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    wk_gsr

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    現在のアシュグレ(付き合ってないというか無自覚状態)がごつサブで五年後の世界に飛ばされて、付き合ってるというかもはや結婚してるアシュグレと出会ってすったもんだする軽めのギャグ話にしようとしたけど思ったよりシリアス方向に舵を切ってしまったためいつ仕上がるかわからなくなったのでとりあえず一回進捗上げとこうみたいなそういうあれ。未来アッシュはまだ出てきてない。

    #アシュグレ
    ashGray

    未来「グレイ!」
     ビリーの声に反応した時には、もう遅かった。
     眼前に迫る、武器を振りかぶったイクリプス。目は閉じなかった。間に合わないとわかっていても、反射のようにナイフを構えた両腕が上がる。首と心臓、急所を守るように交差したところで、強い衝撃がグレイの全身を襲った。
    「うあっ……!」
    「っ、ギーク!」
     受け身を取る間もなく吹き飛ばされる。背後には半ば瓦礫と化した壁。
     だが、衝撃は思ったよりも軽かった。それでも一瞬息が止まるくらいの痛みがあって、グレイはぎゅっと目をつむって、大きく口を開けて必死に酸素を取り込む。
     何かに抱きとめられている、と認識したのは、数秒後だった。
     それと同時に、瞼越しにもわかるほどに、強い光が放たれる。
    「アッシュ!」
    「グレイ!」
     焦燥に満ちたジェイとビリーの声を最後に、グレイは意識を失った。


