椅子になりたかったオレ志半ばでテロの凶弾に倒れたアス高生徒オレ。死の間際に思い出したのはライブラリーで読んだ大昔のフェチ小説であった。あの小説の人物のように生まれ変わるのなら椅子になりたい。そうだ。できればあの兄弟が座るだろうceo室に似合う立派な椅子。あれになりたい。何時間と座っていても疲れを感じさせることのない、魔法のような座り心地を提供するのだ。そしてオレはクッション越しにその重みを感じ、味わったことのない絶頂を感じるのだろう。言わずもがな、オレはあの兄弟にそういう意味で傾倒していた。
覚醒する。
どうやらオレは念願叶って椅子になったようだが、残念なことに新しい体はごくごく大衆的なファミリー向けのソファであった。コーヒーでもこぼしたのだろうか、ところどころに茶色いシミまでついている。
1909