地獄をのぞむ視界がバタバタと五月蝿い鴉に覆われていく。
刀を振るおうとも既に削られた体力。身体は膝を着く寸前、暗具も気力も無く、未だ香も焚ける状態ではない。
刺客は何処に居るだろうか。せめてあいつだけでも。あと少し、あと少しで香が焚ける。見えないまでも自分の近くに居ないかと視線を巡らそうと思っても、どうにかして鴉から逃げようと藻掻くばかりになる。そんな中で刺客の元へ行こうと思っても右も左も分からないだけだった。
もういっそ、1度くたばってしまうのが良いのではないか。どうせここでなら死んでもまた生を受けるのだ。刺客はどこで何をしてるのか。生きているのか死んでいるのか分からないが、普段なら分かるはずの刺客が死んだと告げる虫の知らせも無いままだ。それなら尚更、もう良いだろう。
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