飲んで…。」
肩を竦めつつ独りごちて少し足早にアニの方へと向かう。玄関の鍵を閉めて荷物と上着を半ば剥ぎ取るように受け取った。靴を脱がせた後、まともに歩けなさそうなアニの両脇に腕を突っ込んで強引に抱き込む。
「はいはい。アニちゃんソファに行きますよー。」
見た目より重い…と言ったらアニに蹴られそうだが、毎度の如く想像以上に力を込めないと抱えられない重さのアニを、リーチ分の筋力だけでカバーしてリビングへと運ぶ。言葉にならない言葉を発している彼女を横にして、お水でも取ってこようかとその場を離れようとするが、その瞬間首裏に重力がかかる。
6500