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    AM68218433

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    AM68218433

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    ハイヒールの続きの序文です……
    5000字くらいでさくっとエロ書くつもりが気付いたらまだすけべになってないのに4000字になってました怖い
    モチベ維持のための進捗

    「今日は向こうに行こうぜ」と燐音くんが言った。
     向こうってどこだ、なんて流石に白々しすぎて僕も言えないけれど、明け透けな言動に呆れかえる気持ちも嘘じゃなかったから、その考えがそのまま表情に出る。要は燐音くんの言葉に呆れたような顔で返事をしたってことだ。
     その反応に、何故だか楽しそうな甲高い声の笑い声が返ってくる。
    「愛の巣に戻ろうぜ、ってこと」
     そう言った燐音くんは、僕が料理しているのをカウンター越しに眺めているところだった。
     誰もいないからと占領したキッチンで新作レシピの開発に勤しんでいたところ、赤毛を揺らしてひょっこりと僕の前に現れた暴君が冒頭の台詞を吐いたのである。
     愛の巣って、と繰り返した僕の声は、ため息交じりの重さに耐えきれなかったんだろう、ぼとりとキッチンの床に落ちていったようだった。その言葉を拾いあげるつもりもないらしい燐音くんが、まるでそれが決定事項で誰もそれを覆せないのだとでも言うように、また「キャハハッ」と声を出して笑ったのだった。


    どん、と肩を押されて扉に押し付けられる。逃げ場がない、なんて考えが咄嗟に浮かんで消えた。
    目の前に立つ燐音くんがおもむろに僕のズボンの前立て──つまりは股間部分──をわし掴んで片眉を跳ねさせる。
    「ンだよ、柔らけェまんまじゃん。さっさと勃たせろオラ」
    「カツアゲかなんかっすか? 普通に萎えるんでやめてください……」
    「ん……はは、萎えてねえけど?」
     べったりと扉に背をつけた僕に覆いかぶさるみたいに扉に手をついた燐音くんが、にやにやと性格の悪い笑みを浮かべている。
     無駄に長い脚で僕の股間をぐりぐりと刺激して、増した硬さに満足したように目を細めた。その眦までもが食紅を入れたみたいに赤い。僕の現状が面白いからというのもあるだろうけど、どちらかと言えばそれはメインじゃないだろう。単純に、燐音くんも興奮しているのだ。僕の首筋に懐くみたいに頭をすり寄せた燐音くんが吐き出す息だって僕に負けず劣らず熱いのがその証拠である。
     何故だか知らないがなんだか今日は朝からずっとムラムラしていたみたいだったから、待ちかねたご馳走を前に涎が止まらないって感じだ。ご飯を前にした時の僕は理性がないと自他共に認める事実だけれど、こういう時の燐音くんだって大概である。
     頭がいい人はえろいと聞いたことがあるが、色々考えがちな燐音くんももしかしたらその条件に当てはまるのかもしれない。少なくとも燐音くんの性欲は人並みにあるし、その性欲を僕に向けることを躊躇わない。今更遠慮される方が困るけれど、だからといって全部あけっぴろげでいいかと言われるとそれもまたなんか違う気がする、というのが僕の言い分である。なにが違うのかと言われても僕にも説明できないけれど。
    「……っ」
     ねっとりとした柔らかくてぬるついた何かに首筋を撫であげられて、思わず肩が跳ねた。
     赤い髪ばかり映していた目線を下ろせば、お行儀の悪い燐音くんの舌がその小さな口から顔を出しているのが分かる。僕への悪戯が成功したからだろう、またにやにやと楽しげに口角をあげたのも見えた。
     その口から出ている舌の先っぽと、僕の首の間とで一筋の線が橋を作っていた。濡れてすーすーする首から伸びた唾液が、アーチ状にたわんで、切れる。
     なんてことないはずなのに、なんだか妙にいけないものを見てしまったような気がした。
    興奮が、毒のように頭に回る。
     そういう僕の反応を膝で感じたんだろう。自身の舌で自分の唇を舐めた燐音くんが「いい子いい子」と馬鹿にしたような声で囁いた。それと同時に、膝を使って僕の股間を撫でる。色々と突っ込みたいところだらけだ。
     変なところで器用で自分の身体を扱うのが上手い燐音くんは、膝という愛撫には全く向いていなさそうな部位ですら僕の弱いところを的確に刺激してくる。
     少し痛いくらい押し付けたかと思えば、根本から先っぽまでを軽いタッチでなぞって、敏感な先端を意識させるみたいに膝のお皿でぐりぐりと軽く押してくる。もちろん、そんな動きがめちゃくちゃ気持ちいいってわけじゃない。当然手で触ってもらえた方が気持ちいいし、今日だって既に準備してきてあるんだろう中に包まれた時のような首の後ろがぐらぐらするみたいな高揚もない。ただ、こういう状況──燐音くんにこういった場所に連れ込まれて、期待しない程僕も枯れてはいないってことだ。
    それに、
    「……ははっ、マジで固くなってきてんじゃん」
     そう言って笑う燐音くんが膝を下ろした瞬間響いた『コン』という軽い音が、僕の興奮をますます煽ったのは間違いなかった。



