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    shitan_libra

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    shitan_libra

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    loveのようなlove未満のような稜圭。原作設定です。

    ディープブルーとの最後の戦いを終えてから二週間。
    敵が現れない中、カフェミュウミュウは変わらず営業を続けていたが――

    #東京ミュウミュウ
    tokyoMiuMiu
    #稜圭
    prism
    #白金稜
    platinumPrism
    #赤坂圭一郎
    keiichiroAkasaka

    君が待つ場所 研究室のドアを開けると、カタカタとキーボードを弾く音が響く。休むことなく指を動かし続ける赤坂に、白金は淹れたてのコーヒーが入ったマグカップを差し出す。
    「お疲れさん。異変はあるか?」
    「いえ、今日も異常はありません」
     白金が声を掛けるとようやく赤坂は手を止め、白金の顔を見て笑顔を浮かべる。
    「そうか」
     白金は赤坂のものと色違いのマグカップをデスクに置き、隣の回転椅子に腰かける。
     最後の戦いが終わってから、二週間が経った。エイリアンたちが去ってからというもの、異変は見られず、地球は平穏を取り戻した。念のために異常がないか確認は続けているが、研究室にいる時間はめっきり減ってしまった。少し前までは、一日の大半を研究室で過ごしていたというのに。
     敵は現れないが、カフェミュウミュウは未だ営業を続けている。流石に戦いの直後、数日間は休養日を設けたけれども。エイリアンたちの脅威に晒されることはなくなったのだから、もうカフェを営業する必要はないのだろうが、白金は何となく踏ん切りを付けられないでいた。ミュウミュウの五人には、敵が現れる可能性がなくなるまでは、これまで通り活動を続けると説明し、納得してくれている。

     けれど、今日、いちごに問われた。
    ――カフェミュウミュウは、もうすぐなくなっちゃうの? と。
     当然の問いだ。とりわけいちごはあの戦いの後、変身する力を失ってしまっている。変身できなければ、敵が現れても戦うことはできない。そのため、先のことついて不安に思う気持ちは他の四人よりも強いのだろう。
     白金は咄嗟に返答できなかった。この先、地球を脅かす敵が現れなければ、ミュウミュウは解散する。そうなれば、アジトであるカフェミュウミュウも閉店するのが必然だ。そう頭では理解している。カフェを始める時にも、そう考えていた。それなのに。
    「……敵が現れなければ、そうなるだろうな」
     少しの沈黙の後、白金は自分がオーナーであるにも関わらず、どこか他人事のような言葉を返した。いちごは「そうだよね……」と目を伏せて呟き、「でも、寂しいな」と言い残して去っていった。
     感情を素直に言葉にできるヤツだな、と白金は思った。自分とは違って。

     寂しい、という言葉が白金の中でリフレインする。それは言葉に詰まった理由と合致する。
     白金もまた、この場所をなくしたくないと思うようになっていた。赤坂とμプロジェクトを完成させ、二人で店を始めた。そして、彼女たちに出会った。それからの日々は、騒々しくも楽しいものだった。そのような毎日を終わらせたくないと、らしくもなく願うほどに。
     けれど、それだけではなく、否、それ以上に終わらせたくないものがある。
     白金は自分で淹れたコーヒーを飲み、口を湿らす。口の中に苦味のみが残り、顔をしかめる。赤坂からコーヒーの淹れ方を教わったが、何度その通りに淹れても、彼のものと同じ味にはならない。赤坂が淹れるコーヒーは華やかな香りが口の中に広がり、味わい深いコクがあって、苦さの中にも甘味を感じられるのだ。彼の人間的な深みが味にも表れているのだろうか。年齢を重ねても、未だ彼には追いつけないな、と白金は苦笑する。
    「なあ、圭一郎」
     彼の顔を見ずに、白金は問いかける。
    「今日、いちごに言われたんだ。カフェが閉店するのは寂しいって。圭一郎はどう思う?」
     キーボードの音が止む。赤坂は白金の方に顔を向け、穏やかな口調で問い返す。
    「稜はどう思うんです?」
    「俺は……」
     寂しい。終わらせたくない。言葉は心の中に留める。
     五年前、父の研究を完成させると誓った。そして、無事に研究は完成し、エイリアンから地球を守ることができた。父の悲願は果たされたのだ。
     それは喜ばしいことだ。けれど同時に、心にぽっかりと穴が空いたような感覚に襲われる。
     μプロジェクトの終わりの先など、白金は考えたことがなかった。これまでの人生を研究だけに費やしてきた白金の中には、研究以外には何もない。殺風景な自室と同じように。
     唯一願うのは、赤坂と離れたくないということ。両親を亡くしてからの五年間、白金の側にはいつも赤坂がいた。研究や生活面のサポートはもちろん、両親を亡くした悲しみを受け止め、精神的な支えになってくれた。彼がいなければ生きていくことはできなかった。
     μプロジェクトの終わりは、すなわち、赤坂といる理由がなくなることを意味する。赤坂はそうは思わないのだろうが、白金はそのように受け止めていた。かつてはまだ無力な子どもで、一人でできることは限られていた。けれど、今は違う。自立して一人で生きていくことはできる。
     研究という繋がりがなくなった今、残る繋がりはこの場所だ。赤坂がいつも帰りを待っていてくれた、おかえりなさいと言ってくれたこの場所。
    ――カフェミュウミュウを終わらせたくない。
     白金が赤坂にそう願えば、人の良い彼はきっと、その願いを叶えてくれるだろう。けれど、その言葉で彼を縛りたくはない。彼は五年間、当然のように側にいてくれた。これからは、自由に、彼が思い描く人生を歩んでほしい。

