それが彼のためだと、本当に思ったのだ。
分かりましたと、ホークスは言った。どこまでも静かな瞳だった。振り返れば、彼はいつもそうだった。人付き合いというものは大なり小なり、すれ違いや意見の相違の連続であるはずだ。しかし、彼と付き合う中でそういうズレをろくに感じたことがなかったことに気が付いたのは、「もう辞めるべきだ」という終わりの台詞を口にしてからだった。
自分の言葉に対して、ホークスが首を横に振ったことはなかった。そうですね、了解です、それがいい、そうしましょう、さすがです——いつもそう言って、楽しそうに笑うばかりで。
「分かりました」
出会い頭に何の前置きもなく別れを切り出された、こんなときでさえ。
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