無どきんどきん、と高鳴る心臓を抑えて前を向く。
頬を赤くしたまさもかわいいな、とか考えているとほらまた鼓動が高鳴る。
「まさ、いいか……?」
「う、うん……」
手を握ると、少し湿ってて、いや、これは俺の手汗かも。
ずいと顔を近づけて、もう一度じっと目を見ると、一度恥ずかしそうに逸らされた後少しこっちを見て、そして静かに閉じられた。
もう片方の手を頬に添えて、自分も目を閉じて、
「まさ、好きだ」
唇が触れる、その3ミリ手前……
一際大きな蝉の鳴き声が鼓膜に突き刺さる。
汗ばんだ体で、どうやら窓も閉めずに大の字になっていることに気がつく。
思わず視線の先の天井を見、窓の外の入道雲を見、また天井を見た。
見慣れたそれは実家の自室。
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