空蝉の日常 新たな仕事の話 そろそろ葉桜も露を帯びる5月の後半、式神三名は雪風に呼び出されていた。
話というのは仕事の依頼だそうだが。
「この件は受けるか非常に悩んだんだが……藤見平の者がどうしてもと頭を下げてきたから私も断りきれなくてな……」
「そんなに難しい任務なのですか?」
「いや……難しいというよりは……お前たちがどう思うかと考えてしまって……」
「歯切れ悪いな」
「そんなに強いのか?」
式神三名が口々に頭を抱える主を宥めて話を聞き出す。
そこまで大変な依頼なのか、もしや強敵が、死人が、と三名も流石に不安を感じ始めたところで、雪風は神妙な面持ちで内容を告げた。
「藤見平の観光人力車をやってほしい、とのことだ」
「……ん?」
「……は?」
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