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    オルピニャ何度目の勉強会(言うほど他に書いていなかった)

    「つ、つか..れた..」
    カーペットの床に寝転がって満身創痍の体を見せているオルティガに、ピーニャはため息をついた。こう見えて実は、勉強道具を用意してピーニャの寮室を訪問し二人きりの勉強会を始めてからまだたったの10分しか経っていない。
    「オルティガ、明日期末テストなんだよー?もう少し頑張らないと。ね?」
    コップに注いだオレンジジュースをお盆に載せて運んで来たピーニャに、机に突っ伏したままオルティガが弱々しい声で問いかける。
    「もう少しってどのくらい」
    「テスト範囲の、ここからここまで...15ページくらいあるかな?この辺りを完璧に復習できるまで!」
    「無理に決まってるだろ!10ページ以上もあって、しかもこんなにびっしり文字があるなんて....しかもそれを全部覚えろってコトだろ⁉︎もー、やだ!絶対ムリ!こんなの一日じゃ足りないじゃん!」
    オルティガはそう言って、むぎーっと頭を掻きむしったあとに、隣に座るピーニャの方にしなだれかかった。
    「そりゃ歴史なんだから、情報量多いのはしょうがないっしょ......」
    「もう教科書なんか見たくない。ピーニャとずっとこうしてたい」
    あ、これはダメな流れだ。
    ピーニャは慌てて、腰の部分に手を回して顔を胸の辺りに埋めるオルティガに声をかける。
    「ちょ、ちょっと、オルティガ!さすがに今日は、真面目に勉強しないと。ね?明日、テストが終わった後ならボクも予定を空けるから.....っ!」
    鎖骨をぺろっと舐められ、びくりと身体を震わせるピーニャに、オルティガが目を細めて微笑む。
    「ちょっと舐めただけでこんなに息荒くしちゃってるのに?」
    「.....ぁ、はぁ、....っ、そ、っ...そうじゃないもん」
    「ねえ、ちょっとだけ、ベッドで休憩するくらいなら良いだろ?ピーニャのことギュッとして、しばらくしたらまたやる気出ると思うんだ」
    ここで言うオルティガの「ギュッと」とは、単なるハグではなく、つまり同衾のことである。
    「そ、それやってたら、オルティガ結局寝ちゃうじゃん...ボクも、チルタイムどころじゃなくなっちゃうし.....っあ!や、やだ、耳たぶ噛まないでよ....、も、もう......いじわる...」
    しばらく彼と睦み合う時間が減っていたために、欲求不満がないと言えば嘘になる。だがテストが控えている今、色恋にうつつを抜かした結果オルティガがさらに単位を落とすような事になっては絶対にいけない。
    「〜〜〜っ!テスト!合格点だったら!その後まる一日ボクのことギューっとしてていいから!」
    ぴた、とピーニャの喉仏に舌を這わせようとしていたオルティガの動きが止まる。
    「.....ホント?」
    ぽかんと口を開き、果実みたいな桃色の瞳をまん丸にしてこちらを覗き込む愛くるしい表情に思わず胸を締め付けられながらも、ピーニャは応えた。
    「はぁ、はぁ、はっ.....、ん、ホント..」
    「マジのマジ?」
    「うん、マジマジ。ボクが今までキミに嘘ついたこと、ある?ないっしょ。
    ただし......合格点を取ったら、だよ。その為には、何をしなくちゃいけないか分かるよね?」
    その言葉にオルティガは半目になりつつ、
    「...勉強」
    と口に出した。
    「そう!じゃあ今、ここでこうしてる場合じゃないよね?ボクも、分かんないとこあったら教えるから。メロコもシュウメイも、ボクの教え方はいまいち分かりづらいって言ってたから自身ないけど....出来る限りのことはするから!
    いっしょに、勉強がんばろう?オルティガ」
    息を整えてから、力こぶしをつくって笑うピーニャに、オルティガは渋々と、それでもしっかり頷いた。
    「.....わかった。勉強、する。
    ていうかピーニャは、オレに単位落としてほしくないから付き合ってくれてるのに、それを無視するって、ダサいしな」
    そう言って、折りたたみテーブルに向き直る。
    「それに、ご褒美もあるし。何時間だって何日だって、やってやるよ、復習。絶対合格点取ってやる!」
    シャーペンを握りしめて宣言するオルティガに、ピーニャはわーっと拍手してからぽつりと言った。
    「期末テストは明日だからね。何日もないよ」
    「急に真面目なこと言わないでって!分かってるよ!」
    それから熱心に教科書に目を通し、問題集を広げてノートにペンを走らせるオルティガに、ピーニャは出来うる限りの丁寧な教え方を挟んだりなどして日が暮れるまで付き添った。
    つまり、ピーニャ自身も、オルティガと一日、濃厚な時間を楽しみたいと望んでいたのである。
    分からない箇所を必死になって教えるピーニャに、オルティガはふいにふっと微笑んで、髪の房をそっと指でつまみ上げ、耳元で囁いた。
    「だいすきだよ」
    テストがんばるから。オレにご褒美、ちょうだい。
    カーッと赤くなるピーニャに、オルティガはにんまり笑った。
    「ほら、続き。教えてよ、ピーニャセンセイ?」
    「......マジメに、やるっ!」
    「あたっ」
    ピーニャが軽くオルティガの頭を小突く音が、部屋にこだました。


    はたして、翌日のテスト結果発表後...
    あらためて自分の部屋が寮の隅の方で良かったと安堵するピーニャの背中を「ごっほうび♪ごっほうび♪」とはしゃいで押しながら寮室に入っていくオルティガの姿が、そこにはあった。




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