どスケベ5歳児俺×クラシカルメイドラウダ「では坊っちゃん参りますよ」
「いーち、にーい……」
新人メイドのペトラとフェルシーが数を数えるのと同時に、ぼくは赤い絨毯が敷き詰められた広くて長い廊下をパタパタと勢いよく走り出した。
今日は全部の習い事がお休みの日なのでたくさん遊んでもらえるハッピーデイだ。お部屋でお絵かきや積み木をするのもいいけれど、せっかく二人が遊んでくれるというのだからできるだけ長く遊べそうなかくれんぼにすることにした。いつも遊んでくれる執事のじぃはすぐに「坊っちゃんはわんぱくですね」と言って遊びを切り上げてしまう。比べてペトラとフェルシー……特にフェルシーはいつまでも遊んでくれるから大好きだ。
「もーいーかーい!?」
「まぁだだよ!」
フェルシーの高くてよく通る声が急かす。
以前からぼくはかくれんぼで絶対に勝てる隠れ場所を考えていた。昨日、ディナーのフィレ肉にナイフを入れたときに突然思いついたその場所は今のぼくが考えつく限り、絶対に見つかることのない究極・無敵・鉄壁の隠れ場所に違いない。その場所にたどり着くまでは二人には待ってもらわなくっちゃ!
息を弾ませながら走り続け、その「場所」を探す。今はどこにいるんだろう。
しばらく走り続け、廊下を曲がった先の階段の踊場で目的の場所を見つけた。
「もーいーよ!」
もう二人の呼び掛けは聞こえなかったが、できる限りの大きな声でOKのサインを出すと目の前の大きな布を捲って急いで入り込んだ。でもその場所は案外低くて狭く、しゃがんで隠れるのでおしりは完全に外に出てしまう。入り込んですぐそばにあったものにコアラのように抱きついて、なるべく隠れる面積を確保する。
「……何をなさっているのですか」
離れてほしい、とばかりに抱きついたものがわずかに動くと、布越しの頭上からため息まじりの声が降ってきた。
「ペトラとフェルシーとかくれんぼしてるの」
負けじとさらにきつく、ぎゅっとそれ―――ラウダの左脚を抱え込む。タイツに包まれたその脚の弾力はずっと想像していたとおりで一瞬でぼくのお気に入りになった。普段は隠れているハリのある太ももに数度頬擦りをする。
「坊っちゃん」
さっきよりも声が低くなった。ここが限界だ。
観念してラウダの長いスカートを捲って顔だけを出す。
「いきなり入ってごめんなさい。でもぼく負けたくなかったの。だってね、ここだったらペトラもフェルシーもぜったいぜったいみぃつけたできないの」
ぼくたちのかくれんぼのルールは「目を合わせてみぃつけたを言う」という特別なものだ。ペトラとフェルシーは先輩であるラウダのスカートは捲れない。つまりずっとぼくの勝ちってわけ!
「ね、ね。だからここに隠れさせて」
おねがい、と上目遣いで頼み込む。
このお願いの仕方の成功率は高い。上目遣いで今より少し幼い感じ(ぼくは5歳だ)でお願いすると大抵のおとなは許してくれる。特にメイド長のグエルには効果抜群の技で、ぼくは毎日ねんねの時に添い寝をしてもらって、グエルのおおきなやわらかおっぱいを堪能しながら眠っている。賢いぼくはこういう時に「チョロい」という言葉を使うって知っているんだ。
その「チョロい」グエルと兄弟であるラウダも「チョロい」に違いない。
きらきらとダメ押しのおねがいビームを送り続けていると、ピンと伸ばした背筋を緩めることもせず、目線だけをぼくに合わせながらラウダが口を開けた。
「いや、普通にダメですけど」