夢見る少尉殿【鯉】
今日も訓練と書類仕事が終わった。
私は机の上の書類を重ねて補佐の月島軍曹に渡すと、大きく伸びをする。バキリと背中が鳴った。
「お疲れ様でした、鯉登少尉殿」
「うん、今日は少し疲れた」
日頃そんな事を言わない私から愚痴のような言葉を聞いて、月島軍曹が目を丸くする。
「珍しいですね、少尉殿が疲れたなどと言うのは」
「昨日遅くまで将校の集まりがあったのだ。偕行社でな。集まるのは良いがその辺の集会所で済ませて欲しい」
「なるほど。それはお疲れでしたね」
「そうだぞ「新品少尉殿」なんて揶揄されながらも頑張っているのだ」
冗談めかしてそう言うと、月島の眉がピクンと跳ね上がった。
あっ、まずい、
「誰です。そんな事を言うのは。宇佐美ですか尾形ですか」
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