     燐音くんのいう『向こう』とは、所謂ラブホテルのことである。断じて僕のアパートじゃない。
     燐音くんと一緒に暮らしていたアパート自体は契約もそのままに残してあるし、風通しの為に時折帰ることもある。けれど燐音くんがそれについてくることは一度もなかった。合鍵も寮に入った時点で返してもらっている。以降、燐音くんが僕の家に近寄ったことは一切なかったと言ってもいい。妙なところで律儀というか、変な拘りがあるひとなのは確かだから、また何か僕には想像もできないようなことを考えて自分で作ったルールに従っているんだろう。『合鍵を返したんだから、もう自分があの家に入る資格はない』みたいな。
     そんな資格、欲しいならいくらでもあげるし、取り上げたつもりもないというのに。
     とはいえ燐音くんが決めたルールをわざわざ僕が変えるのも違う気もするし、そうしたいというならそうしたらいいとも思う。一生面倒を見るつもりはあるけれど、燐音くんだってよちよち歩きの赤ん坊じゃないのだ。やりたいようにやればいい。
     まあ、やっぱりどうにも危なっかしいし、ひとに迷惑をかけるのが特技みたいなところがあるので目は離せないんだけど。寮に入ってから同室になった弟さんを見ていると、燐音くんももう少し彼みたいにお利口さんにできないものかと思わざるをえない。弟さんも弟さんで破天荒というか怖いもの知らずだが、燐音くんのように『怖いものだと分かっていて自ら近付いていく』という感じの危なっかしさはないから安心できる。野生動物だって怖いものだとわかっている火には近づいたりしないのに。
     つまり、燐音くんは頭はいいけど動物さん以下のお馬鹿だってことだ。
     そうじゃなきゃ、行きつけでもなんでもないただのラブホテルを『愛の巣』だなんて言い方もしないだろう。もしラブホテルが愛の巣なんだとしたら、そのホテルを利用した大勢のひとと共通の愛の巣ってことになるんじゃないだろうか。普通に気持ち悪い。まあ、燐音くんのことだから深く考えての話ではないんだろう。ただただ、いつも通りの口から出まかせ、行き当たりばったりな口先三寸だ。僕が嫌そうな顔をするから、楽しんでそういうことを言うだけである。

     慣れた様子で適当な部屋を選ぶ様をぼんやりと眺める。振り返った燐音くんが、コンビニで買い込んだ携帯食を口に運んでいた僕を見て笑った。呆れたように笑いながら横を通り過ぎてフロントを抜ける燐音くんの後姿に僕も着いていく。誰とすれ違うこともなくエレベーターを降りた先、隅々まで清掃された廊下を進めば、そう時間もかからず燐音くんの手元にある鍵に書かれた番号と一緒の部屋にたどりつた。
     するりと扉をくぐる燐音くんの後を追い、部屋に足を踏み入れた時だ。
     燐音くんの腕が、僕の首に巻き付いた。その勢いに思わずたたらを踏む。ごん、と音を立ててドアに肩をぶつけた僕を、燐音くんは息がかかりそうなくらい近くで笑いながら見ていた。そのことに文句を言う前に、吐き出した息ごと飲み込むみたいにして燐音くんが僕の口に噛みついてくる。
     うねうねとひとの口の中を動き回る生暖かい舌が、僕の口の中に残るチョコ味のクッキー生地をこそぎ取って食べてしまう。ひとの貴重なカロリーをなんだと思っているんだ。かちんと来た僕が燐音くんの口の中からそれらを取り戻そうと躍起になっている内に、気付けばお互い口の周りをべたべたにして息を乱していた。
     お互いが少し冷静になって顔を離すと、ようやくガチャ、と自動的にドアの鍵がかかる。後精算式だから、鍵がかかってしまったら精算するまでは外に出られない。燐音くんが連れてくるホテルは大体こういう形式だった。フロントで受付されるようなところだと、万が一顔が見られた時に言い訳が必要になってしまうからだろう。良くも悪くも顔が知られているってこういう時面倒だ。
     まあ、そういう面倒なことは多分全部燐音くんが考えて対処してくれているんだろうから、僕は深く考えないけど。バレちゃったりしたらそれこそ燐音くんの口先三寸でなんとかするんだろうし──それでもどうしてもだめだったら、全部僕が悪いってことにして皆に説明しちゃえばいい。
     燐音くんはアイドルを続けたいだろうけど、僕はそこまででもないのでそういう責任の取り方もできなくはないって話だ。万が一の話。そんな時は当然来ない方がいいっていう、そういう話。こんなこと言ったら燐音くん泣いちゃうかもしれないし、言うつもりもないけど。
     でも、僕は結構そこまで考えた上で燐音くんと『こういう』場所に来て『こういう』ことをしているんだってこと。そういう僕の覚悟……みたいなものを燐音くんはわかってないし、きっと僕のことを『誘ったらなあなあでラブホに着いてきて友人とセックスする馬鹿』だとでも思ってるんだろう。間違っちゃいないが、一応僕だってそれなりに考えているのである。別にわざわざ言うつもりもないし、そう思っているにしたって燐音くんは楽しそうだからいいと思うけど。
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