Δクロスオーバー下書き それは一本の電話から始まった。
新横浜駅前、退治を終えて事務所に戻ろうとしていたロナルドは、懐でスマホが震えるのを感じてそれを引っ張り出した。画面に同居人の名前が表示されているのを確認すると、ぞんざいな口調で応答する。
「おう、なんだよ」
『ロナルド君! 今どこだね!?』
なにを焦っているのか、ドラルクの声には切羽詰まった響きがあった。
「駅前。す……」
すぐ戻るから、と言おうとしたのをドラルクが遮る。
『そこを動くな! いいな、すぐ行くから動くなよ!』
ロナルドの返答を待たずに通話は切れた。
(……なんだよ!?)
今日の夕飯はドラルク特製のカレーのはずだった。スパイシーで、でもただ辛いだけではなく野菜の酸味や甘さが潜んでいて、パプリカや南瓜の素揚げが添えられ彩り豊か、しかもロナルドスペシャルと称して鶏の唐揚げも乗せてくれる。楽しみで楽しみで特急で仕事を終わらせ、ほんの五分前に「今から帰る」とRINEを送ったばかりだ。それなのに当のドラルクからお預けをくらうとは。
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