     押し黙ったままの白金に、赤坂はふっと笑みをこぼす。
    「私は寂しいですよ。終わらせたくありません」
     白金ははっと顔を上げる。赤坂と視線がかち合う。
    「ここであなたの帰りを待つのが私は好きでしたから」
     彼の方が自分より一枚も二枚も上手だ、と白金は思う。自分の気持ちを見透かされているようだ。白金は椅子ごと赤坂に背を向ける。今の緩み切った表情を彼に見られるのは恥ずかしい。  
     赤坂はそんな白金を微笑ましく見つめる。
    「ケーキを作るのも板についてしまいましたしね。それに、エイリアンたちとした約束を果たさなければなりません。そうでしょう? 稜」
     自分たちの手で地球を守る。白金がエイリアンたちに誓ったことだ。赤坂に言われて、そうだったと思い出す。感傷に浸って見えなくなっていた。白金は赤坂の方に向き直る。
    「そうだな。……圭一郎も手伝ってくれるか?」
    「ええ、もちろんです」
    「ありがとな」
     二人は互いに笑顔を交わす。これからまた忙しくなるな、と白金は心が浮き立つ。空虚感はすっかり消えてなくなっていた。
    「さあ、今日の確認も終わったことですし、そろそろ夕食にしましょうか」
     赤坂が一つ伸びをして立ち上がる。白金も赤坂に続いて立ち上がり、研究室を出る。
    「カレーできてるから、食おうぜ」
    「嬉しいですね。稜のカレーは美味しいですから」
    「圭一郎は俺への評価が甘いよな」
    「いいえ、正当な評価ですよ」
     共に食事をして、研究をして、話をして――。そんな当たり前がこれからも続いていく喜びを、白金は噛みしめていた。
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    shitan_libra

    DONEカフェミュウミュウでのバイト後、いちごはキッシュから「見せたいものがある」と声を掛けられる。その表情や声色からは、普段の軽薄さは感じられなくてーー

    キシュいち 旧アニメ設定&りたーん後のお話です。
    メモリア 放課後、ちょうどおやつ時のこの時間、カフェミュウミュウはいつも人で賑わっている。
    「すみませーん、注文いいですかー?」
    「はーい! ただいまー!」
     いちごは客を席に案内するや否や、すぐさまスカートを翻し、次の客のもとへ注文を聞きに行く。カフェの制服はとても可愛く、いちごのお気に入りだ。ふんわりしたハートのエプロンとお揃いのレースのヘッドドレスに、赤いプリーツスカートのワンピース。胸元のピンクのリボンと、スカートの裾に入った、リボンと同じ色の一本ラインがポイントだ。ワンピースの色は一人一人違っていて、各々の魅力を引き出している。
     ウェイトレスのバイトは大変だが、この制服と閉店後の赤坂のケーキがモチベーションを高めてくれている。何せ、いちご一人で何人分もの働きをしなければならないのだ。みんとはティータイムの時間だと言って働かないし、れたすはドジを連発するし、歩鈴は大道芸に力を注ぐし、ざくろは忙しいため、そもそもあまりバイトに入れないのだが、バイトに入るも、無表情な接客で客が怖がるため、いちごができる限り接客を行うようにしている。ベリーが新たに仲間に加わってから負担は少し減ったが、今日はその頼りになるベリーは来ていない。
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