     次に目を開いた時、グレイがいたのは、見知らぬ家の庭だった。
    「っ……? こ、こは……?」
     まともに攻撃を受けた腹部の鈍痛で意識が戻り、小さく呻きながらどうにか体を起こして座り込む。
     周囲を見渡すと、どうやら裏庭のようで、そう遠くないところに一軒家と、ガレージが見えた。
     手入れは行き届いているようで、グレイが倒れ込んでいたのは柔らかな芝生の上だった。どことなく、実家の庭と似ている。
     とりあえず辺りに目を走らせて、足元に落ちていたナイフを急いで拾い上げる。
     そうしたところで、背後から小さく呻く声が聞こえて、はっと振り返った。
    「あ、アッシュ……!」
     すぐそばに、ヒーロースーツ姿のアッシュが倒れていた。
    「だ、大丈夫かな……生きてる、よね……?」
     膝で這うように近づいて、芝生に手をついて顔を寄せる。少し苦しげにしてはいるが、息はしていた。擦り傷はあるが、派手な出血はない。
     もしかして、あの時吹き飛ばされたグレイを受け止めてくれたのだろうか。そのまま一緒にこの不思議な場所に飛ばされた、というところか。
     少し悩んで、手を伸ばした。剥き出しの肩に触れて、軽く揺さぶりながら声をかける。
    「あ、あの……」
     名前は呼べなかった。助けてもらったかもしれないのに、こんなに近くにいるだけで、体が震える。
     それでも、このままにはしておけなくて、辛抱強く声をかけ続ける。
     程なくして、アッシュの瞼が小さく動いた。それだけでびくりと震えてしまい、慌てて距離を取ってしまう。
     なんだか、以前にも似たような場面があった気がする、と思いながらびくびくと待っていると、何度か瞬きをしたアッシュが、跳ね上がるようにして体を起こした。
     あ、と、言葉にならない声が溢れる。手で頭を押さえながら、眉を顰めて起き上がったアッシュは、グレイを見て、周囲を見て、再びグレイに視線を戻し、いつもと変わらない険悪な表情になる。
    「クソッ!」
    「ひっ!?」
     突然響いた怒鳴り声に、思わず悲鳴を上げてしまう。
     これだから怖いのだ。言動のひとつひとつに威圧感があって、いつも怒っているように見えるから。どうしてもっと穏やかでいられないのだろう。市民にだって、サービス精神の欠片もないぶっきらぼうな態度ばかり取っている。そのわりに、一部には人気があるようだが。
     痛むのか、こめかみの辺りに手をやったまま、アッシュは鋭い視線で周囲を見渡している。ついさっきまで気を失っていたとは思えないほどに見事な切り替えだ。それは、ヒーローとして見習うべきかもしれないが、肌に突き刺さる鋭い空気を味わうグレイからすると、もう少し落ちついてほしい、と思わずにはいられない。
    「あ……アッ……シュ……?」
     震える体を抱きしめるようにしながら、おずおずと声をかける。
     怖くても、関わりたくなくても、今ここにいる見知った人間は、アッシュしかいない。これがジェイやビリーだったら、もっと安心できるのに。いや、こんな訳のわからないことに彼らが巻き込まれなくてよかったと思うべきか。アッシュでよかった、とは流石に思っていない。いや、ほんの少しだけ、思っているような、思っていないような。
     そんな心中に勘付いたのか、それともいつもみたいにグレイに対して苛ついているだけか、アッシュがぎろりと凶悪な視線を向けてくる。ひ、とまた、我ながら情けないくらいに震えた声が零れた。
    「おい、ギーク。ここはどこだ」
     脅すような声色。まるでグレイのせいだと言わんばかりの眼差しに、流石にむっとしてしまう。
     土埃を手で払いながら立ち上がるアッシュにつられるように立って、グレイはふるふると首を振った。一歩下がって距離を取るのはもう習い性だ。
    「し、知らない……」
    「あ?」
    「だ、だって、僕だってついさっき目が覚めたところで……アッシュこそ、何があったか、覚えてないの……?」
    「テメェがみっともなく敵の攻撃を受けて俺のところにぶっ飛んできたところまでは覚えてるぜ」
    「うぅ……」
     なんとか反論を頑張ってみたところで、痛いところを突かれて閉口してしまう。やはりあの時、壁に叩きつけられそうになっていたグレイを、アッシュが受け止めたのは事実だったらしい。意図的ではなく、偶然そこにいて巻き込まれただけなのだろうけれど。
     ああ、そうだ。アッシュが自分からグレイを助けようと動くはずはない。吹き飛ばされた先にいただけ。そうに決まっている。
     けれど、そのおかげで、グレイは大怪我を負わずに済んだ。それも事実だ。あの勢いでコンクリートの壁にぶつかっていたら、今体に残る鈍痛程度では済まなかっただろう。アッシュの体に残る傷のいくつかは、グレイのせいでついたものだ。
     今、こんなところにいるのも、グレイのせいなのだろう。グレイを庇わなければ、アッシュまで巻き込まれることはなかった。
     どうして、と思った。あんなに執拗に虐げていたグレイを、身を呈して助けたのは、どうして。
     答えはわかっていた。今のアッシュは、ヒーローだから。メンターとして、ルーキーのグレイを助けただけ。
     ぐ、と唇を噛み締める。複雑だ。アッシュとエリオスで再会してから、何度もこの居心地の悪い気持ちを味わっている。
     グレイにとって、アッシュは恐怖を覚えるくらいに強くて、圧倒的で、憎い存在だった。それなのに、ヒーローとしてのアッシュは、高慢な言動こそ変わらないけれど、きちんと市民と街を守るヒーローであり続けていた。グレイがずっと焦がれていた、ヒーローだった。
     あの暴君が。理不尽で、自分勝手で、グレイをずっとずっとひどい形で虐げていたくせに。今さら、こんな。
     もやもやと胸の中にわだかまる感情。その名前を探し続けているのに、一向に見つかる気配がない。
     そっと息を吸って、ゆっくり吐き出す。呼吸と気持ちを整えて、いらいらと周囲の様子を確認しているアッシュに向かって口を開いた。
    「……あ、あの……」
     途端に、またあの強い眼差しが向けられる。反射のように体が竦む。目を見ることもできず、顔を背けてぎゅっと目を瞑った。
     そんな様子を見て、アッシュはまた苛立つように舌を打った。
    「ンだよ」
     吐き捨てるように言われて、グレイは少し躊躇ったあとに、思いきって息を吸い込んだ。
    「た、助けてくれて……ありがとう」
    「……!」
    「……?」
     てっきり鼻で笑われるなり、何言ってんだと怪訝に思われるかと思っていたのに、アッシュからは何の反応もない。
     おそるおそる目を開くと、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているのが見えた。悪く言えば、呆けたような、というか。
     そこまで驚かなくてもいいだろう。別に礼を言うのが初めてでもないのに。
    「あ……」
     あの、と声をかけようとしたところで。
    「「!?」」
     一瞬にして、辺り一帯が霧に包まれた。
    「!? 霧……!?」
    「おい、ギーク! テメェか!?」
     即座に戦闘態勢に入ったアッシュに怒鳴られて、同じくナイフを構えて周囲の気配を探り始めたグレイはぶんぶんと首を振る。
    「ち、違うっ! 僕じゃない! でも、これ……!」
     これはグレイが作り出した霧ではない。だが、これは自然発生した霧ではないし、むしろ、グレイにとっては馴染むような温度を持っていた。
     深い霧の中でもグレイの視界は良好で、すぐそばにいるのにグレイの姿を捉えられず首を巡らせているアッシュのこともよく見えている。
     その背後から伸びる、ナイフを持った手も。
    「っ、アッシュ!! 後ろ!!」
    「!?」
     声に反応したアッシュが振り向くよりも早く、その人物はアッシュを羽交い締めにしてナイフの刃を首に押し付けていた。
    「アッシュ!」
     叫んでナイフを構えるが、アッシュを人質にされている以上、下手に動けない。
     その人物はアッシュと同じくらいの身長で、霧の発生源なのだろうか、その周囲は特に霧が濃く、全体像が掴めない。ただ、鋭く光るナイフだけがよく見えた。
     油断なくナイフを構えたまま、グレイは目を凝らす。
     見覚えのない場所。突然の霧と急襲。
     何がなんだかわからない。けれど、このままやられるわけにはいかない。
     急所を捉えられているから迂闊には抵抗できないが、アッシュも険しい顔で隙を伺っているのがわかる。
     その動き、呼吸の一つまで見逃さないように目を凝らす。二対一で数の上では有利なのだ。いつものように連携すれば、切り抜けられるはず。
     緊迫する空気の中、最初に口を開いたのは、アッシュを拘束している人物だった。
    「君たちは、誰……?」
     低く落ち着いた声。男だ。どこか、聞き覚えがあるような気がする。
     そう思った時、男の姿を隠していた霧がふわりと散って、その顔が見えるようになった。
     薄まる霧の中で、金色の瞳がグレイを捉える。グレイは、ぽかんと口を開いた。
    「……え?」
    「……って、あれ?」
     間抜けな声を零したのはグレイで、少し間を置いてから不思議そうな声を出したのはその男だった。黄金色の目をぱちりと丸くして、小首を傾げるその姿に、グレイはひたすら動揺した。
    「おい、ギーク! なんだその顔は!?」
     目も口も大きく見開いたまま硬直するグレイに、ただならぬ事態を察したのか、アッシュが怒鳴る。いつもであればびくりと震えて情けなく悲鳴を上げていたところだが、今のグレイにそんな余裕はない。
     ぱくぱくと魚のように口を開閉する。頭が真っ白になって何も考えられない。なんだ、これは。
    「ギーク! クソっ、何が起きてんだよ!」
    「だ、だだだだって、え、えええっ!?」
    「はあ!?」
     首元にナイフを突きつけられているとは思えないほどに威勢のいい怒声に、グレイは意味もなくぶんぶんと首を振る。大混乱の二人の顔を見比べた男が、おもむろにナイフを引いてアッシュを解放した。
     アッシュが呆気に取られていたのは一瞬で、素早く振り上げた腕は男に当たることなく宙を切る。行儀悪く舌を打ったアッシュは、ぱっと身を翻して距離を取り、険しい顔で相手を見据えて戦闘態勢になったところで、電池が切れたように動きを止めた。
    「……は?」
     その男は、グレイと同じ黄金目と、濃紺の癖毛を持っていた。髪はグレイよりも少し長めで、襟足を軽く一つに結っている。部屋着だろうか、襟ぐりが広めの白いカットソーの上に黒いカーディガン、カーキ色のチノパンというラフな格好だ。両手に持った大ぶりのナイフだけが、異質だった。
     年の頃は三十代前半といったところか。たぶん、おそらく。何せ、幼いとは言えないものの、年齢不詳な顔立ちなのだ。グレイと同じ。
     そう、グレイと同じ顔だ。グレイと同じ顔の、年齢だけが少し上に見える男が、そこには立っていた。
    「ぼ、ぼぼぼぼ、ぼ、く……!?」
    「なんの冗談だ、クソが!」
     ようやく絞り出した声を震わせるグレイの横で、アッシュも混乱しきった声を上げる。冗談だったらよかったのに。今、この状況の全てが。
     そんな二人の顔を順番に見て、男はゆっくりとナイフを腰のベルトに仕舞う。
    「えぇと……とりあえず……」
     困惑混じりの声。それでも、グレイたちほど混乱はしていないようだ。落ち着き払っていて、怯えもない。
     少し考えるような素振りを見せる男の一挙手一投足を、グレイとアッシュは息を呑んで見守った。
    「……傷の手当てが先、かな……?」
     緊張の糸が張りつめている二人に向かって緊張感のない声で言って、その男――グレイ・リヴァースそっくりの男は、年齢に見合わない仕草で、こてりと首を傾げたのだった。



