放課後の教室は夕焼けの色でじんわりと染まっていた。窓から射し込む橙色の光が机の表面で反射し、長い影を作る。だけど、そんな美しさすら、今のわたしには目に入らなかった。
心を支配しているのはただひとつ――目の前の、憧れの先輩だけ。
本当なら今頃、部活の体育館にいるはずだった。だけど今日は委員会の会議で、こうして空き教室に委員たちが集まっている。
教室に入った瞬間、黒板に書かれた「席は自由」の文字を見て、迷わず先輩の後ろの席を選んだ。……そこは、わたしにとって“いつもの場所”だ。先輩の姿を一番よく見られる、わたしだけの特等席。
何気ないふりをして腰を下ろしたけれど、胸の鼓動は隠せない。
桜木清右衛門先輩――委員会活動でよく顔を合わせる人だ。面倒見が良くて、わたしのことも何かと気にかけてくださる。
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