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    kishios_kindha

    DONEディノ視点アシュグレ(探偵イベネタバレあり)ジェイキッドマンの偽物が現れるという事件を解決すべく、俺はビリーワイズの協力の元、偽ジェイの正体探しに奮闘していた。時に現地へ赴き、時に情報整理を行う。仕事の合間を縫って行う捜査は着々と進んできている。
    今日はセントラルスクエアに設置されている監視カメラの映像の確認。膨大な量の録画映像からジャックに頼んでジェイに似た体形、髪色の人物をピックアップし、一つ一つ確認する作業だ。ジャックが頼りになるとはいえ量も多いし、ジェイ本人か偽物かは安易に判断できない。結局エリオスタワーの周辺に映るジェイの姿は本人だろうという結論に至り、セントラルスクエアにはジェイの偽物は現れないと判断した。
    「はああ、疲れたあ。ピザ食べたいね」
    「確かに疲れたな。引き上げるとするか。ディノもビリーもありがとう」
    「今日はここまでみたいダネ」
    少し不服そうなビリーくんはまだまだ元気そうだ。
    「ジェイもお疲れさま。ジャックも手伝ってくれてありがとう」
    過去の監視カメラ映像の再生を停止し、画面を元に戻す。モニターは日が暮れ始めた街並みを映し出した。数秒間で切り替わる映像は、時に人波を、時に石畳で舗装された道路を映す。
    モニ 3010